理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-06
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一般口述発表
能動型歩行練習時の床反力
歩行速度、傾斜角度による検討
宮川 博文山本 隆博井上 雅之稲見 崇孝池本 竜則丹羽 滋郎大須賀 友晃赤尾 真知子本庄 宏司
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抄録
【はじめに、目的】 歩行練習器には自己の筋力によって床面ベルトを後方へ動かし歩行する自力歩行練習器(能動型)と電動で動く床面ベルト部分に合わせて歩く受動型歩行練習器(受動型)がある.我々は下肢運動器術後早期における安全かつ機能的な歩行練習を模索する過程で,手摺りを把持し身体を正中位に保ちながら歩行する能動型歩行練習を実施し,早期の歩容改善を得ている.今回,この歩容改善のメカニズム及び安全性を運動力学的に検討するため,能動型歩行練習実施時の床反力を調査した.【方法】 対象は歩行を制限する整形外科的疾患等の既往や徴候を有さない健常女性11名(平均年齢24±2歳,平均身長157.9±4.0cm,平均体重51.4±6.3kg)とした.能動型歩行練習器にはパラマウント社製ルイスウォーカーを用いた.能動型歩行実施時の床反力を調査するため,能動型歩行練習器をKistler社製床反力計の上に設置した.能動型歩行時において純粋な下肢の荷重量を計測するため,床反力計に干渉しないよう金属製のフレームを設置し,対象に手で把持させた.能動型歩行の条件は,条件1:傾斜角度が10度で歩行速度を時速3.0,4.5,6.0km,条件2:歩行速度が時速4.5kmで傾斜角度を0,10,20度とした.それぞれの条件の計測順序はランダムとした.比較対照は平地における自由歩行(時速5.0±0.4km)および速歩(時速6.4±0.5km)とした.床反力の計測は自由歩行2回,速歩2回,能動型歩行(各条件2回)の順に行った.床反力の分析は踵接地から次の踵接地までとし,自由歩行,速歩は2回の平均値を,能動型歩行は5回の平均値を代表値とした.検討項目は1)自由歩行,速歩に対する能動型歩行の最大垂直荷重(%)と,2)自由歩行,速歩に対する能動型歩行の最大推進力(%)とした.統計処理には繰り返しのある一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 研究に先立ち,全ての被験者に対し,1)研究内容,2)安全に十分配慮して研究を実施すること,3)被験者の機密保持に関する事項等に関し,十分な説明を行い,参加同意を得た.【結果】 1)最大垂直荷重:自由歩行に対する能動型歩行の割合は条件1:時速3.0km:87.2±6.2%,4.5km:93.1±7.5%,6.0km:97.8±6.3%,条件2:傾斜角度0度:95.2±7.8%,10度:93.1±7.5%,20度:90.6±8.2%であり,時速3.0km能動型歩行は自由歩行と比べ有意な低値を認めた.速歩との比較では全ての速度,傾斜角度で有意な低値を認めた. 2)最大推進力:自由歩行に対する能動型歩行の割合は時速3.0km:78.7±11.8%,4.5km:92.0±13.6%,6.0km:88.9±18.4%,傾斜角度0度:132.1±12.0%,10度:92.0±13.6%,20度:53.5±15.7%であった.能動型歩行は時速3.0km,傾斜角度20度で自由歩行と比べ有意な低値を,0度では有意な高値を認めた.速歩との比較では傾斜角度0度のみ能動型歩行が有意な高値を認め,それ以外の条件ではすべて有意な低値を認めた.【考察】 変形性膝関節症,膝関節靭帯損傷など下肢運動器術後早期の歩行練習は下肢の荷重機能,可動域,体幹バランスの維持、改善のため,また,下肢筋群を中心とした筋萎縮,固有知覚の低下を最小限にするためにも重要である.一方,早期歩行練習の問題点として,患側への荷重が困難なこと,膝関節周囲筋萎縮に伴う荷重時の膝崩れ,下肢関節の協調的運動が困難なこと等が挙げられる.今回の結果より,能動型歩行における荷重量は時速6.0km以下,傾斜角度0~20度において自由歩行を超えることは無く,両手で手摺りを把持し,身体を正中位に保ちながら歩行する能動型歩行の特徴により,患側への荷重コントロール,荷重時の膝崩れを予防することができ,術後早期の歩行練習として安全性が高いと考える.また,能動型歩行の傾斜角度が0度の場合、推進力は速歩より高値を認めた.これは能動型歩行の特徴である踵より床面ベルトを踏み込み,足底屈,膝屈曲,股伸展により後方へ引く動作様式が影響し,この一連の反復運動が下肢複合関節の協調的運動促進に繋がると考える. 実際の下肢運動器術後早期の歩行練習では鏡等を利用し,歩行姿勢,特に下肢アライメントを確認しながら能動型歩行練習を低速から高速へ,大きな傾斜角度から小さな傾斜角度へ段階的に進めていくことが早期に正常歩行を安全に再獲得する上で重要と考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より,能動型歩行練習が下肢運動器術後早期の歩行練習として,正常歩行の再学習を促す安全な方法となることが示唆され,理学療法学研究として意義のあるものと考えられた.
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© 2013 日本理学療法士協会
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