抄録
【目的】 平成15年に骨粗鬆症と転倒の予防教室(教室)を6カ月間実施し、骨量は変化しなかったが体力は有意に向上した。4年後参加者の骨量は有意に低下していたが、体力は実施前より高かった。そこで20年に15年の参加者を対象にリーダーを養成し、平成24年度現在では、住民主体で30人規模の教室が2箇所、20人規模の町内会の教室が3箇所で実施されている。目的はこれらの教室のリーダーと参加者の骨量と体力、QOLに及ぼす長期的効果を分析することである。【方法】 対象は15年より教室に関与している22名(15年参加者;平均年齢±SD;68.9±5.8歳)、20年以降関与している36名(20年参加者;68.6±5.3歳)、22年以降リーダーが運営している町内会の教室参加者12名(町内会参加者;69.5±4.8歳)とした。骨量は超音波法で踵骨の音響的評価値(OSI)を測定し、それから算出される若年成人平均値(YAM%)および同年齢平均値(同年齢%)を指標とした。体力は握力、膝伸展筋力、上体起こし、長座位前屈、開眼片脚起立、10m障害物歩行、6分間歩行を測定した。なお、膝伸展筋力は簡易型の把持筋力計により、他は文部科学省の新体力テスト(65歳~79歳対象)により測定した。QOL調査は日本骨代謝学会骨粗鬆症患者QOL評価表により行った。統計分析は、15年参加者は15年の教室前後と19年20年21年23年、20年以降の20年参加者は20年の教室前後と21年22年23年、22年からの町内参加者は22年の前後と23年の測定値を繰り返しのある一元配置分散分析で行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は埼玉県立大学倫理委員会の承認を得て(承認番号24005)、測定時には文書と口頭で説明し、文書による同意書を得た。【結果】 15年参加者では骨量はOSIが有意に低下し、YAM%(平均±SD)は86±8%~78±10%となったが(p<0.001)、同年齢%は有意差がなかった。体力は上体起こし9±6~12±7回、長座位前屈32±8~40±8cm、片脚起立105±29~116±17秒、障害物歩行7.0±0.9~6.6±1.1秒と有意に向上し(p<0.05~0.001)、握力が25±5~27±4kgの間で有意に変動し(p=0.001)、6分間歩行が625±58~586±53mと有意に減少(p<0.001)、下肢筋力22±5~24±4kgは有意差がなかった。20年参加者では骨量が減少(YAM%81±8~79±7%; p<0.001)、体力は下肢筋力21±3~24±4kg、片脚起立85±39~104±30秒、上体起こし7±6~11±6回と向上(p<0.001)、握力24±4~26±4kgと長座位前屈38±8~41±8cmは有意に変動し(p<0.01)、6分間歩行573±44~580±53mは有意差がなかった。町内参加者では骨量はYAM%83±8~81±9%、体力は握力24±3~25±4kg、膝伸展筋力20±4~23±4kg、上体起こし10±5~11±4回、長座位前屈37±10~40±9cm、片脚起立97±39~103±39秒、10m障害物歩行8.3±2.1~7.5±1.3秒、6分間歩行574±43~583±42mといずれも有意差はなかった。QOLはいずれの参加者も有意な変化はなく79±6~83±3点(100点満点)と高い水準を維持していた。【考察】 骨量は長期的には年齢とともに低下していた。体力は全体で維持向上している項目が多く、低下や変動していた項目も高い値を維持していた。どの形態の教室も頻度は月1~2回なので、教室への参加だけではトレーニング効果はないと考えられる。教室では運動の基本を体得し、続けるように働きかけている。リーダーや参加者は運動を習慣化させたため体力が維持向上していたと推察される。【理学療法学研究としての意義】 高齢社会において高齢者が自ら運動を継続し、健康寿命を延ばすためには、地域で運動指導を行い、健康教室を運営するリーダーが重要な役割を果たす。運動の基本と運動指導の原則を理解した住民のリーダーが実施した教室は、参加者の健康に対する意識を高め運動を継続することで体力の維持向上に効果があることが分かった。本結果は理学療法士が地域における転倒予防にも大いに関わることができることを示唆している。