理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-03
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ポスター発表
片麻痺患者における足底挿板の効果
中野 洋平
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抄録
【はじめに、目的】 足底挿板は整形外科領域の障害に対して処方されてきた。その使用目的は、足部アーチの保持や、踵骨棘、炎症部に対する免荷、そして変形性膝関節症、下肢アライメントの矯正、脚長差の補正などであった。しかしその後、下肢障害のみならず、身体全身の動的姿勢制御に着目することで、疼痛の軽減や運動効率の向上を図る足底挿板が登場し、数々のスポーツ障害に対して多くの治療効果が報告されるようになった。 脳卒中片麻痺患者においても足底からの情報は重要なものとなる。足底感覚や膝・足関節の深部感覚が低下している患者においても、体幹の感覚により、歩行可能な例は存在する。該例ではいかに体重を麻痺側下肢に乗せる事が出来るかが歩行を行う要因のひとつになりうる。足底挿板を用いる事で、足部からのアライメントを荷重に対して有利な位置に誘導する事で、スムースな歩行を誘導出来る事が予測される。 脳卒中片麻痺患者における足底挿板の適応は、これまでの報告では日常的に杖や装具を必要としないが、歩行が不安定なため、特に外出時において歩行速度や耐久性に問題のあるケースを対象に行われてきた。すなわち、下肢の支持性が不十分であり、足部をはじめとした各関節の随意的制御が困難なケースに対しては、短下肢装具をはじめとした各種の装具を積極的に用いて、歩行能力の向上を心がけてきている。そこで今回の目的として、介助が必要なく歩行可能な脳卒中片麻痺患者に対して足底挿板を使用し、歩行能力の変化が得られるかを、Brunnstrom Stage(以下:B.R.S)別に分類し、どの症例に対し最も効果を発揮するか、また、Stage別の特徴等があれば検証した。【方法】 対象は、発症期間6ヶ月以内、著明な高次脳機能障害を呈さない患者(WAIS-Rにおいて)。歩行レベルとしては補装具を使用せず、歩行がFIM5点以上のもの。重症度はB.R.S別にStage4~6(以下:Stage4・5・6)、足底部の感覚障害を有さない患者、足関節に著明な関節制限(内反尖足等)を有さないもの各々10例で、年齢65.57±3.62歳であった。測定方法として、足底挿板使用時と未使用時の即時的効果において、歩行評価を行った。研究者自身が足底挿板製作者と各評価の測定を施行した。今回、足底板には入谷式足底板を使用した。歩行時の計測には、加速度計・ジャイロ併用型の簡易姿勢計測センサー(ジースポート社製Pocket-IMU)を使用、仙骨直上に設置し、最速10m歩行時の状態を計測した。歩行時の、最速10m歩行スピード、X軸、Y軸、Z軸におけるそれぞれの角度、加速度の最大値と平均値をB.R.Sごとにt‐検定両側検定を行い、優位水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者へ、ヘルシンキ宣言に基づき本研究の説明を行い、本研究に対する同意を得た上で研究を行った。【結果】 足底板使用前後において、以下の結果となった。最速10m歩行に関して、各Stageにおいて、最速10m歩行のスピードの向上に有意差が見られた。X軸角度において、Stage4・5で有意に角度の減少が見られた。X軸加速度において、Stage5・6で、有意に前方方向への加速度の向上が見られた。Y軸角度において、Stage5・6で有意に角度の減少が見られた。Y軸加速度において、Stage6で、有意に角度の減少が見られた。Z軸角度において、各Stage共に有意差が見られなかった。Z軸加速度においても同様に、各Stageで有意差は見られなかった。【考察】 今回の研究より、片麻痺患者においても足底からのアーチサポートを行うことで、歩行スピード、歩行効率に変化が見られた。Stage別においてもStage4・5・6それぞれに足底板の効果が認められた。Stage4では前方への推進力よりも、側方動揺が歩行効率低下に影響していると思われ、側方への安定性向上を誘導することで、歩行スピードの向上したものと示唆。Stage5では側方への不安定性、前方への加速が歩行高率の低下に影響しているものと思われ、側方への安定性と前方への加速を誘導することで歩行スピードの向上が示唆。Stage6では、側方の安定性は得られており、前方への加速のみを誘導することで歩行スピードの向上が見られたと示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究の意義として、介助が必要なく歩行可能な脳卒中片麻痺患者を対象にして、従来は整形外科領域で使用されていた足底挿板を用い、加速度計・ジャイロ併用型の簡易姿勢計測センサーによる歩行能力を測定および解析を行った。その結果、片麻痺患者の歩行においても足底挿板の効果があり、また、Stage別に効果が異なることも明らかとなった。
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© 2013 日本理学療法士協会
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