理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-19
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一般口述発表
中手指節関節操作による側副靭帯長の変化
~超音波画像診断装置を用いた観察~
笠野 由布子林 典雄
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抄録
【はじめに、目的】中手指節関節(以下、MP関節)の側副靭帯は、指が伸展位にあるときには緩み内外転運動を可能にするが、MP関節の屈曲とともに側副靭帯は緊張し内外転運動が制動される。この現象はMP関節の屈曲可動域と側副靱帯との緊張が密接に関わることを示している。手指伸筋腱断裂術後リハビリテーションでは、縫合腱の修復と強度の関係からMP関節の屈曲運動を一定期間禁止されるのが普通である。つまり、MP関節伸展位固定に伴うMP関節の伸展拘縮の発生と縫合腱の保護とを同時に解決する方法論が必要である。このような症例に対し我々は、手指の牽引を用いたMP関節の離解操作を加えることで側副靱帯ならびに関節包の短縮を予防する運動療法を実施し一定の効果を得ている。そこで今回、MP関節伸展拘縮の一要因である側副靭帯に着目して、手指の牽引による関節の離解操作が、側副靭帯長に影響するのか否かについて超音波画像診断装置を用いて検討することで、屈曲運動を早期に行えない症例に対する手指牽引の臨床的妥当性について考察したので報告する。【方法】対象は、検査側の手関節および手指に機能障害の無い成人8名14肢(男性6名、女性2名、年齢21.5±0.65歳)とした。測定にはesote社製MyLab25および12.0MHzリニア式プローブを使用した。側副靱帯長の測定は、対象者の前腕を回内外中間位で検査台上に固定し、示指MP関節の橈側よりプローブをあて側副靱帯長軸像を描出した。測定条件は、1)MP関節伸展0°、2)MP関節屈曲90°、3)MP関節伸展0°+ 手指牽引操作の3条件とし、超音波画像上での計測は、高エコーに描出される側副靭帯の中手骨頭付着部と基節骨底部の最大膨隆部の2点に垂線を立て、超音波画像診断装置内の計測パッケージの距離計測機能を用いて、その2点間距離を測定した。牽引操作時の計測においては、牽引操作時の動画を記録し、骨間が最大に開大したところで同様に計測した。3条件の値をそれぞれ比較し、検討した。統計学的解析には一元配置分散分析を行い、多重比較検定にはBonferroni検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】実施にあたっては中部学院大学倫理委員会の承認を得て、参加者には本研究の主旨を十分に説明し、書面にて参加への同意を得た。【結果】1)MP関節伸展0°の側副靭帯長は平均1.54±0.9cm、2)MP関節屈曲90°の側副靭帯長は平均1.66±0.9cm、3)MP関節伸展0°+牽引操作の側副靭帯長は平均1.71±0.9cmであった。3条件間での比較においては、1)MP関節伸展0°と2)MP関節屈曲90°、1)MP関節伸展0°と3)MP関節伸展0°+手指牽引操作、2)MP関節伸展0°と3)MP関節伸展0°+手指牽引操作の側副靭帯長に有意な差を認めた(P<0.01)。【考察】今回の研究より、側副靭帯長はMP関節伸展0°より、MP関節屈曲90°で平均1mm程度伸張されることが分かった。これは、側副靭帯の中手骨付着部がやや背側に位置しているため、MP関節を屈曲することによって起始と停止の距離が離れるためと考えられる。また、中手骨頭部は背側で細く、掌側で幅広い卵形をしており、MP関節の屈曲に伴い側副靭帯は骨頭顆部に押し広げられて緊張することから、側副靭帯の伸張性とMP関節伸展拘縮とが強く関連することが分かる。本研究よりMP関節の牽引操作では、側副靭帯長は平均1~2mm長くなることが確認され、MP関節周囲の他の軟部組織による拘縮要因を除外すれば、関節の牽引操作が側副靭帯の伸張性を維持するのに有効である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究より、手指牽引による関節離開操作に伴う側副靭帯長の変化が関節周囲の運動療法を実施するうえで重要な基礎データとなるとともに、手指外傷後や術後患者の理学療法にとって有用な知見となると思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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