理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-19
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一般口述発表
一時的動脈血流遮断法による酸素利用能の評価の可能性
新津 雅也西田 裕介
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抄録
【はじめに、目的】運動耐容能の指標として嫌気性代謝閾値(AT)や最大酸素摂取量などがあるが、これらは複合的な要素を含む指標であり広義の意味で体力を反映するものとして使用されているのが現状である。また、これらの指標は比較的強い運動負荷により実施する必要があることから適応の幅が広いとは言えない。一方、一時的動脈血流遮断法は先行研究より酸素利用能を評価できる可能性が示されており、動脈血流遮断時のOxy-Hbの低下率(%MO2)と遮断終了後のOxy-Hb の回復率(TR)はクレアチンリン酸の再合成能力と相関関係を示すことが報告されている。また、この方法はAT測定のような全身運動ではなく局所的な運動で測定が可能である。そこで本研究では%MO 2 とTRをATや酸素供給能の指標であるO2pulse、Vtとの関係性を検証し、%MO2 とTRが酸素利用能の指標となりうるかを検討した。【方法】対象は健常成人男性24 名(平均年齢22.8 ± 2.9 歳)である。Oxy-Hb動態は背臥位にて股関節、膝関節90°の姿勢をとり、ヒラメ筋を対象として測定した。プロトコルは5 分間の安静後に3 秒間で1 回の足関節自動底屈運動と3 秒間で1 回の他動背屈運動をメトロノームに合わせて3 分30 秒間行い、再び3 分間の安静をとった。運動中の最後の30 秒間は大腿部に圧をかけ動脈血流を遮断した状態で実施した。ATの測定は自転車エルゴメータを用いてRamp負荷試験を実施した。%MO 2 は安静時を基準とした運動時の変化量を用い、TRは動脈血流遮断を終了した後のOxy-Hbが最大に達した時の回復率をそれに達するまでの時間で除した値の60%を用いた。O2pulse、VtはAT時と安静時の差の値を用いた。各項目の関係はPearsonの積率相関係数を用いて検討した。また、ステップワイズ法による重回帰分析を行い、%MO2 とTRがATに与える影響を検討した。すべての統計処理はSPSSを用い、統計的有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、すべての対象者に対して書面にて研究の目的および測定に関する説明を行い、口頭と書面にて研究参加の同意を得て実施した。なお、本研究は聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施した。【結果】%MO 2 、O 2pulse 、VtはATと有意な相関関係を認めた(r=0.632、p<0.05、r=0.683、p<0.05、r=0.552、p<0.05)。一方で、%MO2 はO2pulse、Vtと関係性が弱いことが示された(r=0.328、p=0.117、r=0.346、p=0.098)。また、重回帰分析の結果からATに最も影響しているのはO 2pulse と%MO 2 であった(β=0.533、p<0.01、β=0.457、p<0.01)。また、共線性の診断では多重共線性は認められなかった。TRについてはATと有意な相関関係が認められなかった(r=0.278、p=0.189)。また、他の全ての項目とも関係性は弱かった。【考察】%MO 2 はATと相関関係を示すにも関わらず、酸素供給能の指標であるO 2pulse 、Vtとは関係性が弱いことから酸素利用能を反映する運動耐容能の指標であることが考えられる。先行研究においても、動脈血流遮断中の筋酸素消費量と酸素利用能を反映するクレアチンリン酸の再合成速度は強い相関関係を示すことが報告されている。また、重回帰分析の結果よりO2pulse と%MO2 がほぼ同程度でATに影響していることが明らかとなり、O2pulse は酸素供給能として、%MO2 は酸素利用能としてATに影響を与えていることが考えられる。一方、TRについては一定の関係性が認められなかった。先行研究より動脈血流遮断後あるいは最大等尺性収縮運動後のTRは酸素利用能に依存するという報告は多いが、血管障害を呈するもの、つまり酸素供給能が低いものはTRの低下を認めるという報告もあることから、双方の要因を反映していることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より低負荷の運動で運動耐容能を評価することができる可能性が示唆された。また、これまでの運動耐容能の指標は複合的な要因を捉えていたが、一段階要素を還元した評価をすることができる可能性が示された。さらに、今後の発展としてミトコンドリアなどの酸素利用能系の機能がとりわけ低下している疾患群にも応用することで理学療法の発展に寄与できるものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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