理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-16
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ポスター発表
足部機能低下が歩行中の跨ぎ動作のバイオメカニクスに及ぼす影響
奥野 将太谷本 研二波之平 晃一郎阿南 雅也新小田 幸一
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抄録
【はじめに、目的】高齢者の転倒の要因は,外的要因と内的要因の2 つに大別され,このうちのいくつかの要因が重なることによって転倒リスクが高まるとされている.外的要因が関与する動作の1 つとして,障害物の跨ぎ動作(以下,跨ぎ動作)が挙げられ,多くの高齢者が跨ぎ動作中に転倒すると報告されている.一方,内的要因の1 つに足部機能低下が挙げられ,足部機能低下は姿勢制御能力に影響を及ぼし,転倒リスクを高めると報告されている.跨ぎ動作と足部機能低下,それぞれの研究は散見されるものの,足部機能低下が歩行中の跨ぎ動作に及ぼす影響について報告しているものは少ないのが現状である.そこで本研究は,足部機能低下が歩行中の跨ぎ動作のバイオメカニクスに及ぼす影響について明らかにし,足部機能の低下した高齢者に対する転倒予防のための理学療法プログラム立案の一助とすることを目的として行った.【方法】被験者は足底冷却によって増悪する既往歴および現病歴を有さない健常若年者10 人(男性6 人,女性4 人,年齢21.7 ± 0.7歳,身長167.9 ± 9.1cm,体重57.7 ± 8.2kg)であった.被験者の両側の肩峰,股関節,膝関節外側裂隙,外果,第5 中足骨頭,第2 趾先端の計12 点の解剖学的標点にマーカを貼付した.足部機能低下は足底の冷却によって行い,被験者は足底冷却前(以下,条件N)と足底冷却後(以下,条件C)の2 条件下で,歩行中の跨ぎ動作を行った.跨ぎ動作は,歩行開始後5 歩目に障害物を右下肢で跨ぎ,6 歩目に左下肢(以下,後行肢)で跨いだ.課題動作の運動学的データは3 次元動作解析システムKinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用いて計測した.同時に運動力学的データは4 基の床反力計(Kistler社製2 基,Advanced Mechanical Technology社製2 基)を用いて記録した.得られたデータを元に,各マーカの3 次元空間座標,身体重心,足圧中心(center of pressure:以下,COP),関節角度,関節モーメントを算出した.また,左第2 趾先端マーカのy座標が障害物後端の直上を通過した時を後行肢が障害物を跨いだ瞬間(toe clearance時:以下,TC時)として算出した.統計学的解析にはSPSS Ver.14.0J for Windows (エス・ピー・エス・エス社製)を用い,Shapiro-Wilk検定によりデータに正規性が認められた場合は対応のあるt検定を,認められなかった場合にはWilcoxonの符号付順位検定を行った. なお,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち,演者の所属する機関の倫理委員会の承認を得た.また,被験者に対して研究の意義,目的について十分に説明し,口頭および文章による同意を得た後に実施した.【結果】左爪先離地から左TC時までの所要時間は,条件Cが条件Nよりも有意に長かった(p<0.05).左TC時,左足関節底屈角度は条件Cが条件Nよりも有意に大きかった(p<0.05).左TC時における右爪先-COP距離は,条件Cが条件Nよりも有意に短かった(p<0.05).左TC時における右足関節底屈モーメントは,条件Cが条件Nよりも有意に高値を示した(p<0.05).【考察】条件Cでは,左TC時に左足関節底屈角度の増加,爪先離地から左TC時までの所要時間の増加を認めた.これは,冷却による足部体性感覚の低下により,左TC時に適切な足関節背屈角度が確保できなかっためであると考えられる.このため跨ぎ動作時,足関節がより底屈位となり,足部が障害物を越えるのに要する時間が延長したと考えられる.また,条件Cでは,右爪先-COP距離の短縮を認めた.先行研究では,足底全体の感覚の低下が生じるとCOPをより前足部へと移動させると報告されている.本研究においてもCOPがより前方へと移動し,足関節と床反力ベクトルとの距離が長くなったことで右足関節底屈モーメントは有意に高値を示したと考えられる.【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は,足部機能を低下させた条件での跨ぎ動作のバイオメカニクス解析から,後行肢跨ぎ越え動作時間の延長,足関節底屈モーメントの増加を明示したことにある.これらは,高齢者の転倒に対する足部機能の重要性の再確認とともに,今後の跨ぎ動作の評価と理学療法プログラム立案の一助となると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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