抄録
【目的】 当院は平成23年8月より本田技術研究所とリズム歩行アシスト(以下、アシスト)の適応と効果に関する共同研究を行っている。アシストは高齢者、有疾患者の歩行改善を目的とした、軽量で屋外でも使用可能な装着型歩行補助装置である。アシストの期待される効果は「楽に歩行できる」すなわち歩行効率の向上がある。歩行効率とは、歩行中のエネルギー消費量の効率性を示す。北谷らは、若年健常者において呼気ガス分析による歩行効率の変化を検討し、リズム歩行アシストを使用することで歩行効率の向上が得られたとしている。本研究は、呼気ガス分析を用いて、脳血管障害片麻痺患者においてもアシストを使用することで、酸素摂取量が減少し、歩行効率が向上するかを明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は、当院入院中の脳血管障害片麻痺患者で心疾患がなく、かつ高次能機能障害、認知面の低下や著しい関節障害、失調症状を有さず、連続6分間の歩行が行える18名である。性別は男性14名、女性4名であった。平均年齢は57.4±14.3歳、診断名は脳出血10名、脳梗塞8名、発症から研究開始までの平均期間は351.1±942.2日、Brunnstrom StageはⅢ2名、Ⅳ3名、Ⅴ8名、Ⅵ5名、FIM移動項目得点は、5点4名、6点12名、7点2名であった。測定方法は1周60mの歩行路を、快適歩行速度で通常歩行6分間行い、次に休憩を約5分間した後に、アシスト装着しての6分間歩行を行った。各歩行時には、コアテックス社製携帯型呼気ガス分析計メタマックス3Bを使用し、歩行前の3分間の安静座位時と、6分間歩行時の酸素摂取量、心拍数を測定した。アシスト量の設定は、担当者が各対象者に適切なアシスト量を設定した。解析は、アシスト未装着時とアシスト装着時のそれぞれの6分間歩行と歩行前の安静座位3分間の呼気ガス値の平均値を算出し、酸素摂取量と心拍数の歩行時から安静時の値を引いた値を解析対象とした。それぞれの6分間歩行総距離を測定することで歩行速度(m/min)を算出し、酸素摂取量を歩行速度で除した値を酸素コスト、心拍数を歩行速度で除した値を生理的コスト指数(以下PCI)として算出し、アシスト未装着時とアシスト装着時で比較した。統計学的処理はPASW.Ver18.0を用いて、対応のあるT検定を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 研究者、共同研究者と利害関係を持たないボランティアを募り、測定方法および本研究の目的を説明し、同意が得られた者に行った。【結果】6分間歩行距離の平均は、アシスト未装着時261.6±114.5m、アシスト装着時270.8±113.7mとアシスト装着時の方が約4%有意に延長した(p<0.05)。酸素コストは、アシスト未装着時0.182±0.93ml/kg/m、アシスト装着時0.171±0.89ml/kg/mとアシスト装着時の方が約6%有意に減少した(p<0.05)。PCIは、アシスト未装着時で0.56±0.3beats/m、アシスト装着時で0.51±0.25beats/mとアシスト装着時の方が約10%減少したが、有意差は認めなかった。【考察】脳血管障害片麻痺患者へのアシスト装着により、酸素コストは有意な低下を認め、PCIも減少する傾向を認めた。また6分間歩行距離も有意に延長したことから、効率的な歩行がなされたと判断される。今回得られた効果背景には、仮説としてアシスト装着により、歩行時の筋活動量そのものが軽減することで、酸素摂取量と心拍数の影響が少なかった。または、歩行速度が増加し6分間歩行距離が延長したことで、結果として酸素コスト、PCIが低くなったことが考えられる。今後、これらの仮説を検証して行きたい。また今回の対象者は歩行レベルが高い片麻痺患者が対象であり、今後は歩行レベルの低い片麻痺患者に対しての有効性の検証も併せて行っていきたい。【理学療法学研究としての意義】 脳血管障害片麻痺患者に対してアシストの効果検証として、呼気ガス分析を用いて歩行効率性への影響を検証した。脳血管障害片麻痺患者にアシストを使用した歩行は、歩行効率性の向上させることが示唆された。