理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-06
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一般口述発表
大腿骨近位部骨折の転帰先の検討における退院支援スクリーニング票の有用性について
今屋 将美桑原 萌堀内 大嗣児玉 淳山下 将輝當利 賢一坂田 大介東 利雄三宮 克彦久保田 聖美富田 愛加来 克幸
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抄録
【目的】高齢患者の転帰先を検討する際、身体機能の予後が大きく影響することに加え家族構成や介護状況の程度などにも当然影響される。今回、在宅復帰を目標に掲げる高齢大腿骨近位部骨折患者の転帰先を検討する上で、身体機能面や介護状況などを含めたスクリーニング票が有用かどうかを検討した。【方法】対象は、当院に入院した大腿骨近位部骨折患者のうち65歳以上で、受傷前の生活場所が自宅で、なんらかの方法で歩行していた268例(男性43例、女性225例)とした。平均年齢は83.1±7.1歳。平均入院日数は65.5±30.3日であった。転帰先が自宅であったもの(以下、自宅群)、施設入所もしくは転院であったもの(以下、施設群)の2群に分類した。調査方法は、鷲見らの開発した退院支援スクリーニング票を使用した。これは、以下の8項目からなるスクリーニング票であり、退院後の医療処置(あり5点、なし0点)、退院先希望(病院・施設5点、自宅0点)、移動の自立度および排泄の自立度(それぞれ要介助3点、見守り2点、自立0点)、認知障害(診断あり2点、疑いあり1点、なし0点)、家族構成(独居2点、2人世帯1点、3人以上世帯0点)、介護状況(介護困難などあり4点、介護者就労あり2点、介護上問題なし0点)、介護保険(必要な状態だが未認定2点、申請中またはあり0点)で構成され、0-26点の幅を持つ。合計スコアが10点以上で退院支援の必要性が高いとされている。それぞれの情報を診療録より調査し得られた合計点をMann-Whitney U検定を用いて比較した。さらに、ROC曲線を用いてcut-off値を求めた。【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。また、当法人の臨床研究審査委員会の承認を受けて行った。【結果】転帰先は自宅群が180例、施設群が88例であった。退院支援スクリーニング票の各項目の平均スコアは自宅群、施設群の順に退院後の医療処置0点、0点、退院先希望0.1点、3.9点、移動の自立度0.9点、2.4点、排泄の自立度0.2点、1.0点、認知障害0.7点、1.6点、家族構成1.0点、1.1点、介護状況2.6点、3.7点、介護保険0.2点、0.3点であった。合計スコアの中央値は自宅群6点、施設群15点でMann-Whitney U検定より有意に施設群が高かった(p<0.01)。以上の結果から、自宅群を1、施設群を0としROC曲線を求めると、曲線によって下方に囲まれる面積(AUC)は0.93であった。ROC曲線の評価より、左上隅からの距離を利用した方法を用いて最も有効なcut-off値を求めると8点と判定され、その感度は83%、特異度は85%であった。【考察】今回の結果から、退院支援スクリーニング票は自宅復帰が可能か否かを判別する上で有用な評価スケールとなることが分かった。これまで我々が身体能力中心に転帰先を推定してきたものに、家族介護の状況や介護保険の要因などを点数化し客観的な指標として使用することでより正確な予後予測に利用できるのではないかと考える。さらにcut-off値の結果は8点以上であれば自宅復帰の可能性が低くなることを意味するが、本スクリーニング票の判定基準である10点より低い点数となった。これは、大腿骨近位部骨折という疾患特性を示しているものと考え、移動能力や排泄動作、認知機能の低下が目立つ患者や介護者自身が高齢で健康問題や不安があるなどの介護上の問題が自宅退院をより困難にした結果ではないかと推測する。【理学療法学研究としての意義】本スクリーニング票は退院後に関わる情報や到達移動レベル、ADL能力などが含まれるため入院時のみの評価では限界があるが、入院早期から継続的に利用することで身体機能や家族の意向の変化などに応じた客観的なスコア判定が可能となり、転帰先の検討において一つの有用な指標となることが期待できる。チーム医療を推進する医療現場では多職種と共有することで明確な根拠をお互いに確認することができ臨床的有用性は高いと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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