理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-10
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ポスター発表
当院における膝前十字靭帯再建術後の筋力回復状況について
―当院のクリティカルパスの妥当性―
斉藤 洋志田極 薫
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抄録
【はじめに、目的】我々は第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会において、当院での膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後の患者は平均年齢が高く、スポーツ復帰の目標もレクリエーションレベルが多いことでクリティカルパスからの逸脱者が多いことを報告した。今回は膝関節の伸筋と屈筋について筋力の回復状況を調査し、当院のクリティカルパスの妥当性と今後の課題を引き続き検討することを目的とした。【方法】2005年1月~2012年4月に当院でACL再建術を施行した100名(男性55名、女性45名、平均年齢29±11歳、STG法96名、ST法4名)を対象とし、COMBIT CB-2(ミナト医科学社製)にて等尺性収縮で測定された膝関節伸筋と屈筋の測定値を診療記録から抽出した。まず、術後3ヶ月~18ヶ月の間に測定した352記録より伸筋と屈筋の筋力の回復状況を健患比で3ヶ月毎に比較した。また、術後3ヶ月・6ヶ月・9ヶ月・12ヶ月の全ての期間に測定されていた36名(男性12名、女性14名、平均年齢34±11歳、全てSTG法)について、術側の伸筋と屈筋の筋力の回復状況をトルク値で3ヶ月毎に比較し、分散分析にて比較した。分散分析にはSPSS Ver.12.0を用い、有意水準は5%未満とした。さらに、この36名について年齢と筋力のトルク値に相関があるのか確かめた。【倫理的配慮、説明と同意】この研究はヘルシンキ宣言に基づいて行い、個人情報保護のため得られたデータは匿名化し、個人情報が特定できないように配慮した。【結果】年齢の割合は10代が17%、20代が40%、30代が23%、40代17%であった。術後3ヶ月~18ヶ月の3ヶ月毎の膝関節筋力の健患比の値は、伸筋では術後3ヶ月で64±16%、術後6ヶ月で76±16%、術後9ヶ月で81±14%、術後12ヶ月で82±16%、術後18ヶ月で86±15%であった。屈筋では同様に各々、60±17%、78±17%、82±15%、85±16%、88±12%であった。また、術後3ヶ月・6ヶ月・9ヶ月・12ヶ月のすべての期間に測定されていた36名の膝関節筋力のトルク値は、伸筋では術後3ヶ月で40±16kgf・m、術後6ヶ月で47±19kgf・m、術後9ヶ月で52±20kgf・m、術後12ヶ月で54±22kgf・mであり、有意差を認めた。屈筋では同様に各々、15±5kgf・m、20±7kgf・m、22±7kgf・m、23±7kgf・mであり、有意差を認めた。さらにこの36名の年齢と筋力のトルク値について、伸筋では術後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月において低い負の相関を認めた(術後6ヶ月 r=-0.234、9ヶ月 r=-0.281、12ヶ月r=-0.323)。屈筋では術後6ヶ月と9ヶ月において負の相関を認め(術後6ヶ月 r=-0.453、9ヶ月 r=-0.403)、術後3ヶ月と12ヶ月において低い負の相関を認めた(術後3ヶ月 r=-0.254、12ヶ月 r=-0.341)。【考察】術後3ヶ月~18ヶ月の3ヶ月毎の膝関節筋力の健患比は順次回復していることが認められた。また、術後3ヶ月~12ヶ月の3ヶ月毎の膝関節筋力のトルク値も順次回復しており、有意差が認められた。しかしながら「術後6ヶ月で伸展筋85%、屈曲筋84%(青野ら2010)」、「術後8ヶ月で伸展筋力89.0±14.5%、屈曲筋力92.9±14.4%(園部ら2011)」という健患比についての報告と比較すると、今回の研究では回復が不十分と言える。この原因として、年齢と筋力のトルク値には相関が認められたことから、当院におけるACL再建術後の患者の年齢が影響していると考えられる。当院では10代よりも20代、30代の患者が多いため、10代が多くを占める他の報告よりも筋力が回復していないと考えられる。また、当院におけるACL再建術後の患者はレクリエーションレベルが多いため、外来通院以外での筋力強化トレーニング環境が少なく、それに対する自主トレーニング指導も不十分であることが予想される。その他、当院では術後3ヶ月以降はステップ練習が中心となるため、筋力強化の要素が少ないことも一因と考える。【理学療法学研究としての意義】今回の研究により、当院におけるACL再建術後の膝関節の筋力回復状況が明らかとなった。また、当院におけるACL再建術後の患者の筋力回復状況には患者の年齢の高さが影響していることが示唆された。今後は筋力強化トレーニングを実施できる環境設定や自主トレーニングの指導方法の確立、プログラム内容の変更も課題と考え、クリティカルパスの改善が必要と考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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