理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-25
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ポスター発表
坐位体幹回旋可動域と臥位体幹回旋可動域の相関性について
岩田 泰典吉岡 慶鷹澤 翔鈴木 貞興
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抄録

【はじめに】日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会(以下、日整会)による体幹回旋可動域測定は、坐位にて行われるため、肩甲帯・骨盤帯などの代償運動が生じやすい。また、測定時の基本軸は両上後腸骨棘(PSIS)を結ぶ線、移動軸は両肩峰を結ぶ線であるため測定誤差が生じやすい。これらの事実を考慮し、我々は体幹回旋可動域測定を、膝立て背臥位で実施している。我々は、第47 回日本理学療法学術大会において日整会による胸腰椎回旋可動域と膝立て背臥位での体幹回旋可動域の相関性について調べることを目的として、それぞれの方法での検者内信頼性と再現性について報告した。今回は、上述した2 つの方法に関して、検者間信頼性と体幹回旋可動域の相関について検討したので報告する。【方法】対象は腰痛がなく、外傷などの既往歴のない健常者11 名(内訳男性11 名、女性0 名)、平均年齢27.2 ± 4.1 歳、身長171 ± 6.8cm、体重68 ± 9.5kg、BMI23.2 ± 1.9 である。測定は臨床経験1 年目、5 年目の理学療法士2 名で行った。測定に先立ち被検者は、腰部を中心としたストレッチを約5 分間実施した。胸腰椎回旋可動域測定は日整会により制定された関節可動域検査法で測定した。膝立て背臥位での体幹回旋可動域測定は、背臥位から股関節を60°屈曲した肢位で、胸の前で手を合わせた状態で行った。初回測定時、足部の位置にテープを貼り、測定毎に足部の位置を修正した。関節可動域測定は両肩峰を結ぶ線が床面と平行になるようにセットし、床面と両上前腸骨棘(ASIS)を結ぶ線の成す角とした。体幹側屈などの代償が出現しないよう注意し、骨盤と下肢を一緒に誘導した。関節可動域測定は東大式金属製関節角度計に統一し、測定値は1° 刻みで検者が読み取った。測定は日整会による方法と、膝立て背臥位での体幹回旋可動域をそれぞれ左右3 回ずつ計12 回行い、級内相関係数(以下、ICC)を用いて検者間信頼性を検討した。また、ピアソンの相関係数を用いてそれぞれの方法の体幹回旋可動域の相関性について検討した。【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者に対して研究の趣旨と内容、得られたデータは研究以外で使用しないこと、および個人情報漏洩に注意することについて十分な説明のうえ同意を得て研究を行った。【結果】検者間信頼性:ICCは背臥位右回旋0.69、背臥位左回旋0.62、坐位右回旋0.88、坐位左回旋0.63 を示した。相関係数:背臥位・坐位右回旋0.40、背臥位・坐位左回旋0.47 を示した。【考察】本研究では、日整会による胸腰椎回旋可動域と膝立て背臥位での体幹回旋可動域測定の検者間信頼性と体幹回旋可動域の相関性について検討した。結果は、相関係数では背臥位・坐位右回旋0.40、背臥位・坐位左回旋0.47 とそれぞれの方法での体幹回旋可動域に強い相関関係は認めなかった。検者間信頼性についてはICC0.6 以上の結果が得られた。我々は第47回日本理学療法学術大会においてそれぞれの方法での検者内信頼性・再現性についてはどちらも良好な結果が得られている。以上のことから、膝立て背臥位での体幹回旋可動域測定は、体幹の回旋量を測る1 つの指標として使用することが可能であると考える。また、前回・今回の研究で坐位に比べ臥位では回旋可動域が大きくなる傾向が見られた。これは臥位での測定時には抗重力筋の活動が低下するため可動域に影響することが考えられる。このような点からも、手術後などでも簡便に取れる姿勢であり、検者側の誘導も行ないやすいため、臨床上簡便に使用することが可能と考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究により膝立て背臥位での体幹回旋可動域測定は、体幹の回旋量を測る1 つの指標として使用することが可能となった。今後は臨床で使用するとともに、同方法の傾向などについても探求していきたい。

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© 2013 日本理学療法士協会
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