理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-15
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ポスター発表
異なる座面高における着座動作時の下肢筋活動と足関節背屈可動域の比較
野尻 晴加西村 由香臼渕 亮介亀井 薫
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抄録
【はじめに、目的】脳卒中患者は,ADL向上と社会復帰を目指し,早期から積極的なリハビリが推奨される.立ち上がり練習等の下肢トレーニング量を多くすることは,脳卒中患者の歩行能力の改善に強く勧められる.しかし青柳らは,リハビリ期間が終了すれば,その効果は徐々に薄れてしまうと報告しており,退院後のホームエクササイズ等の導入が必要と考える.臨床場面において,立ち上がり練習は多く活用されており,それに関連した研究は数多くあるが,着座動作に関する研究は少ない.持続的な遠心性収縮と関節運動を必要とする着座動作は,脳卒中患者のように筋の協調性低下や足関節背屈可動域制限を有する場合,困難なことが多い.より安全で円滑な着座動作を獲得するには,着座動作時の下肢筋活動と足関節の特徴を明確にする必要があると考えた.また,環境によってその影響が異なることが予想され,特に座面の高さの違いが関係するのではないかと考えられる.そこで本研究では,異なる座面高に対し着座動作を行った際の下肢筋活動と足関節背屈可動域の特徴を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は下肢に重篤な整形外科疾患の既往のない健常成人20 名(男性10 名,女性10 名,平均年齢21.0 歳)とした.方法は,異なる座面高で着座動作を行ない,下肢筋活動,足関節背屈角度,所要時間を測定し比較することとした.座面高は,座位姿勢で膝関節屈曲90 度及び足関節底背屈0 度となる高さを基準(以下,0cm)とし,0cm,-5cm,+5cm,+10cmの4 条件下で着座動作を行った.動作の速さや歩隔は被験者の任意とし,着座完了時には足関節角度が底背屈0 度となるように意識してもらい,着座位置を同一となるようにした.測定順序は,-5cm,0cm,+5cm,+10cmとし,各施行間は30 秒程度の休憩をとった.着座動作は3 相に分類し,第1 相:大転子後方移動開始から肩峰最大前方移動まで,第2 相:肩峰後方移動開始から臀部が着床するまで,第3 相:臀部着床から着座完了までとした.右側前脛骨筋,外側広筋,腓腹筋外側頭の筋活動(最大随意収縮に対する割合;%MVC)を筋電計MYOSYSTEM1200(ノラクソン社製)にて測定した.同時に着座動作を側方からビデオカメラにて撮影し,各相の開始時を静止画として,画像解析ソフトImage Jにて足関節背屈角度を算出した.所要時間は各相の間の時間とした.分析は,4 条件間の着座動作時の各相における下肢筋活動量,足関節背屈角度,所要時間の比較とした.統計処理は,多重比較検定を用いて,Turkey-Kramer検定・繰り返しのない二元配置分散分析を行った.【倫理的配慮、説明と同意】全ての対象者には,研究の趣旨,方法,リスクを説明し,書面にて同意を得た.【結果】第2 相において,4 条件間で下肢筋活動量,足関節背屈角度,所要時間の全てに有意差が認められた.下肢筋活動(%MVC)は,-5cm,0cm,+5cm,+10cmの順に,前脛骨筋では76.5,68.4,60.6,53.9,外側広筋では71.5,65.8,56.3,44.8,腓腹筋外側頭では60.4,54.1,49.3,35.8 であった.下肢筋活動量は座面が高い程減少し,10cm間隔で有意差が認められた(p<0.01).足関節背屈角度(度)は同順に,13.2,11.5,8.86,7.79 であった.これも座面が高い程減少し,10cm間隔で有意差が認められた(p<0.01).所要時間(秒)は同順に,0.78,0.68,0.59,0.49 であった.これも座面が高い程減少し,5cm間隔で有意差が認められた(p<0.01).【考察】着座動作時の下肢筋活動量,足関節背屈角度は座面が10cm高くなると有意に減少しており,座面高10cmの違いは下肢筋活動,足関節背屈角度に影響を与えることが明確となった.脳卒中片麻痺患者が着座動作を獲得するには,質的な下肢筋活動も必要であるが,本研究では量的な必要性を明確にすることができ,早期からの着座動作練習の条件設定の目安として役立つのではないかと考えた.また,着座動作には足関節背屈可動性が必要であることが改めて明確となった.一側の足関節背屈可動域制限は,麻痺側への体重移動を阻害し,動的立位バランスに影響を及ぼし転倒など引き起こす可能性がある.反対に,麻痺側足関節の使用が不足することで,足関節可動域制限を作り出してしまう場合もある.安全性を考慮すると高い座面から着座動作練習を開始することが良いが,座面高を低くすることで,足関節背屈角度および下肢筋活動量の確保を図ることができる.座面高を調整した着座動作練習は,下肢機能回復のみならず確実な着座動作能力の獲得に繋がると考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究は,早期から着座動作練習を行う際の座面高の目標値となるだけではなく,維持期や退院後の患者の個々の能力に合わせたエクササイズを提案する際の一助となり得ると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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