理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-17
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ポスター発表
前腕回内可動域制限が結帯動作に与える影響
佐々木 晃子亀山 顕太郎岩永 竜也荻野 修平村田 亮石毛 徳之
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抄録
【目的】 結帯動作は複合運動であるため、肩甲上腕関節にのみアプローチを行っても改善しないことを臨床でも経験する。このような結帯動作制限を有する症例の中には、前腕の回内可動域制限に対しアプローチを行うことで、結帯動作制限が改善する場合がある。こうした症例は、前腕の回内可動域制限が、結帯動作制限の一要因になっていると考えるが、前腕の可動域制限が結帯動作に与える影響を述べた研究は少なく、どの程度の影響を及ぼすか明らかにされていない。そこで、本研究では前腕の回内可動域制限を擬似的につくり、前腕が最大結帯動作に与える影響を調査することを目的とした。【方法】 被検者は本研究に同意を得た、健常成人10名(男性8名 女性2名、平均年齢24.1±2.5歳、平均身長167.1±10.7cm)、測定は右側上肢のみとした。利き手は全員右手であった。測定項目は最大結帯動作時の母指と第7頸椎棘突起の距離とし、メジャーを用いて1mm単位で測定した。測定肢位は体幹伸展位、股関節90°屈曲位、膝関節90°屈曲位とし、椅子座位で測定した。体幹伸展位は矢状面から観察して、肩峰と大転子が一直線となるように設定した。測定課題は、前腕の回内可動域を制限しない状態での最大結帯動作(以下;最大結帯動作)、およびテーピングにて前腕の回内可動域を制限した状態での最大結帯動作(以下;前腕回内制限による結帯動作)の2つの課題とした。2つの課題の順番はランダムに行い、それぞれ最大結帯動作時の母指と第7頸椎棘突起の距離を2回測定し、2回の平均値を指椎間距離として求めた。テーピングは、非伸縮性テーピング(日東メディカル社ニトリートCB-38)を使用し、テーピングを巻く肢位は上腕下垂位、肩関節内外旋中間位、肘関節90°屈曲位、前腕回外位とした。テーピングを巻く方法は、尺骨茎状突起より開始し、前腕掌側を通り橈骨茎状突起へ、さらに前腕後面へ回り尺骨の茎状突起へ到達させ、同様の方向へ螺旋状に前腕遠位から前腕中間位までテープを巻き、擬似的に前腕回内制限をつくった。回内制限の角度に関しては、テーピングの巻き方・強さを調整し、最大の自動前腕回内角度が60°(正常可動域より30°の前腕回内制限)になるように調整した。テーピングは全例同一検者が巻いた。また、全例テーピングを巻いた後に、肘関節の屈曲伸展角度に制限が起きていないことを確認した。統計処理にはSPSS17.0J for Windowsを用い、最大結帯動作と前腕回内制限による結帯動作を対応のあるt検定を用いて比較した。有意水準は5%とした。【説明と同意】 被検者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の主旨を十分説明し、同意を得た上で研究を行った。【結果】 最大結帯動作時の指椎間距離は平均16.1±4.3cm、前腕回内制限による結帯動作時の指椎間距離は平均19.4±4.8cmであり、最大結帯動作に比べて前腕回内制限による結帯動作時の指椎間距離に有意な延長が認められた。内訳としては10名中9名が延長をしめし、1名は変化がなかった。最大結帯動作と比較し、前腕回内制限による結帯動作時の指椎間距離の延長は、各被検者間で0cm~6.5cmと被検者間で差が生じた。【考察】 今回、前腕の回内可動域を制限した場合は、前腕の回内可動域を制限しない場合と比較し指椎間距離が延長する傾向にあった。指椎間距離を短縮させるためには、母指の外転(いわゆるサムズアップ)を十分に行い、前腕を回内させ母指の先端を上部に向ける必要がある。この時に、前腕の回内が制限されていると十分に母指の先端を上部に向けることができずに、指椎間距離の延長につながると考える。また、前腕が回外傾向だと尺骨が棘突起から離れるため、上腕骨の伸展動作がより必要となり、肩甲上腕関節への負担が増大し指椎間距離の延長につながるのではないかと推察した。日常生活の中でも、女性用下着の着脱は前腕回内で行う場合もあるため、この前腕の回内可動域制限の改善は日常生活動作の拡大にもつながると考えた。結帯動作の制限に関して様々な報告があるが、本研究で明らかになった前腕の回内可動域制限に関しても、結帯動作制限の一要因といえると考える。今回、健常者において結帯最終域での制限がみられたが、今後は実際の症例を通して前腕回内角度の改善が、どの程度結帯動作の改善に影響を与えるか検討していく予定である。【理学療法学研究としての意義】 本研究より、結帯動作最終域において制限を有するような症例に対し、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、体幹の可動性の他に、前腕の可動性についても着目し、評価、治療をする必要があると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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