理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-41
会議情報

ポスター発表
等尺性収縮での股関節内外旋筋力比の検討
坂東 峰鳴瓜谷 大輔福本 貴彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】 股関節内外旋筋は股関節の安定性に寄与するといわれている.しかし,膝関節屈伸筋力におけるHQ比のような指標は股関節内外旋筋力に関しては確立されておらず,簡便な評価方法が必要なのではないかと考えられる.そこで,本研究では臨床上有用な股関節機能の評価方法の確立を目標に,信頼性,妥当性が認められているトルクマシンで測定して算出した股関節内外旋筋力比(以下,IE比)と,臨床で簡便に使用できるハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)で測定し算出したIE比の関係を明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は下肢に重篤な整形外科的疾患の既往のない健常大学生34名(男性17名、女性17名,年齢21.7±0.7歳) とした.測定項目は最大等尺性収縮での股関節内旋・外旋筋力とした.測定にはトルクマシン(system3 BIODEX社)とHHD(μ-tas F-100 アニマ社)を使用した.測定肢位は端座位と背臥位で股関節内外旋中間位,膝関節は90°屈曲位とし,各肢位で左右それぞれ3回ずつ測定した.HHDでの測定もトルクマシンのシート上で行った.測定時は体幹,骨盤,大腿部をベルトで固定し,両上肢は座面両端の手すりを把持させた.測定は5秒間行い測定間には1分間の休息を行った.HHDでの測定はベルト固定法で行い,下腿と固定柱は平行に,それらと固定ベルトは垂直になるよう設定した.パッドの高さはどちらの測定も内旋・外旋ともに内果の直上とした.トルクマシンとHHDの計測は別日とし,測定順序はランダムとした.測定値は3回の測定の平均値とし,股関節内旋筋力を外旋筋力で除した値をIE比として算出した.統計解析はトルクマシンとHHDでのIE比を男女別,肢位別でt検定,スピアマンの順位相関係数,級内相関係数によって比較検討した.統計ソフトはIBM SPSS statistics version20を使用した。有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 測定にあたり被験者本人に対して本研究の主旨を説明し, 同意を得た上で実施した.本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】 測定方法間の男女別,肢位別のIE比の値は,男性の背臥位はトルクマシン0.70±0.06,HHD0.68±0.04,女性の背臥位はトルクマシン0.94±0.03,HHD0.87±0.03であった。また,男性の端座位はトルクマシン1.05±0.06,HHD1.04±0.06,女性の端座位はトルクマシン1.36±0.06,HHD1.40±0.06であった。測定方法間の比較では女性の背臥位を除き有意差を認めなかった.IE比の測定方法間の相関は,男性の背臥位でρ=0.75,女性の背臥位でρ=0.54,男性の端座位でρ=0.64,女性の端座位でρ=0.52 であり,すべての群で有意な相関が見られた.級内相関係数(ICC(2.2))は,男性の背臥位は0.79,女性の背臥位は0.64,男性の端座位は0.73,女性の端座位は0.59であり,女性の端座位で中程度の相関,その他の群では十分な相関が見られた.【考察】 トルクマシンで測定した等尺性収縮での股関節内外旋トルクは,先行研究での結果と近似する結果であった.また肢位別でのIE比の結果は端座位では1以上となり,背臥位では1以下と異なる値を示した.これは股関節内・外旋筋は股関節屈曲角度の変化とともにモーメントアームの長さの変化や作用の逆転が生じることから,このような結果となったと考えた.トルクマシンとHHDでの測定結果から算出したIE比は標準誤差が小さく,女性の背臥位以外では有意差が見られなかった.また,男女とも端座位,背臥位ともに有意な相関が見られた.ICCではLandisの基準から,女性の端座位で中程度の相関,その他の群では十分な相関が見られた.以上のことから,HHDによる測定から算出した股関節IE比は,今後さらに精度を高めることで,臨床的に有用な評価方法として確立できる可能性があると考えた.一方,課題として内外旋比のバラツキが大きいこと,外れ値が存在したこと,被検者から運動の方法・方向が分かりづらいという意見があったことが挙げられる.したがって,測定前のオリエンテーション,代償動作の防止,HHDの固定性の向上などによって,測定の信頼性をより向上させることが必要である.また今回は大学生のみを対象としているため,年齢を考慮した基準値の確立も必要であると考えている.【理学療法学研究としての意義】 膝関節におけるHQ比のように股関節のIE比を臨床で簡易に測定できる方法によって確立することは,股関節疾患患者の機能評価や治療の効果判定などにおいて臨床上非常に有用なものとなると考える.しかし現在そのような評価指標は存在しないため,臨床で簡便に使用できるHHDでIE比の測定を行えるようになれば,股関節疾患患者の理学療法評価や治療効果判定に有用な指標を提供できるものと考える.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top