理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-38
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ポスター発表
当院における人工膝関節全置換術後の退院時運動機能・バランス能力・歩行能力の検討
-変形性膝関節症と関節リウマチとの比較-
小澤 亜紀子浦川 宰山副 孝文溝口 靖亮名嘉 寛之大崎 諒関 さくら平野 大輔三浦 早織山中 徹也田村 恵利奈仲里 美穂田中 伸哉織田 弘美間嶋 満
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抄録
【はじめに、目的】人工膝関節全置換術(TKA)の対象疾患として代表的なものに、変形性膝関節症(OA)と関節リウマチ(RA)が挙げられる。病態の異なるOA、RA症例に対して、当院では同一のプロトコールを使用しているが、原疾患により退院時のリハビリテーションの帰結に差が生じることが予想される。これまで原疾患によりTKA術後の運動機能の回復過程が異なることは報告されているが、退院時の帰結を原疾患で比較した報告は少ない。そこで本研究の目的は、TKAを施行されたOA、RA症例における退院時の運動機能・バランス能力・歩行能力を比較し、各疾患での術後の運動療法の一助とすることである。【方法】2010年10月から2012年9月に当院にてTKAが施行され、4週間プロトコール(術後3~4週で退院)に従い理学療法を施行し、杖歩行で自宅退院可能であったOA16例(OA群:男性2名、女性14名、年齢71.8±6.8 歳、非術側TKA5例)とRA11例(RA群:男性1名、女性10名、年齢68.5 ± 8.7歳、非術側TKA1例)を対象として、以下の項目を検討した。基本的項目は、年齢、BMI、杖歩行獲得期間、術後入院期間、術前の術側・非術側大腿脛骨角(FTA)とした。測定項目は、運動機能として安静時・歩行時の術側膝関節疼痛(VAS)、術側の膝関節伸展・屈曲可動域、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製ミュータスF-1)を使用して測定した術側・非術側の膝関節伸展・屈曲・股関節外転の等尺性筋力とした。またバランス能力の評価は、静的バランス能力として片脚立位時間、重心動揺計を使用して測定した総軌跡長(開眼開脚立位30秒:ユニメック社製JK-101 II)、動的バランス能力としてTimed Up and Go testを用いた。歩行能力としては、10m最大歩行速度と6分間歩行距離を用い、退院直前(術後平均22.5病日)に各項目を測定した。両群間の各項目の比較には、Mann-Whitney U検定、対応のないT検定を用い、統計学的有意基準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本研究の趣旨を口頭で説明し、同意を得た上で実施した。【結果】2群間の比較で統計学的に有意差が認められた項目は、基本的項目(OA群/ RA群)では、BMI(26.3±3.0/21.5±2.6[kg/m²])、術側FTA(186±4.0/177.2±5.5度)であった(p<0.01)。また測定項目(OA群/RA群)では、歩行時の術側膝関節疼痛(24.9±21.4/7.1±9.4mm)、術側の股関節外転筋力体重比(2.0±0.8/3.2±0.5[N/kg])、術側片脚立位時間(10.1±11.5/34.6±31.2秒)、総軌跡長(329.2±89.7/251.8±63.1mm)であった(P<0.05)。【考察】OA群はRA群と比較して、術側股関節外転筋力が有意に低下していた。井野らは、OAの内反アライメントにより股関節は外転位となるため、外転筋の張力発生効率が低下すると報告している。本研究のOA群では、RA群と比較して術側FTAが高値であったことから、OA群での術前の内反アライメントが術側股関節外転筋力の低下を惹起したことが推察された。また内反変形を伴うOAでは、術前に軟部組織の短縮や骨棘・関節周囲の癒着を生じやすいことから、RAと比較して術侵襲が大きいことが報告されている。このことが、本研究のOA群でRA群と比較して歩行時の術側膝関節のVASが高値であった要因と考えられた。高齢者を対象とした先行研究では、中殿筋が片脚立位保持や重心動揺に影響することが報告されているが、本研究のOA群に認められた術側股関節外転筋力の低下と術後の疼痛が、RA群と比較してOA群の静的立位バランス能力の低下をもたらしたことが示唆された。しかし両群間で動的バランス能力や歩行能力には、有意差を認めなかった。この理由としては、単関節疾患であるOA群では、術側の股関節外転筋の筋力低下と疼痛によって生じた静的バランス能力の低下を、歩行補助具(杖)によって代償していたことが考えられる。これに対して多関節疾患であるRA群では、肩・肘・手指関節に強直や疼痛を有しており、有効に歩行補助具を使用できなかったこと、並びに外反母趾等の足部の変形を有しており、支持基底面の狭小化によって静的バランス能力が良好であるにも関わらず動的バランス能力や歩行能力の低下を来したことが考えられる。以上から、OA群では術側の股関節外転筋の筋力強化や疼痛管理を行うこと、RA群では、足部変形へのアプローチによって動的バランスの改善を図ることが、各々の疾患の歩行能力の向上に重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】TKA術後のOAとRAでは、動的バランス能力や歩行能力は同等であったが、その背景となる運動機能や静的バランス能力には差がみられた。このことは、各疾患でTKA術後の病態に応じた運動療法を展開することの重要性を示している。
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© 2013 日本理学療法士協会
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