理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-09
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一般口述発表
Balance Evaluation Systems Test(BESTest)を用いた転倒予測値に関する検討
小泉 雅樹小林 正和岩井 優香岡田 麻衣子宮田 一弘平石 武士
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キーワード: BESTest, 転倒予測, バランス
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抄録
【はじめに、目的】脳卒中や骨折等は身体機能に様々な変化を起こし、その一つにバランス能力の低下が挙げられる。バランス能力の低下は転倒を引き起こす主要因であり、予防の観点からもバランス能力と転倒予測に関する研究成果が報告されている。近年、新たなバランス能力評価指標として、1.生体力学的制限、2.安定限界/垂直性、3.予測姿勢制御、4.姿勢反応、5.感覚適応、6.歩行安定性の6 つのバランス制御システムから構成されるBalance Evaluation Systems Test(BESTest)が開発され、その有用性についていくつかの報告がなされている。本研究では、BESTestと転倒予測の関連について調査し、従来のバランス能力評価指標と比較した際の有用性について検討した。【方法】対象は当院に入院中で歩行が監視または自立で退院した患者45 名とした。内訳は、脳卒中13 名、整形疾患28 名、脊髄損傷3 名、尿路感染症1 名であった。除外基準は意識障害、視覚障害を有する者、検査内容の理解が困難な者とした。対象者には退院前1 週間以内にBESTest、Timed Up and Go Test(TUG)、Berg Balance Scale(BBS)を実施した。転倒はGibsonの定義に従い「自らの意思によらず、足底以外の部位が床、地面についた場合」とした。調査期間は退院後6 か月とし、本人、家族または介護支援専門員に転倒の有無について聴取した。調査期間内に一度転倒があった者を転倒群、転倒しなかった者を非転倒群と分類した。統計的手法は、転倒群と非転倒群の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。また、Receiver Operating-Characteristic(ROC)曲線を用いて転倒予測Cut off値、Area under the Curve(AUC)を求めた。有意水準は5% とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究について、当院倫理審査委員会より承認を受け実施した。対象者には本研究の内容を書面にて説明し、同意署名を得た。【結果】退院後半年で転倒した患者は6 名、転倒者率は13.3%(6/45)であった。各群のバランス評価の中央値は、転倒群(BESTest1:66.7%、2:83.4%、3:63.9%、4:41.7%、5:86.7%、6:45.2%、合計63.9%、BBS47.0点、TUG18.5秒)、非転倒群(BESTest1:90.0%、2:85.7%、3:77.8%、4:88.9%、5:100.0%、6:83.4%、合計86.1%、BBS55.5 点、TUG9.7 秒)であった。Mann-WhitneyのU検定の結果、BESTestのセクション1.生体力学的制限、4.姿勢反応、合計、BBS、TUGで有意差が認められた。ROC曲線から各評価の転倒予測値はBESTest合計69%(AUC79%、感度82%、特異度83%)、BBS51 点(AUC80%、感度82%、特異度83%)、TUG10.4 秒(AUC20%、感度31%、特異度33%)であった。有意差を認めたセクションは、1:70%(AUC83%、感度80%、特異度83%)、4:69%(AUC77%、感度54%、特異度83%)であった。また、Bergによる転倒指標BBS46 点では感度95%、特異度16%であった。【考察】本結果から、BESTestの生体力学的制限、姿勢反応で転倒群と非転倒群に有意差が認められ、これらのバランス制御システムの低下が転倒に至る一要因である事が示唆された。歩行監視以上の者の転倒予防は、生体力学的制限、姿勢反応等の要素に対して集中的に介入を行う事で効果を得られる可能性があると考える。また、ROC曲線の結果から、各バランス評価指標の転倒予測値はBESTest69%、BBS51 点である事が示唆された。BESTest は、Leddyらによりパーキンソン病者の転倒に関する調査が報告されており、転倒リスクが高いと判断される値として合計値69%が提唱されている。今回の結果は、先行研究と同一の結果を示した。また、BBSに関して臨床的に使用されている転倒予測値46 点を上回る結果を得た。先行研究では、疾患や対象者に応じて31 〜50 点と幅広い報告もある。BBSも転倒リスクを予測する評価として有用と考えるが、天井効果を軽減し、転倒の起因となる要素を明確に分析し介入する手段として、BESTestはより実践的な評価手段であると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究から、BESTestと転倒との関連性が確認でき、BBSと同様に転倒予測精度の高い評価指標であることが明らかとなった。
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© 2013 日本理学療法士協会
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