理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-02
会議情報

ポスター発表
回復期病棟の在宅復帰率に関わる日常生活機能要因の検討
武田 尊徳宮原 拓也足立 洋二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟における在宅復帰率は診療報酬における施設基準のアウトカム指標とされている。平成24年度の診療報酬改訂により回復期リハビリテーション病棟入院料1の算定基準として在宅復帰率7割以上が求められている。現状で当院回復期病棟は入院料1の施設基準を満たしており、2011年実績で在宅復帰率7割以上を達成している。しかし、在宅復帰率の維持の為の取り組みは行なわれておらず、月ごとでの在宅復帰率もバラつきがみられておりその要因についても検討はなされていない。在宅復帰率についての報告はあるものの関係するアウトカムは明らかにされておらず、認知面を含めた日常生活機能と在宅復帰率に関しての報告は散見される程度である。在宅復帰に必要な機能的要因を明らかにし、具体的なアウトカムによって評価した内容を基にプログラムされたリハビリテーションを早期から進めていくことで、在宅復帰を目標にする患者や家族に対しより効果的な介入が可能になると考えられる。本研究の目的は日常生活機能の回復と在宅復帰率の関係について明らかにすることである。【方法】対象は2008年10月から2011年6月までに当院回復期病棟に入棟し、脳血管疾患にてリハビリテーション介入を行った384名であった。そのうちデータ不備のあるもの、入棟から退院まで30日以内のもの、急性憎悪などにより新たに入院加療が必要になったものを除外した305名を解析対象とした(男性181名、女性124名、平均在院日数79日、在宅復帰率75.7%)。退院先によって対象を2群に群分けし(在宅復帰群、非在宅復帰群)、Functional Independent Measure(以下:FIM)を日常生活機能のアウトカムとして解析した。要因の検討に用いるFIMの点数は各動作項目の分類(大項目)により合計して取り扱う事とした(セルフケア・排泄・移乗・移動・コミュニケーション・社会認知)。まずFIMの大項目の利得(退院直近の点数-入棟時の点数)の2群比較を実施した。次に有意差が認められた変数の多重共線性を確認するため相関係数を検討した。係数0.8以上の変数がなかった為、変数の削除を行わず多重ロジスティック解析を実施し、在宅復帰率に関わる日常生活機能要因の検討を行った。多重ロジスッティック解析にてモデルに採用された変数はその項目の小項目の入棟時・退院直近の点数の分布を確認した。統計解析にはR-2.8.1を使用した.今回用いた変数は全て正規性を示さないデータであった為、2群間での差の検定にはMann-WhitneyのU検定を用い,相関係数の検討にはSpearmanの順位相関係数を用いた。【倫理的配慮】個人情報の取り扱いについては厚生労働省の定める「臨床研究における倫理規定」に則り、本研究は当院の倫理委員会において承認を得たものである。【結果】在宅復帰群、非在宅復帰群の2群比較において運動項目の全項目の利得(セルフケア・排泄・移乗・移動)が有意差を示した(P<0.01)。認知項目の利得(コミュニケーション・社会認知)においては有意差が認められなかった(P=0.28、P=0.10)。運動項目の全項目を独立変数として多重ロジスティック解析を行った結果、移動の利得に有意性が認められた(P<0.01、オッズ比:0.66)。移動の小項目のうち歩行において、入棟時に歩行で点数を付けていたのが在宅復帰群で71%(うち1-5点84.8%、6・7点15.2%)、非在宅復帰群で50%(うち1-5点97.3%、6・7点2.7%)であった。同じく退院直近の歩行項目において歩行で点数を付けていたのは在宅復帰群で75.3%(うち1-5点60.3%、6・7点39.7%)、非在宅復帰群で51.3%(うち1-5点97.4%、6・7点2.3%)であった。【考察】在宅復帰に関わる日常生活機能要因の検討を行った結果、FIMの移動の利得が在宅復帰との関係が大きい事が示された。移動は歩行(車椅子)、階段から構成されており、歩行において在宅復帰群と非在宅復帰群では歩行か車いすかでの点数付けに入棟時から差がある事が示唆され、また歩行で点数付けした中でも在宅復帰群が退院時に自立となっていた割合が大きかった。今回の対象者内での在宅復帰率が75.7%と高値を示しているため数値での目標設定は困難であるが、移動能力に対する評価、治療が在宅復帰に向けて重要である事が考えられる。【理学療法学研究としての意義】在宅復帰に必要な日常生活機能を明らかにする事で在宅復帰に向けた取り組みが機能面、環境面ともに早期から可能になると考えられる。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top