理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-15
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ポスター発表
早産児の起立動作中における殿部離床までの運動パターンに関する予備的研究
米津 亮Abdolrahmani Abbas﨑田 博之瓦井 義広三木 由紀子山下 典子仁木 敦子脇田 媛加伊藤 公実子山本 菜緒
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キーワード: 早産児, 起立動作, 動作解析
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抄録
【はじめに、目的】近年の周産期医療の発展に伴い,在胎期間が短く出生時体重が1500g以下の胎児(早産児)の出生数が増加している。この早産児の中には,脳性まひなどの障害を有さない児も含まれるが,そのような児であっても運動発達が遅延する傾向を有する。これは,早産児が抗重力位での運動発達が困難なことを示唆しているが,その一方どのような運動特性のため運動発達が遅延するのかは十分に把握されていない。そこで我々は,早産児の運動発達を把握するための基礎的研究として,健常な運動発達を伴う1 歳児を対象に起立動作中の運動学的特徴について検討を行った。その結果,1 歳児の起立動作は体幹の前傾角度が小さいが,下腿の前傾角度を増加させ起立動作を行っている特徴を確認した。今回の研究では,このような基礎的所見と照らし合わせ,早産児の起立動作中の運動パターンについて調査することを目的とする。【方法】対象は,独歩を獲得した1 歳児(18 か月−21 か月)10 名である。この10 名を在胎週数30 週以下で出生時体重が1500g 未満の早期児群5 名(平均月齢19.2 か月)と健常な運動発達を伴う対照群5 名(平均修正年齢18.6 か月)の2 群に分類した。課題動作は,椅子からの起立動作とした。なお,1 歳児は動作手順の理解や平衡機能の未成熟さのため動作終了時に厳密な静止立位保持が難しい。そのため,今回の課題では動作開始時から殿部離床までの動作を解析した。椅子は背もたれ・肘掛のないもので,対象児の下腿長と同じ高さに設定したものを用意した。椅子の上には,体重が3kg以下になると電圧(V)が低下する独自に製作した圧センサーを設置した。そして,対象児には右側の肩峰・大転子・膝関節・外果にマーカーを貼付した。このような環境下で対象児の保護者に椅子の前方に位置してもらい,3 回以上の動作誘導を依頼した。このようにして誘導した動作を,身体の右側斜め前方と側方に設置した2 台のカメラ(30Hz)で記録し,三次元動作解析ソフト(Kinema Tracer:キッセイコムテック社製)を用いて解析した。なお,圧センサーと映像データは同期設定済みである。記録した動作のうち,動作開始時の姿勢が対称的で,膝関節がおよそ90 度に設定できた動作1 回を解析対象とした。解析では,動作開始時から殿部離床までの所要時間と体幹・股関節・膝関節・足関節の屈曲関節角度を抽出した。関節角度については,各部位の動作開始時と殿部離床時の値を算出した。統計処理については,2 群間の比較を対応のないT検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,大阪府立大学研究倫理委員会の承諾(受付番号2011-P05)を得て,保護者にその目的を十分に説明し,書面で同意を得たうえで実施した。【結果】動作の所要時間および動作開始時のすべての部位の関節角度については有意差を認めなかった。しかし,殿部離床時は体幹と足関節において有意な減少を認めた。体幹の屈曲角度は対照群が33.1 ± 7.0 度,早産児群が25.3 ± 2.7 度であった。一方,足関節の屈曲角度も対照群が31.2 ± 6.4 度,早産児群が20.9 ± 5.9 度であった。【考察】今回の結果は,早産児の起立動作中における殿部離床までの運動は,所要時間という観点では同年齢の健常な運動発達を伴う児とは変化を認めなかったが,その運動パターンは異なることを示唆した。このことは,早産児が抗重力位での運動発達の困難さを裏付ける所見の1 つといえる。【理学療法学研究としての意義】早産児への理学療法は,新生児期には確立した支援が展開されているが,抗重力位での機能獲得への支援は十分とは言えない。このような分野への新たな理学療法を展開するうえで,今回のような研究は意義があると思われる。【謝辞】本研究は,平成24 年度大阪公衆衛生協会「母と子のすこやか基金」の助成を受け実施した。
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© 2013 日本理学療法士協会
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