抄録
【目的】ブリッジは股関節や体幹伸展筋の筋活動が認められることから筋力トレーニングの一手段,そして片麻痺に対しては分離促通目的としても用いられる。股関節伸展筋や体幹伸展筋の筋力検査が円背や関節可動域制限などにて実施不可能な時はブリッジ可否の程度で大まかに筋力を把握することも少なくない。そのため,ブリッジでの筋活動を検討した報告は多数みられる。本来,筋力検査は筋力を判定することだけではなく,動作阻害因子や獲得しうる動作,つまり動作との関連性を評価することも大切な目的である。よってブリッジの能力として,ブリッジ時の足底への荷重量と動作能力に関連性があれば,その荷重量は動作を保証する伸展筋活動能力を反映する有益な一指標となるのではないかと我々は考え,高齢有疾患者69 名を対象に検討した。その結果,ブリッジ時の足底への荷重量並びに股伸展角度が起立,歩行能力と関連性があることを先行研究として報告した。しかし対象者の疾患が内部疾患など多岐に渡っていることが課題となった。本報告の目的は対象疾患を大腿骨頚部骨折患者(頸部骨折者)と脳血管障害患者(CVA者)として,ブリッジ時の足底への荷重および股伸展角度が動作能力を反映する定量的評価となりえるかを検討することである。【方法】対象は頸部骨折者47 名とCVA者36 名とした。起立動作が上肢支持なしで可能な群(フリー群)と上肢支持や介助を要する群(非フリー群)に,している移動能力が歩行補助具の有無を問わず歩行している群(歩行群)と車いすを使用して移動している群(車いす群)に,できる移動能力が独歩可能な群(独歩群)と補助具を使用して歩行可能な群(補助具群)に各々群分けした。方法は再現性を確認した先行研究に則り,両膝関節110 度屈曲位crock lyingから殿部を挙上する両脚でのブリッジ(両脚ブリッジ)と,殿部非挙上側下肢伸展位で殿部挙上側の膝関節を110 度屈曲位としたcrock lyingからの片脚ブリッジ(片脚ブリッジ)を行わせた。片脚ブリッジについては患側下肢での片脚ブリッジを患側ブリッジ,非患側下肢での片脚ブリッジを非患側ブリッジとした。両脚ブリッジでの両足底部,片脚ブリッジでの殿部挙上側足底部に体重計を設置し,各ブリッジ時の荷重最大値を体重で除し荷重率を求めた。ブリッジ時の股伸展角度を5 度刻みで計測した。検討項目は,両脚・患側・非患側ブリッジ時における荷重率と股伸展角度の結果について,起立,している移動,できる移動の能力の違いによる比較を疾患別で行った。頚部骨折者では骨折内訳,CVA者ではBr.stageによる比較も行った。統計処理は多重比較検定,χ自乗検定を用い,有意水準を5%未満とした。【説明と同意】全ての対象に研究の趣旨と内容がヘルシンキ宣言に沿ったものであることを説明し,同意を得て実施した。【結果】頚部骨折者では両脚・患側・非患側ブリッジの荷重率,股伸展角度が起立と移動の能力の違いで有意差を認めた。骨折内訳では有意差を認めなかった。CVA者では両脚・患側ブリッジの荷重率,股伸展角度が起立能力の違い,移動能力の違いで各々有意差を認めた。非患側ブリッジでの荷重率と股伸展角度は起立,移動のどちらも有意差を認めなかった。またBr.stage別では両脚・患側・非患側ブリッジの荷重率,股伸展角度,いずれも有意差を認めなかった。しかしBr.stageが高いほど患側ブリッジ時の荷重率が大きく,動作能力としてもχ自乗検定の結果,stageⅥでフリー群,歩行群が多かった。【考察】ブリッジでは大殿筋,脊柱起立筋,ハムストリングスの筋活動が報告されている。片脚ブリッジでは中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動が報告されている。起立動作はブリッジと同様に両下肢で伸展していく動作であり,大殿筋,脊柱起立筋,大腿二頭筋の筋活動が認められ,いずれの筋も歩行時も筋活動が認められるとされる。今回の結果から,ブリッジでの荷重率および股伸展角度は動作能力を反映する一指標になりえるが,CVA者での非患側ブリッジ荷重率と股伸展角度については動作能力が反映仕切れていない可能性が示唆された。よって両疾患ともに両脚,患側ブリッジ時の荷重率と股伸展角度は起立と移動能力に関連することから,起立・移動能力の獲得を反映する体幹と股関節の伸展筋活動の一指標となり得るがCVA者においては他の因子が絡んでいることが考えられ,解釈には留意が必要となることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】ブリッジ時の荷重率と股伸展角度が頚部骨折者では起立と移動能力に必要な体幹・下肢伸展能力を反映する一指標となりうるが,CVAでは留意する必要性が示された。