理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-16
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一般口述発表
歩行獲得に必要な入院時Berg Balance Scale得点
山﨑 年弘岩田 研二白井 瑞樹舘 友基木村 圭佑坂本 己津恵松本 隆史櫻井 宏明金田 嘉清
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抄録
【はじめに、目的】臨床現場において特に歩行自立の判定には療法士の主観に頼ることが大きい。Berg Balance Scale(以下,BBS)は転倒リスクや歩行自立の指標として幅広く用いられ、回復期リハビリテーション病棟においても歩行自立の指標としての報告が多くされている。しかしながら、使用補助具、施設内環境、コンプライアンスなどにばらつきが見られることが問題点として挙げられる。そこで今回我々は当院回復期リハビリテーション病棟における退院時歩行自立度を客観的に判定することを目的にBBSを用いて入院時BBS得点と歩行能力との関連性について検討を行った。【方法】対象は2011 年10 月から2012 年9 月の間に当院回復期リハビリテーション病棟へ入棟した141 名の内、退院時まで継続してBBSがフォローできた92 名(脳卒中患者22 名、大腿骨骨折患者40 名、その他の疾患30 名)とした。対象の内訳は男性19 名、女性73 名、平均年齢82.5 ± 5.3 歳、発症(受傷)日から当院入院までの平均期間は37.4 ± 12.2 日、退院時の平均発症(受傷)後日数は113.3 ± 28.8 日、平均入院期間は75.9 ± 25.0 日であった。歩行自立度の指標はFunctional Independence Measure(以下,FIM)6 点以上を自立、5 点以下を非自立とした。退院時の歩行自立は59 名となり、そのうち入院時より歩行が自立していた23 名を自立群、入院時歩行は非自立で退院時歩行が自立となった36 名を移行群、退院時歩行非自立者は非自立群とし33 名であった。測定項目は入退院時のBBS総得点および下位項目得点、FIM総得点および各項目得点、当院在院日数は当院データベースより後方視的に調査した。なおBBS検査の試行に困難をきたすような者は除外した。統計処理はIBM SPSS Statics18.0 を使用し、退院時の自立を予測する為のカットオフ値を、Receiver Operating Characteristic Curve(以下,ROC曲線)を用いて検討した。自立群、移行群、非自立群の3 群間比較には多重比較検定(Bonferroni法)を用いた。各統計処理の有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究のデータの収集、分析にはヘルシンキ宣言に基づいて行い、当院の倫理委員会にて承認されたものである。【結果】入院時のBBSは自立群47.0 ± 5.8 点、移行群35.8 ± 11.0 点、非自立群21.1 ± 11.5 点で各値に有意な差を認めた(p<0.05)。退院時のBBSは自立群52.0 ± 4.4 点、移行群47.4 ± 8.2 点、非自立群30.0 ± 12.4 点で自立群と非自立群、移行群と非自立群に有意差を認めた(p<0.05)が、自立群と移行群には有意な差は認めなかった。退院時歩行自立度のBBSカットオフ値はROC曲線より41 点(感度84.7%、特異度81.8%)と判断した。移行群と非自立群の退院時の歩行自立度を入院時BBSで予測するため、カットオフ値をROC曲線より求め、30 点(感度75.0%、特異度87.9%)と判断した。移行群と非自立群のBBS下位項目においては座位保持以外のすべての項目において有意な差を認めた(p<0.05)。移行群の退院時FIM問題解決4.8 ± 1.4 点、非自立群の退院時FIM問題解決3.8 ± 1.2 点とに有意な差を認めた(p<0.05)。【考察】これまで当院における歩行自立の判断は主観的評価に頼る事が多かった。望月の先行研究によると屋内歩行自立のカットオフ値は43 点と述べており、本研究での退院時歩行自立度のBBSカットオフ値は41 点とほぼ同等の結果となった。移行群における入院時BBSカットオフ値を30 点とした時、感度は良好であり入院時評価により退院時の歩行自立の可能性が期待できる。入院時BBS30 点とした時に特異度が87.9%となる事から入院時のBBSが30 点以上ないと退院時に歩行が自立する可能性が低くなると示唆される。入院時BBSが30 点を下回っていて退院時に歩行自立した患者は8 名いたが、いずれもBBSの利得が高い、もしくはFIM問題解決の点数が高い事が考えられた。これらのことから入院時BBSが30 点以上なければ歩行自立する可能性は低い事が示唆された。本研究の限界としてはあくまで当院回復期リハビリテーション病棟での結果であるため各病院・施設で検討を行う必要性があると思われる。【理学療法学研究としての意義】回復期リハ病棟患者を対象としたBBSの先行研究は多く散見されるが、入院時歩行は非自立で退院時歩行は自立した移行群に着目した報告は少なく、今回の結果は、より客観的に歩行自立を判断する上で有用であると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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