理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-11
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ポスター発表
歩行時の体幹側方傾斜の偏倚が膝内反モーメントに及ぼす影響
二木 良平武田 直樹山中 正紀島田 勝規
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抄録
【はじめに、目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)は、高齢者における疼痛と機能障害の主要な原因の一つであり、本邦での高齢人口の有病率は61.9%である。膝関節内側コンパートメント負荷の代替値であり、疾患進行と関連する外的膝関節内反モーメント(以下、膝内反モーメント)は膝OA患者の歩行研究で広く研究されてきた。 体幹側方傾斜の偏倚は下肢の運動器疾患において除痛や、筋力低下の代償のため比較的よく見られる現象であり、重度膝OA患者や変形性股関節症患者に実施される人工股関節全置換術(以下、THA)後の患者の歩行分析で報告されている。体幹側方傾斜の偏倚が、偏倚側下肢の膝内反モーメントを減ずることが報告されている一方、重度膝OA患者やTHA患者の非偏倚側膝関節においては、増加した膝内反モーメントや膝OA変化が報告されている。体幹側方傾斜の偏倚が非偏倚側下肢の膝内反モーメントに及ぼす影響は報告されておらず、その影響を詳細に知ることはこれらの病態の理解を深めることにつながると考えた。本研究の目的は、歩行時の体幹側方傾斜の偏倚が両側の膝内反モーメントに及ぼす影響を調査することである。【方法】 偏倚の効果が重症度やアライメント変化等によって不明確になることを除外するため、健常若年者15名15肢(男性15名、年齢:22.0±2.0歳、身長:171.6±4.3cm、体重:65.9±7.6kg)を対象とした。データ収集には三次元動作解析装置と6台のデジタルカメラ、2枚の床反力計を使用した。同一下肢での比較を達成するために、検査対象下肢を一側に定めた。動作課題は通常条件、通常条件と比較して、立脚側に体幹側方傾斜を偏倚する同側偏倚条件、立脚側に対して反対側に偏倚する反対側偏倚条件の3条件で、各条件3回の試行を記録した。体幹側方傾斜角度の決定方法は、先行研究に準じて、実験室座標系の垂直線と第10胸椎棘突起と第2胸椎棘突起に設置した赤外線反射マーカーを結んだ線の成す角度と定義した。同側偏倚条件と反対側偏倚条件について、被検者の背後からゴニオメータを使用して、5°の角度に設定し、その角度を維持したまま、通常歩行と同様の歩行速度で歩行するように指示した。 収集したパラメータは、各条件時の体幹側方傾斜の歩行周期平均角度、歩行速度、垂直床反力の立脚期ピーク値、体重心と膝関節中心の水平距離と膝前額面上レバーアーム長の立脚期平均値、膝内反モーメントの立脚期ピーク値と立脚期積分値であった。統計解析は各被検者の条件ごとのパラメータに関して、反復測定一元配置分散分析を使用して3条件の比較を行った(p<0.05)。【倫理的配慮、説明と同意】 被検者には実験前に本研究内容についての説明を口頭と書面により行い、実験参加に対する同意を得て実験を実施した。本研究は北海道大学院保健科学院の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 体幹側方傾斜の歩行周期平均角度は3条件間で有意に異なり、歩行速度、垂直床反力立脚期ピーク値に3条件間の有意差はなく、条件設定は確実に達成された。体重心と膝関節中心の水平距離、膝前額面上レバーアーム長の立脚期平均値はどちらも通常条件と比較して、同側偏倚条件で有意に短く(p<0.001)、反対側偏倚条件で有意に長かった(p<0.001)。膝内反モーメントは、3つのパラメータにおいて、通常条件と比較して、同側偏倚条件で有意に減少し(p<0.05)、反対側偏倚条件で有意に増加した(p<0.05)。【考察】 本研究において、体幹側方傾斜の偏倚が膝内反モーメントに与える影響が明らかになった。今回生じた膝内反モーメントの変化は、体幹側方傾斜の偏倚によって、身体重心の分布に偏倚が生じ、膝前額面上レバーアームが変化したために生じたものと考えられる。体幹側方傾斜の反対側偏倚は、立脚側下肢の膝内反モーメントを増加し、膝OA発症や進行のリスクを増大すると考えられる。この結果から、重度膝OA患者やTHA患者の患側や術側への体幹側方傾斜の偏倚は、健側や非術側で増加した膝内反モーメントや膝OA変化に関与している可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 体幹側方傾斜の偏倚は重度膝OA患者やTHA患者の歩行分析で報告されている。体幹側方傾斜の偏倚は偏倚側下肢の膝内反モーメントを減ずる一方、非偏倚側下肢の膝内反モーメントを増加する。重度膝OA患者やTHA患者のリハビリテーションにおいては、体幹側方傾斜の偏倚に注意した取り組みが求められる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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