理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-P-04
会議情報

ポスター発表
帯状疱疹後神経痛に対する経皮的電気刺激治療の効果
シングルケースデザインによる検討
徳田 光紀庄本 康治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia: PHN)は,帯状疱疹が治癒した後も持続する神経障害性の疼痛で,帯状疱疹3ヵ月後で7~25%の割合で発症するとの報告もある.治療法としては薬物療法が一般的であるが,近年のPHNの薬物治療ガイドラインで第一選択薬とされているプレガバリンは,浮動性めまいや傾眠といった副作用が64.5%に認められるとされている.PHNによる疼痛に加え,薬物の副作用によって日常生活動作レベルや活動量,生活の質の低下をきたすため,薬物使用量は可能な限り少量であることが望ましいと考えられる.一方で,経皮的電気刺激治療(Transcutaneous electrical nerve stimulation: TENS)はゲートコントロール理論と内因性オピオイド放出などによる鎮痛効果があり,非侵襲的で副作用がほとんどない理学療法手段として多く使用されている.Barbarisi Mらは,プレガバリンにTENSを組み合わせることで,より効果的な鎮痛を認めたことを報告しているが,本邦では同様の試みが実施されていない状況である.本研究の目的は,PHNを呈した1症例に対して薬物療法に加えてTENSを実施し,鎮痛効果ならびに薬物使用量や副作用に与える影響を検討することとした.【方法】対象は右側胸部の帯状疱疹後14週を経過し,PHNを呈した60歳代の女性である.薬物療法はプレガバリンの経口投与で,1日用量は300mg(75mg×4錠)であった.薬物の副作用で浮動性めまいと傾眠を訴えており,日中の活動量が低下していたため,医師と相談のうえ,薬物使用量は疼痛の程度に合わせて自己調節可能となっていた.なお,プレガバリン以外の薬物による副作用はないことを確認したうえで,本研究を実施した.研究デザインはシングルケースのABABデザインとし,A期は薬物療法のみ,B期は薬物療法に加えてTENSを併用して実施した.各期間は2日間で,計8日間の実施期間とした.B期のTENS介入は全日で同時間帯に実施し,バイアスの影響に配慮した.TENSには電気治療器(Chattanooga社製,インテレクトモバイルコンボ)を用いて,パルス幅100μs,周波数1~250Hz(変調型)の対称性二相性パルス波に設定した.刺激強度は感覚レベルで不快でない最大強度とし,1回の治療時間は30分とした.電極は自着性電極(Axelgaard社製,PALS,5 cm×9 cm)を2枚使用し,患部と同一の皮膚分節領域上に設置した.評価は疼痛と副作用(めまい,傾眠)の程度を11段階のNumerical Rating Scale(NRS)にて測定した.各評価は盲検化された看護師によって記録されたデータ(朝,昼,夕の1日3回測定)を用いて1日の平均値を算出した.また1日の薬物使用量と内省報告も記録した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守したうえで,対象者に十分な説明を行い,同意および署名を得た.【結果】1~8日目にかけて,各々の疼痛は5,5,4,3.3,5,5.7,4,3.3となった.同様に副作用症状のめまいは4.3,4.7,3.3,2.7,3.7,5.7,3,2となり,傾眠は3,3.7,2,1.7,3.7,3,2,2となった.薬物使用量は300,300,225,150,300,300,150,150mgとなった.A期の評価項目の平均値は疼痛5.2,めまい4.3,傾眠3.3,薬物使用量300mgとなり,同様にB期では疼痛3.7,めまい2.8,傾眠1.9,薬物使用量169mgとなった.また,「電気治療をした後は痛みが軽い」,「電気治療をした後は薬を減らしても痛くない」,「薬の量が減るとめまいが軽いから,日中も安心して動ける」といった内省報告が得られた.【考察】A期よりもB期の方が,疼痛および副作用の程度は低値を示し,薬物使用量も軽減した.TENSによる鎮痛効果によって薬物使用量が軽減し,結果的に副作用症状も軽減したと考えられた.対象者の受け入れも良好でTENS後の即時効果を認めたが,翌日以降への持ち越し効果は少ないと考えられた.今後は,症例数の蓄積に加えて,TENSの長時間介入や長期間介入による検討,プラセボ群の設定など,よりTENSの効果を明確にしていく必要があると考えられる.【理学療法学研究としての意義】帯状疱疹後神経痛を呈した1症例に対してTENSを実施し,疼痛および薬物使用量の軽減と薬物副作用症状の軽減を認めた.帯状疱疹後神経痛に対する薬物療法の補助療法としてTENSが有用である可能性があり,効果を明確にしていくことで理学療法分野拡大にも繋がると考えられる.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top