理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-P-04
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ポスター発表
ホットパック療法による筋硬度,血流量に対する効果の検討
―準ランダム化比較対照試験による検討―
小平 智之加藤 仁志小田内 友輝岩田 卓松澤 正
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抄録
【はじめに、目的】 ホットパック(以下,HP)療法は非常に簡便で最も多く用いられるが,HP療法による筋硬度,血流量に対する効果の検討はあまりなされていない.そこで,本研究の目的は,HP療法による筋硬度,血流量に対する効果を検討すること,および効果がある場合,その効果が持続されるのかを検討することを目的とした.【方法】 対象者は男性15名,女性15名の健常成人30名(21.4±0.7歳)とした.30名をくじ引きによってランダムに,I群(HP療法施行群),II群(無加温HP施行群),III群(対照群)の3群に割り付けた.なお,各群とも男女各5名ずつ計10名とした.実験は,状態を安定させるため10分間安静にしてから開始した.開始時,開始20分後,開始40分後に筋硬度,皮下血流量,深部血流量を測定した.筋硬度の測定にはデジタル表示式NEUTONE筋硬度計TDM-Z1(TRY-ALL社製)を用い,皮下血流量の測定にはレーザー血流計サイバーメドCDF-2000(オー・イー・エス社製)を用い,深部血流量の測定にはレーザー血流計PSA-IIIN(バイオメディカルサイエンス社製)を用いた.I群は,開始から20分間HP療法を施行し,経過後HPを除去し更に20分間安静にした.II群は,I群と同様の手順で実施したが,加温していないHPを用いた.III群は,40分間安静とした.統計学的解析は,開始時の値,各群間の20分後の変化量,40分後の変化量を各群間で比較するために多重比較(Bonferroniの方法)を用いた.危険率は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に対し本研究の内容と趣旨,参加を中止できること,個人情報の取り扱いと処理方法,結果公表方法などの説明を行い,研究に参加して頂く場合には同意書に署名をしていただき,データの公表に関して対象者が特定されない形で行った.【結果】 開始時の各群間に有意差を認めた項目はなかった.全ての測定項目(筋硬度,皮下血流量,深部血流量)において,I群の20分後の変化量がII群,III群の変化量より有意に大きかった(p<0.05).II群とIII群間には有意差は認められなかった.筋硬度,深部血流量において,I群の40分後の変化量がII群より有意に大きかった(p<0.05).I群とIII群間,II群とIII群間では有意差は認められなかった.皮下血流量の40分後の変化量には有意差は認められなかった.【考察】 筋硬度,皮下血流量,深部血流量はI群の20分後の変化量がII群,III群と比較して有意に大きくなったことから,加温したHP療法に効果があり,温熱効果によって今回の結果が得られたと考えられた.HP療法には筋硬度を低下させ,皮下血流量,深部血流量を増大させる効果があることが明らかとなった.そして,筋硬度と深部血流量においては,I群の40分後の変化量がII群,III群と比較して有意に大きくなったことから,筋硬度と深部血流量に対する効果は40分後まで持続することが明らかとなった.筋硬度を低下させた要因として,温熱効果による軟部組織成分であるコラーゲン線維の伸長性が増大したことが考えられた.血流量が増加した要因としては,温熱により組織の代謝が亢進したことや,血液粘性が低下したことが考えられた.皮下血流量に温熱効果の持続が認められなかった原因として,皮膚表面の湿気が気化したことや,水の熱伝導率が高いことが考えられた.これらが皮膚表面温度の低下を招き,皮下の血管が収縮し,皮下血流量が低下したと考えた.深部血流量では,皮下血流量と比較し温熱効果による持続がみられた.これは,脂肪組織が熱の放散を妨げたことが考えられた.深部組織に及んだ熱量は,温度が下降した表層へと熱放散を行うが,脂肪組織の熱伝導率は低く,深部組織からの熱放散を妨げたためではないかと考えた.HP療法は表在温熱療法として用いられているが,本研究より筋硬度,深部血流量に変化を認めたことから,深部組織の加温及び筋のリラクゼーションの効果が期待できると考えた.また,HP除去後の温熱効果の持続性を認めたため,運動療法施行時の前処置としての妥当性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 HP療法は表在温熱療法として用いられているが,本研究の結果より,筋硬度および深部血流量に変化を認めたことから,筋のリラクゼーションの効果および深部組織の加温が期待できることが明らかとなった.また,その効果は40分後まで持続することが明らかとなり,運動療法施行時の前処置としての妥当性が示唆された.このことは理学療法研究として有意義であると考えられた.
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© 2013 日本理学療法士協会
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