理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-S-02
会議情報

セレクション口述発表
脳性麻痺児の歩行に対するリズム聴覚刺激の効果
歩行の周期性と歩行時筋活動の変化
橋口 優大畑 光司北谷 亮輔山上 菜月澁田 紗央理古谷 槙子正木 光裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】脳性麻痺児は、幼若な脳に生じた損傷により様々な運動障害を呈する。特に、歩行障害は児の活動範囲や社会参加に関わり、理学療法の重要な課題の一つである。Hausdorffらは中枢神経障害患者の歩行異常の特徴として、歩行周期時間の変動性が増加し、時間的な周期性が破綻することを報告している。このような歩行の周期性の破綻は歩行機能の低下に関連する重要な特徴であると考えられる。ここで、歩行の周期性を改善させる方法の一つとして、歩行中にリズム聴覚刺激(Rhythmic Auditory Stimulation 以下RAS)を与える方法がある。Kimらは成人脳性麻痺患者を対象としたRASの効果として、股関節屈曲角度や歩幅の左右差などの空間的指標の改善を明らかにしている。しかし、歩行の時間的指標である歩行周期時間の変動性に対するRASの効果やRASによる神経学的な変化を検討した報告は少ない。そこで、本研究では脳性麻痺児におけるRASの歩行周期時間の変動性に対する効果を検討し、さらにRASによる歩行時筋活動の変化を検討することとした。【方法】対象は、特別支援学校に通学する独歩もしくは軽介助にて歩行が可能な脳性麻痺児10名とした(男児5名、女児5名 年齢13.2±3.9歳 GMFCS 1レベル:3名 2レベル:6名 3レベル:1名)。歩行条件として、RASを与えない条件(Normal条件)とRASを与える条件(RAS条件)の2条件を設定した。RASを与える方法については、Normal条件にてケーデンスを測定し、得られたケーデンスに応じたリズムをメトロノームで再現し、介助者がメトロノームに合わせて手拍子を行った。歩行指標は、歩行周期時間の変動性と歩行時筋活動について、Delsys社製3軸加速度筋電計Trigno Wireless Systemを用いて測定した。まず歩行周期時間の変動性の指標として、踵部に装着した加速度計より1歩行周期時間を測定し、各条件より抽出された8歩行周期での歩行周期時間の変動係数(歩行周期時間の標準偏差/歩行周期時間の平均×100:Stride Time Coefficient variation 以下STCV)を算出した。歩行時筋活動については、測定筋を前脛骨筋・外側腓腹筋として測定を行った。得られた筋活動を全波整流化し、1歩行周期時間を100%として時間の正規化を行い、各条件より抽出した5歩行周期の平均波形を解析対象とした。また、振幅量は平均波形における最大値で正規化を行った。さらに、前脛骨筋と外側腓腹筋の筋活動が平均筋活動量以上となった期間における前脛骨筋と外側腓腹筋の筋活動比(前脛骨筋の筋活動量/外側腓腹筋の筋活動量)を算出し、2筋の相反性について検討した。統計解析は、2条件間のSTCVおよび筋活動比の違いを検討するためWilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は京都大学医学部倫理委員会の承認を得て、本人とその家族の同意を得た上で測定を行った。【結果】STCVは、Normal条件が8.49±2.56%、RAS条件が5.97±1.85%であり、RAS条件にて有意に減少していた(p<0.05)。また、歩行時筋活動については、外側腓腹筋の活動期間において前脛骨筋と外側腓腹筋の筋活動比が有意に減少していた(p=0.037)。【考察】本研究の結果より、脳性麻痺児に対してRASは即時的に歩行周期時間の変動性を改善させることが明らかとなった。また、外側腓腹筋活動期間における外側腓腹筋の筋活動に対する前脛骨筋の筋活動の割合が減少していたことが明らかとなった。Thautらは、脳卒中後片麻痺者を対象としてRASによって歩行時の時間的周期性や非対称性が改善されたことを示しており、脳性麻痺児においても同様に歩行の時間的指標に対するRASの効果が示唆された。Moritaniらは脳性麻痺児において、主動作筋と拮抗筋での相反性が障害されることで運動の円滑性や調整が阻害されていることを示している。今回認められた筋活動比の減少はRASにより歩行中の相反性が改善したことを示している。同様なRASの効果はThautらによって脳卒中後片麻痺者でも報告されている。一般に歩行の神経筋活動では脊髄内に存在するとされるリズム生成機構(Central Pattern Generator 以下CPG)が下肢の屈筋群と伸筋群の相反性を周期的に決定していると考えられている。このことから本研究の結果認められた脳性麻痺児における足関節周囲の歩行時筋活動の変化については、RASによってCPGの活動が賦活され、前脛骨筋と外側腓腹筋の相反性が明確化したものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より、脳性麻痺児においてRASは歩行時筋活動を変化させ、歩行周期時間の変動性を軽減させる効果があることが明確となった。このことから、RASの脳性麻痺児への適用の有効性と、RASの効果を神経学的に検証することの必要性が示唆された。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top