抄録
【はじめに、目的】諸家により脳室内出血(Intraventricular hemorrhage;IVH)は発達予後に影響を与え、IVHの重症度と発達予後は関連することが報告されている。一方で、IVHの発達予後について移動動作能力についての報告は少ない。また、臨床上、新生児期においては異常所見がはっきりしないことが多く、IVHの新生時期における神経学的特徴についての報告も少ない。そこで、IVHを合併した極低出生体重児の発達予後と新生児神経学的特徴について後方視的に検討した。【方法】対象は、当院新生児医療センター入院となりIVHを発症し、理学療法を行った10名(平均在胎週数25週5日±10日、平均出生体重834g±225g)。IVHの重症度はPapile分類を用いた。新生児神経学的評価としては、Dubowitz評価を修正週数37週から42週に行った。発達予後は、修正1歳6か月時点で神経学的所見および新版K式発達検査の結果を基に小児科医が判定し、脳性麻痺、精神発達遅滞、正常発達に分類した。発達予後別のIVHの重症度および脳性麻痺の移動動作能力を示した。脳性麻痺と正常発達のDubowitz評価について統計学検討を行った。統計学的検討にはMann Whitney検定を用いた(有意水準5%)。【倫理的配慮、説明と同意】本研究の倫理的配慮は、小児科受診時あるいは理学療法開始時に匿名性に配慮した上データを記録することを説明し了解を得た。【結果】IVHの重症度は片側3度4名、4度3名、両側(重症側4度)3名であった。発達予後は脳性麻痺5名(そのうち4名は精神発達遅滞を合併)、精神発達遅滞3名、正常発達2名であった。脳性麻痺の麻痺分布は5名ともに片麻痺であり、IVH重症度は4度であった。脳性麻痺5名のうち、1歳6ヶ月の時点で一人歩きが可能であった症例は1名、つたい歩きが可能であった症例は4名であった。10例のDubowitz評価の平均値はtotal score24±4.7、tone7±2.5、tone patterns 4.3±0.9、reflexes 5.4±0.8、movements 0.9±0.8、abnormal signs 2.2±0.9、behavior4.4±1.6であった。脳性麻痺5名と正常発達2名のDubowitz評価について各カテゴリーおよびtotal scoreについて有意差は認めなかった。【考察】IVHの発達予後について、二木らは1度から3度においても4度に比べ発症率は低いものの脳性麻痺、精神発達遅滞を認め、正常発達はIVH全体で56.1%であったと報告している。本研究の対象となったIVHは3度あるいは4度であり比較的重症な症例における検討であったため、10名中8名において障害を認めており、障害の発生率は高かった。脳性麻痺を呈した症例のIVH重症度は全症例において4度であり3度の症例では脳性麻痺を認めなかった。また、1歳6か月で何らかの歩行が獲得されており移動能力の障害については比較的軽度であると考えられた。我々は、第55回日本未熟児新生児学会において極低出生体重児の発達予後に関するDubowitz評価のカットオフ値はtotal score27点と報告している。今回のIVH児の平均total scoreは24点と低値であり、IVHを合併した症例は新生児期において他の極低出生体重児と比較して未熟性あるいは異常性があることが示唆された。しかし、今回の検討は症例数が少なく在胎週数や出生体重などの出生時の因子を加味した検討はできていない。今後、IVH児の発達に与える要因についてさらなる検討が必要と考えられた。【理学療法学研究としての意義】IVHは発達予後に影響を与える因子であり、理学療法導入となる要因となることが多い。IVHを合併した極低出生体重児の発達予後や新生児期の特徴を後方視的に把握することで中長期視点に基づいて新生児期から理学療法介入が必要と思われた。