理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-S-02
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セレクション口述発表
人工膝関節全置換術後患者の体幹機能と歩行能力の関連
Seated Side Tapping testを用いて
佐野 佑樹岩田 晃松井 未衣菜藤原 明香理堀毛 信志西 正史淵岡 聡渡邉 学
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キーワード: TKA, 体幹機能, 歩行能力
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抄録
【はじめに、目的】 近年,疾患に関わらず体幹機能が歩行能力に影響を及ぼすことは,多数報告されている.朝野らは,変形性膝関節症(以下膝OA)に対する人工膝関節全置換術(以下TKA)後の理学療法の内容と留意点として,除痛,関節可動域,筋力の他に,体幹の評価,分析が必要と述べている.また木藤らは,OA患者に対する運動療法として,体幹の機能訓練を積極的に行うよう述べている.臨床的にも,TKA術後患者の歩行能力にとって体幹機能が重要であることは,しばしば経験される.しかし我々の知る限り,TKA術後患者の体幹機能と歩行速度の関係について,客観的な指標に基づき明らかにした研究はない. 体幹機能の評価としては,近年Seated Side Tapping test(以下SST)が用いられている.このテストは坐位で体幹を左右に出来るだけ速く動かす能力を測定するもので,健常高齢者,虚弱高齢者のどちらを対象とした場合でも,歩行速度やTimed Up & Go test(以下TUG)と有意な相関関係が認められている.そこで本研究は,TKA術後患者においてSSTを用いて測定した体幹機能と歩行速度との関連を明らかにすることを目的とする.【方法】 2012年5月から9月までに,当センター整形外科に入院し,膝OAと診断され,TKAを施行された症例39例39膝を対象とする.本研究では,SST,5m歩行速度,TUGに加えて,痛みの評価としてVisual Analog Scale(VAS)を測定した. SSTは,坐位で両上肢を側方に挙上し,その指先から10cm 離した位置にマーカーを設置し,対象者に出来るだけ速くマーカーを交互に10 回叩くように指示し,要した時間を測定した.歩行速度は,対象者に通常速度で歩くように説明し,8m の歩行路の中央5m の歩行に要した時間から算出した.TUG は,Podsiadlo らの原文に基づき,椅子から立ち上がり,通常速度で3m 先のラインまで歩き,方向転換し,椅子に戻り坐位になるまでに要した時間を測定した.全ての項目についてストップウォッチを用いて2施行測定し,最速値を解析に用いた.測定は術後1週,2週,3週の計3回行った.5m歩行速度は術前にも測定した. 統計処理は,週ごとのSSTと5m歩行速度,TUGとの関係を検討するために,年齢を統制した偏相関係数を求めた.SPSS ver.20を用い有意水準を5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 当センター臨床医学倫理委員会並びに,大阪府立大学研究倫理委員会の承認を経た.また,全ての対象者に本研究の内容及び測定データの使用目的について書面を用いて十分な説明を行い,書面による任意の同意を得た.【結果】 対象者は,年齢75.8±5.8歳,身長151.3±6.5cm,体重60.0±10.4kg,BMI26.1±3.3,性別は男性8例,女性31例であった.術前の5m歩行速度の平均は,1.02±0.25(m/s)であった.5m歩行速度が平均±2SD以上の2例については,解析対象から除外し,男性8例,女性29例の計37例を解析対象とした. 各測定項目の平均値及び標準偏差を1週,2週,3週の順に示す.SST(秒)は6.2±1.5,5.7±1.2,5.5±1.1であった.5m歩行速度(m/s)は,0.75±0.18,0.89±0.21,0.97±0.20であった.TUG(秒)は,17.4±6.5,13.2±3.4,11.6±2.8であった.VASは36.6±23.5,21.0±20.6,10.4±15.0であった. SSTと5m歩行速度の関係について,年齢で補正した偏相関係数を以下に示す.1週がr=-0.58(<0.01),2週がr=-0.47(<0.01),3週がr=-0.45(<0.01)であった.SSTとTUGの偏相関係数は,1週がr=0.56(<0.01),2週がr=0.50(<0.01),3週がr=0.63(<0.01)であった.【考察】 今回,SSTと歩行速度,TUGとの間に中等度の相関が認められた.このことは,臨床で感じている歩行能力に対する体幹機能の重要性を,客観的に示すことができたと考えている.従来の体幹機能の評価には,体幹筋のMMT,関節可動域などの機能的な評価や,坐位バランスなど静的な評価が多い.今回行ったSSTは,体幹の動的な機能を表しており,歩行能力との関連を示すことができた要因と考察した. さらに,術後1週,2週,3週のどの時期においても,SSTと歩行能力の間に相関を認めた.一方でVASの値は術後1週が平均36.6と高く,3週では10.4まで減少している.この結果は,下肢の痛みに関わらず,歩行において体幹機能が重要であることを示している.【理学療法学研究としての意義】 TKA術後患者の歩行動作における体幹機能の重要性を,客観的指標に基づき示した点.
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© 2013 日本理学療法士協会
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