理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-08
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ポスター発表
姿勢と呼吸手技の違いが胸腹部呼吸運動パターンに与える影響
Konno-Mead diagramを用いた検討
野添 匡史間瀬 教史高嶋 幸恵松下 和弘髙山 雄介橋詰 裕美川崎 友里菜和田 智弘眞渕 敏島田 憲二山本 憲康福田 能啓道免 和久
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抄録
【はじめに、目的】 体位変換は理学療法士が臨床場面で頻回に用いるものであり、特に側臥位や座位に体位変換を行い、換気不全の改善や排痰を促すことは多い。体位変換に伴って呼吸機能(Lumb,1991)や横隔膜運動(Takazakura,2004)、肺内静水圧(Merryn,2009)や局所肺換気の変化(Riedel,2005)が生じることが報告されているが、chest wall運動が変化することも報告されている(Verschakelen,1995)。しかし、chest wall運動の変化について検討したものの多くは、我々が臨床でよく用いる側臥位での検討がなされておらず、また唯一側臥位の検討が行われているものはmagnetometerを用いてchest wallの径変化を検討したもの(Vellody,1978)だけであり、3次元的に動くchest wall運動を正確に捉えて検討した報告は少ない。特に、臨床場面においてはchest wall運動が胸式か腹式か、または胸腹部呼吸運動が協調的に生じているかを検討することが多いことからも、それらが体位変換にともなってどのような影響を受けるかを検討することは有益と考えられる。 本研究の目的は、姿勢と呼吸手技の違いが胸腹部呼吸運動パターンにどのような影響を受けるかを検討することである。【方法】 対象は健常男性14名(年齢:28.4±4.8歳、%VC:98.1±13.2%)。測定肢位は背臥位、右側臥位(側臥位)、端坐位(座位)の3肢位とし、3次元動作解析システム(Motion Analysis社製Mac3D system)を用いて体表面に貼り付けた反射マーカー(背臥位66個、側臥位81個、座位86個)の座標変化を測定した。測定は各肢位において2分間の安静呼吸(QB)、3回の最大吸気・呼気(VC)を行うこととし、測定順序は無作為とした。得られた座標変化からchest wall体積及び胸部・腹部の体積変化を算出した。そして、全対象者について各肢位でのQB中及びVC中の腹部体積変化をX軸、胸部体積変化をY軸にプロットし、Konno-Mead diagramを作成した。得られた曲線の傾きから胸腹部呼吸運動の優位性(傾き>1:胸式、傾き<1:腹式)を検討した。さらに胸腹部運動の協調性はAgostiniらの方法(1966)に準じてこの曲線の位相差(θ)を算出し、このθが大きい場合は協調性が低下していると判断した。統計学的検討として、各肢位におけるQB、VCのKonno-Mead diagramの傾き、及びθについてANOVAを用いて検討し、多重比較はBonferroni法を用いて行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者に研究の方法、目的を説明し、書面による同意を得た上で実施した。また本研究は兵庫医科大学倫理委員会の承認を得ている。【結果】 QBの曲線の傾きは背臥位0.60±0.26、側臥位0.66±0.31、座位0.97±0.31とすべての肢位で腹式を呈しやすく、さらに座位と比べて背臥位で有意(p<0.01)に低い値を示した。VCについては、背臥位2.22±0.59、側臥位1.84±0.49、座位2.35±0.81とすべての肢位でQBと比べて胸式を呈しやすく(p<0.01)、背臥位、座位と比べて側臥位で有意(p<0.01)に低い値を示した。また、QBの位相差θは背臥位14.5±7.4°、側臥位13.8±7.3°、座位10.3±5.7°、VCでは背臥位10.3±9.3°、側臥位12.8±7.5°、座位11.6±7.8°であり、QB、VCともに肢位間で差は認められず、QBとVCでも差がなかった。【考察】 姿勢の違いと呼吸手技の違いで胸腹部呼吸運動パターンは異なり、特に安静時のなかでは背臥位が腹式呼吸となりやすく、最大吸気・呼気時は側臥位に比べて背臥位や座位では胸式呼吸を示しやすかった。このようなパターンの相違は肢位の違いによるchest wall各部位のコンプライアンスの変化や呼吸筋活動の変化が影響を与えているのではないかと考えられた。また、健常男性においては、胸腹部呼吸運動パターンの協調性は姿勢や呼吸手技の影響を受けないと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果は、各肢位、各呼吸手技中の胸腹部呼吸運動パターンの評価を行う際の一指標になりうると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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