理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-21
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ポスター発表
当院脳卒中患者の転帰先に及ぼす因子の検討
~同居人数は影響を及ぼすのか~
小川 卓郎宮﨑 純弥
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抄録

【はじめに、目的】脳卒中急性期病院において発症早期から退院先の検討を行うことは方針決定や、空床確保のために重要なことである。当院では脳疾患患者の予後予測・ゴール設定を行う一つの指標として、Functional Independence Measure(以下FIM)を使用している。FIMは患者の「しているADL」を把握するために用いられ、リハビリテーションカンファレンスにも使用されている。その中で転帰先検討時に、同居人の有無が影響していることが考えられている。また、独居もしくは高齢者二人暮らしの場合、機能障害や能力障害が自宅復帰・社会復帰を困難にしている場合が多い。そこで、本研究の目的は当院入院の脳卒中患者の転帰先に必要な因子として同居人数が影響しているかとFIMの得点とNIHSS得点を中心に検討することである。【方法】対象は平成24年7月~同年10月に当院入院となった脳卒中患者うち入院時のFIM評価、NIHSS評価が可能であった35名(男性24名、女性11名)とした。対象疾患は脳梗塞31名、脳出血4名であった。調査は医療カルテを使用した。調査項目は転帰先、在院日数、同居人数、入院時運動FIM点数(以下入運FIM)・退院時運動FIM点数(以下退運FIM)、入院時認知FIM点数(以下入認FIM)・退院時認知FIM点数(以下退認FIM)、入院時合計FIM点数(以下入合FIM)・退院時合計FIM点数(以下退合FIM)、入院時NIHSS・退院時NIHSS点数を後方視的に調査した。統計処理は、転帰先が自宅か否かで自宅群と非自宅群分け、各調査項目を対応のないt検定を用いた。また尤度比による変数増加法を用いたロジスティック回帰分析を使用し、従属変数を転帰先とし、独立変数を在院日数、同居人数、退運FIM、退認FIM、退合FIM、退院時NIHSSとした。SPSS for Windows(version18)を用い、各検定ともに有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則って実施した。当院にて研究(本研究を含む)を行なう際の個人情報の取り扱いについては十分配慮すること、研究により得られたデータを目的以外に使用しないことなどを定めた院内コンプライアンスを順守して行った。【結果】自宅群は19名(男性14名、女性5名、平均年齢67.9±9.6歳)であり、在院日数は16.6±6.7日、同居人数は2.7±1.5人、入運FIM63.1±25.6点、入認FIM 32.6±3.9点、入合FIM95.6±27.1点、入NIHSS3.6±2.8点、退運FIM 85.3±9.7点、退認FIM33.5±2.9点、退合FIM118.6±11.5点、退NIHSS1.5±1.6点であった。非自宅群は16名(男性10名、女性6名、平均年齢73.3±14.4歳)であり、在院日数28.3±8.7日、同居人数は2.8±1.6人、入運FIM 35.9±25.5点、入認FIM 21.3±12.9点、入合FIM 51.8±32.6点、入NIHSS9.8±11.5点、退運FIM 61.2±23.9点、退認FIM 24.3±11.3点、退合FIM 85.9±31.5点、退NIHSS3.9±4.3点であった。自宅群と非自宅群の比較では、同居人数、入退院NIHSSの結果以外は自宅群が有意に良値を示した(p<0.01)。転帰先を従属変数としたロジスティック回帰分析では「在院日数(odds=1.153、95%信頼区間1.023~1.299、p<0.05)」、「退合FIM(odds=0.938、95%信頼区間0.884~0.997、p<0.05)」が有意に選択され、この2要因による判別的中率は80%であった。【考察】当院における自宅退院者と非自宅退院者を検討した結果、在院日数と各FIM項目において自宅退院群が有意に高い値であった。また、ロジスティック回帰分析では転帰先には在院日数と退合FIMの影響を強く受けることが示唆された。予測では、転帰先には同居人数の影響が強いのではないかと予測したが、実際は異なる結果であった。これは先行研究とは異なる結果である。その要因として急性期であるため自宅への受け入れ準備が早期に行えないことが示唆された。さらに調査数の問題から有意な結果が得られなかったことも考えられる。今後は対象者数を増やし、在院日数の短縮と退院時FIM得点の向上に努めると共に、同居人数においても調査を継続し行って行きたい。【理学療法学研究としての意義】脳卒中患者の自宅退院に必要な因子に在院日数、FIM点数が大きく関わっていることが明らかになった。これにより早期ゴール設定の指標の一つとなる点において臨床的意義が高いと思われる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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