理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-01
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一般口述発表
一般病棟でのSelf- Exercise Programの実施は退院時のADL向上に寄与するか
傾向スコアによる分析
白石 成明杉山 統哉松本 大輔鄭 丞媛近藤 克則
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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中患者では急性期より理学療法や作業療法の介入量を十分確保することが重要である.しかし,本邦ではこれらの十分な介入量の確保が困難で,理学療法等の時間以外にも患者が安全に遂行できるself- exercise program(SEP)が重要である.しかし,その効果について検討した研究は少なく,その理由として無作為比較対照試験が行いにくいことがあげられる.そこで,本研究では一般病棟の脳卒中患者を対象とし傾向スコア(PS)による交絡因子の調整により,SEP実施と退院時ADLとの関連について検討することを目的とした.【方法】 対象は脳卒中リハビリテーション(リハ)患者データバンク(DB)に一般病棟患者として登録された4698名中,次の選択基準を満たす1864名とした.選択基準は,1)FIM欠損・不明がない2)年齢20歳以上3)発症後7日以内入院,在院日数31日以上(非急性期病棟患者の除外)4) 在院日数7日以上5) SEPの入力が不十分な病院の除外(不明・欠損が30%以上)6) SEPの入力に不明および欠損がない,とした.調査項目は年齢,性別,脳卒中病型,在院日数,入院時および退院時のFunctional Independence Measure(FIM)運動・FIM認知,退院時FIM運動と入院時FIM運動の差(FIM利得運動) ,発症前および入院時modified Rankin Scale(mRS),入院時Glasgow Coma Scale,SEP実施有無,exercise program with stuff support(EPSS)の有無とした.また,登録患者の中,SEP実施率が30%以上の施設の登録か否かについても調査した.なお, FIM利得運動についてはFIM利得運動22点未満と22点以上に分割する変数(FIM利得運動2分割)を新たに作成し解析に用いた.分析はSEP実施有無での2群間におけるFIM利得運動2分割との関係性の推定のための分析を行った.なお,ADL向上に寄与すると考えらえる交絡因子を調整するためPSを算出した.PSにより対象者を均等に5層のサブグループに層別化しサブグループ毎にχ二乗分析を行い.さらにMantel-Haenszel法により層別解析を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究に用いたデータは日本リハ医学会研究倫理審査会でリハ医療の向上を目指すものであり、疫学調査の倫理指針に照らして倫理上の問題が無いと確認されている.【結果】 SEP実施有無別の比較では,全ての項目で有意差が認められた.t検定で解析した変数のうち,退院時FIM運動,退院時FIM認知,FIM運動利得では効果量が0.44,0.37,0.37と効果量は中程度であったが,それ以外では効果量は小であり実質的効果は極めて小さいと考えられた.また,χ二乗検定で解析した変数では入院時mRS,EPSS,SEP 実施率30%以上の施設患者,FIM利得2分割では効果量が0.26,0.24,0.39,0.27と効果量は中等度であったが,それ以外では効果量は小であり実質的効果は極めて小さいと考えられた. PS計算は有意差のあった項目の中,多重共線性を考慮し,退院時FIM運動,認知は除外して計算した.その結果,入院時FIM認知,SET30%以上の施設,性別,年齢,発症時mRS,EPSS有無が選択された.層別化解析ではMantel-Haenszel法による共通オッズは2.1であり,SEPの実施によりFIM利得運動が22点以上となる確率が2.1倍となった.【考察】 PSによる調整後でも急性期脳卒中患者ではSEP実施によりFIM利得運動が22点以上となる確率が2.1倍にもなり,ADL向上に寄与することが示唆された.SEPは年齢,性別,入院時FIM得点などを考慮しても有効であり,可能な限り実施を追及していく必要がある.先行研究では欧米型stroke unitが有効な理由として,多職種の連携による早期離床やADL介入などが重要であるとされており,SEPはADL介入の具体的な方法にあたると考えられる.一方でSEPの内容に関しては,安全への配慮などを慎重に検討する必要がある.今後,SEPに関してランダム化比較対照試験などによるエビデンスの高い研究が望まれる.【理学療法学研究としての意義】 これまではSEPに焦点を当てた研究は少なく,さらに,多施設からのデータに基づく研究は非常に少ないのが現状である.理学療法や作業療法の時間制限のある本邦では,これらを補う方法としてSEPが必要と考えられ,今後の積極的なSEPの指導の重要性が明らかとなった.
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© 2013 日本理学療法士協会
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