理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-27
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ポスター発表
スコリオメーターを用いた脊柱側弯症の評価
森 友実子高倉 利恵
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抄録

【はじめに、目的】脊柱側弯症は早期発見、早期治療をすることで側弯の進行を防ぐことができる。このため、小・中学校では脊柱側弯症検診を実施している。しかし、検診方法は地域により様々であり、決まった方法がない。このため脊柱側弯症が見落とされる例も少なくない。この報告をうけ、脊柱側弯症の姿勢評価と、簡便に側弯の程度を数値化できるスコリオメーターを用いた評価の関連性を調べることで、より信頼性の高い脊柱側弯症の評価が可能となり、検診での脊柱側弯症の見落としを軽減できると考え研究を行なった。【方法】姿勢評価については、男性は上半身裸、女性は指定のタンクトップを着用し実施した。立位姿勢で肩甲骨下角と上後腸骨棘にランドマークとして直径8mmのシールを貼り、a)頭部の位置、b)肩甲骨の高さ、c)肩と頸部のライン、d)上後腸骨棘の高さ、e)ウエストラインと上肢の距離を「対称」又は「非対称」で評価し、被験者の後面からデジタルカメラ(CASIO Ex-Z31)で撮影を行った。スコリオメーター(MIZUHO OSI社製 No.5181525)を使った脊柱回旋角度については、立位姿勢から両手掌を合わせ、体幹をゆっくり前屈しスコリオメーターを脊椎の棘突起にあて回旋角度の最大値を計測した。この時にハムストリングスが硬く体幹の前屈が十分に行えない被験者は、両膝関節を均等に屈曲し、体幹の前屈を行い計測した。【倫理的配慮、説明と同意】対象者の選択基準は研究中に腰部や背部に疼痛、不快感が発生するリスクがある点、男性は上半身裸で女性はタンクトップになり被験者の後面を写真撮影する点を承諾、同意書にサインを得られた者とした。また本研究の対象除外の基準は脊椎疾患の既往歴・現病歴のある者とした。以上の基準を満たした、大阪河﨑リハビリテーション大学4 年生のボランティア学生22 名(男性10 名、女性12 名)で平均年齢21.5 歳(範囲21-22 歳)を対象とした。なお、本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号OKURU24-BO11)。【結果】姿勢評価における非対称者数の割合は、a)頭部の位置は18.1%、b)肩甲骨の高さは68.1%、c)肩と頸部のライン100.0%、d)上後腸骨棘の高さ54.5%、e)ウエストラインと上肢の距離86.3%であった。スコリオメーターを用いた脊柱回旋角度の割合は0度、1度は0.0%、2度は27.2%、3度は22.7%、4度は13.6%、5度は18.1%、6度は9.0%、7度は9.0%であった。【考察】スコリオメーターを使用した評価では、0 度、1 度の被験者は0.0%であった。先行研究によると、学生を対象とした調査では脊柱回旋のない被験者は全体の1.6%であったとしている。このことから本研究においてもスコリオメーターの値が0 度、1 度の被験者が0.0%であった原因として全ての被験者に脊柱回旋があったためと考えられた。姿勢評価の結果では、被験者22 名全てに姿勢の非対称がみられた。さらに、スコリオメーターで7 度の値を示した被験者の姿勢と7 度未満の被験者の姿勢を観察した結果、スコリオメーターで7 度の被験者と7 度未満の被検者の姿勢に大きな違いはなかった。例えば7 度の被験者と7 度未満の被験者と比較し、肩の高さの左右差が大きいという違いは見られなかった。これらのことから、脊柱側弯症の疑いがある者とない者の判別は姿勢評価のみでは信頼性が低く、軽度の脊柱側弯症を見落とす可能性が高いと考えられた。【理学療法学研究としての意義】スコリオメーターの利点は、側弯を数値化できることにより過去との比較が可能であること、被験者の負担が小さいこと、評価者内の信頼性が高いこと、使用方法が簡便であることが挙げられた。そして、スコリオメーターは数値化できることで運動療法実施前後の治療効果の比較が可能である。例えば側弯軽減のための運動療法実施前後でスコリオメーターの角度が変化しなければ運動療法の内容を変更する必要があると判断できる。本研究を通して、スコリオメーターとコブ角の相関性が明確化されていないことがスコリオメーターの欠点として挙げられた。先行研究ではスコリオメーターの5 度は少なくともコブ角で10 度と報告している文献や、スコリオメーターの7 度〜10 度はコブ角で少なくとも20 度と報告している文献がある。また、脊椎の回旋を計測するものであるため回旋要素がない脊柱側弯症の発見は困難であることが考えられた。今後の課題として脊柱側弯症検診の必要である小・中学生を対象者とした研究を行い、スコリオメーターとコブ角の相関性を明確化することで、より信頼性の高い脊柱側弯症評価が可能になると考えられた。

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© 2013 日本理学療法士協会
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