理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-56
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ポスター発表
急性期脳卒中リハビリテーション患者の転院先に関する転帰予測 介入開始時評価と社会的因子からの検討
堀 拓朗勝又 泰貴
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抄録

【はじめに、目的】急性期病院における脳卒中患者のリハビリテーション(以下リハ)は、発症後早期からの介入により廃用症候群を予防し、日常生活活動の向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもと積極的に行うことが勧められている。しかし、急性期病院での長期入院は困難な現状であり、早期に退院転帰を予測する必要がある。急性期脳卒中リハ患者の転帰予測に関しては、自宅退院に関連する因子の報告は多くみられるが、転院先に関連する因子を検討した報告は少ない。澤田らは、急性期病院より回復期病院に転院した群と、療養型病床を含む一般病院に転院した群では、リハ開始時のFunctional Independence Measure(以下FIM)には差はなく、転院時のFIMは回復期に転院した群が有意に高いと報告しているが、さらに関連する因子を分析することが必要であるとしている。そこで本研究では、急性期脳卒中リハ患者の転院先に関連する因子を、介入開始時評価と社会的因子から検討することを目的とした。【方法】2011 年4 月から2012 年3 月までに、当院脳神経外科に脳卒中の治療を目的に入院した患者の中で、転帰が転院・転所となった者を対象とした。対象の中で、入院前に施設等の自宅外に入居していた者、入院中に再発・状態悪化があった者は除外した。研究デザインは、診療録から得られるデータを用いた後ろ向きコホート研究とした。調査項目は、(1)基本属性として年齢、性別、(2)疾患に関する項目として診断名、障害半球、既往歴、(3)入院経過としてリハ開始までの日数、転帰先、(4)初回介入時の評価として意識障害の程度(Japan coma scale)、上肢・下肢・手指のBrunnstrom stage(以下Br. Stage)、知覚障害・高次脳機能障害・嚥下機能障害・呼吸循環機能障害・経口摂取の有無、Barthel Index(以下BI)、(5)社会的背景因子として職業の有無、介護度(要支援・要介護)、同居人の有無・人数とした。対象を転帰により、回復期病棟を持つ病院への転院群(以下回復期群)、療養型病床を含む一般病院や施設への転院群(以下維持期群)の2 群に分類した。統計学的分析にはSPSS12.0J for Windowsを用い、有意水準は5%とした。まず、2 群間での比較はMann-WhitneyのU 検定及びχ2 検定を行った。次に、多重共線性に留意し、ロジスティック回帰分析にて回復期病院へ転院する可能性に関与する因子の抽出を行った。【倫理的配慮、説明と同意】診療録より得られたデータは匿名化し、個人情報の取り扱いには十分に留意した。【結果】転帰別の属性は、回復期群は272 名で平均年齢66.1(25-99)歳、男性154 名、女性118 名、脳梗塞159 名、脳出血97 名、くも膜下出血16 名であり、維持期群は58 名で平均年齢79.6(52-96)歳、男性26 名、女性32 名、脳梗塞31 名、脳出血25 名、くも膜下出血2 名であった。2 群間の比較において、回復期群では、年齢・意識障害・Br.Stage ・介護度は有意に低く、BI は有意に高く、感覚障害・高次脳機能障害・嚥下機能障害・呼吸循環機能障害は無し、経口摂取・職業は有りで有意差を認めた。ロジスティック回帰分析においては、年齢(オッズ比0.883、95%信頼区間:0.843-0.923)、意識障害(オッズ比0.988、95%信頼区間:0.980-0.996)、Br. Stage の上肢(オッズ比0.361、95%信頼区間:0.132-0.984)、高次脳機能障害(オッズ比0.400、95%信頼区間:0.175-0.916)、経口摂取(オッズ比8.018、95%信頼区間:2.779-23.133)で有意差を認めた。【考察】回復期リハ病棟は、急性期に引き続き、より専門的かつ集中的にリハを実施し、自宅復帰を目標とする。脳卒中早期リハ患者では、年齢は低いほどBIが改善するとされているため、転帰に影響したと考える。意識障害が重度であれば積極的な介入が困難となる。経口摂取に関しては、全身状態が安定している指標の一つと考える。したがって、転院先に関する転帰予測においては身体機能や認知機能面等に着目するだけではなく、年齢は低く、意識障害は軽度で、経口摂取が可能なほど回復期病院へ転院し、リハを継続する可能性が高いことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】急性期脳卒中リハ患者の転院先に関する転帰を早期から予測することで、より早期から患者や家族あるいは他部署への情報提供と、転帰に向けた準備が行えると考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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