理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-16
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一般口述発表
高齢入院患者におけるTwo Square Step TestとADLおよび歩行自立度との関連についての検討
小山 真吾森尾 裕志井澤 和大堅田 紘頌石山 大介八木 麻衣子清水 弘之
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抄録
【はじめに、目的】バランス能力はADL,歩行能力の自立度に関わる重要な因子である.バランス能力の評価は,支持基底面と身体重心の投影点の関係が基本となっており,姿勢保持 (レベル1),一定の支持基底面内での重心移動 (レベル2),支持基底面が変化する条件での重心移動 (レベル3) の3 つのレベルに分類される (星ら, 1988).レベル1 に比べ,レベル3 の評価はより高次のバランス評価となるが,妥当性と有用性を兼ね備えた評価指標は少ない.レベル3 の評価指標として,Four Square Step Test (FSST; Diteら, 2002)が挙げられる.先行研究において我々は,FSSTを参考に,2 区画を反復するステップテスト (Two Square Step Test; 2SST) を考案し,その再現性を報告した (小山ら, 2012).しかし,我々が行った先行研究では,2SSTとADLおよび歩行能力との関連について言及するには至らなかった.したがって,2SSTを臨床で応用するためには,有用性について明らかにする必要があると考えられた.本研究の目的は,2SSTとADL,歩行能力との関連および歩行自立者に対する2SSTのカットオフ値について明らかにすることである.【方法】対象は,当大学病院に入院し,理学療法を施行した65 歳以上の高齢入院患者 87 例 (平均年齢78.6 ± 7.1 歳,男性54%) である.取り込み基準は,全例が20 秒以上の立位保持が可能な例とし,除外基準は,不良な心血管反応が運動の制限因子になっている例,片麻痺や荷重関節痛などの運動器疾患を有する例,認知症を有する例とした.測定項目はADL能力指標,歩行自立度,および2SSTとした.ADL能力指標として,Functional Independence Measureの運動項目 (運動項目FIM) とFIMの下位項目である歩行FIMとした.歩行自立度の指標は,歩行FIMを用いて,歩行自立群 (歩行FIMが6 点以上) と非自立群 (歩行FIMが5点以下) の2群に選別された.2SSTの測定方法について以下に記す.検者は,床に角材 (長さ90 cm,2.5 × 2.5 cm) を置き2 区画を作製した.被験者は,作製した2 区画を前後,左右方向の2 条件で各15 秒間連続して出来るだけ速く反復ステップを行った.検者は15 秒間でのステップ回数と角材に接触した接触回数を測定した.また,測定中の転倒を予防する目的で同評価は平行棒内で実施し,測定中に上肢の補助がみられた場合は再測定を行った.本研究では,前後ステップと左右ステップの合計回数から,接触回数を差し引いた回数を2SSTスコア [点] と定義した.なお,基礎疾患,年齢,身長,体重,およびBMIは診療記録より後方視的に調査した.統計学的手法として我々は,ADL,歩行自立度と2SSTとの関連性の検討には,Spearmanの順位相関係数を用いた.また,歩行自立群,非自立群での差の検定には対応のないt検定を用いた.さらに,受信者動作特性曲線より,歩行自立のための2SSTスコアのカットオフ値を抽出した.なお,統計ソフトはSPSS ver12.0 J for windowsを用い,統計学的有意差の判定基準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,当大学生命倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号: 第1967 号).また,ヘルシンキ宣言に則り,対象者に研究の主旨を説明し,同意を得た.【結果】対象者の運動項目FIMの中央値は81 点 (四分位範囲; 74 −88),歩行FIMは6 点 (FIM 4 点; 14 例,5 点; 19 例,6 点;29 例,7 点; 25 例),そして2SSTスコアの平均値は25.2 ± 7.4 点であった.2SSTスコアと運動項目FIM (rs = 0.70, p< 0.01),2SSTスコアと歩行FIM (rs = 0.79, p<0.01)には,正相関を認めた.また,歩行自立群は54例 (62%),非自立群は33例 (38%)であり,歩行自立群の2SSTスコアは,非自立群に比し高値を示した (18.2 点 vs 29.4 点,p< 0.01).さらに,歩行が自立するための2SSTスコアのカットオフ値は25.5 点であった (感度; 79.6%,特異度; 96.9%).【考察】高齢入院患者の2SSTスコアは,運動項目FIM,歩行FIMの双方に相関を認めた.また,歩行自立群は,非自立群に比し高値を示したことから,2SSTスコアは,ADLや歩行自立度と関連する評価指標であると考えられた.さらに,カットオフ値は感度,特異度とも良好であり,歩行自立を判別する値として活用できると考えられた.以上のことから,2SSTは,歩行が自立または介助レベルの高齢患者に対しての歩行自立の可否を判定する有用な指標と考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究において我々は,2SSTとADLおよび歩行自立度との関連に加え,歩行自立の可否を判別するための2SSTのカットオフ値を明らかにした.以上のことから,2SSTは,高齢入院患者への理学療法実施における歩行自立度の判定,治療プログラムの立案,効果判定,および目標設定の際の指導方策の一助になるものと考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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