理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-27
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ポスター発表
自在曲線定規を用いた胸椎アライメント測定の検者間および検者内信頼性の検討
鴇田 拓也仲澤 一也石川 大輔
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抄録

【はじめに、目的】脊柱のアライメントや可動性を計測することは、脊柱のみならず肩甲骨や骨盤帯の問題に対する影響や治療効果をみる際の有効な指標となる。そのため脊柱アライメントの簡便な定量的評価方法が求められている。これまでに胸椎アライメントの測定にはX線像やスパイナルマウス、デジタルカメラによる報告がされている。今関らは、スパイナルマウスが胸椎アライメントの測定に有用と報告(2011)し、今本らは、スパイナルマウスと矢状面デジタルカメラ画像での評価に相関がある(2010)と報告している。しかし、X線は被爆等の問題、スパイナルマウスは導入に際して経済的問題、デジタルカメラはデータ処理の問題等、実際の臨床での使用が難しいことが多いと考える。一方、安価で簡便なツールとして、自在曲線定規を用いた脊柱アライメントの計測の報告がされている。我々の先行研究で、胸椎中間位・屈曲位・伸展位におけるX線像と自在曲線定規の胸椎アライメントに相関がみられると報告した。しかし、自在曲線定規を用いた評価の信頼性・妥当性について報告した研究は散見されるが少ない。そこで、この研究の目的は、経験年数の異なる理学療法士3 名による自在曲線定規を用いた胸椎アライメント測定の信頼性・妥当性を求める事である。【方法】対象は、検者として経験年数の異なる理学療法士3 名(A:11 年目、B:5 年目、C:3 年目)とした。被験者として健常成人男性14 名(平均年齢:34.5 歳;24-46 歳、平均身長:172.6cm;160-180cm、平均体重:73.4kg;63-93kg)とした。測定姿勢は、立位での中間位・屈曲位・伸展位の3 姿勢とし、いずれも矢状面上で耳孔と大転子が同一垂線上となるように規定した。自在曲線定規を用いた計測では、予め触診にてC7 およびTh12 棘突起をマークングした上で、C7 〜Th12 棘突起間に自在曲線定規をあてがった後、定規で示された脊柱カーブを方眼紙にトレースし、Milneらの方法に準じ後彎角を求めた。測定は、中間位・屈曲位・伸展位の順番で行い検者3 名がそれぞれの測定姿勢に対して順に計測を行った。その後、検者Cは7 名に対して再度計測を行った。統計処理として、検者間信頼性としてICC(2,1)、検者内信頼性としてICC(1,1)を用いて行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究への参加についてヘルシンキ宣言に基づき、説明書及び同意書を作成し、研究の目的、進行および結果の取り扱いなど十分な説明を行った後、研究参加の意思確認を行った上で同意書を作成した。【結果】ICC(2,1)では、級内相関係数が正中位で0.64、屈曲位で0.46、伸展位で0.76 であった。また、ICC(1,1)では、級内相関係数が正中位で0.92、屈曲位で0.81、伸展位で0.77 だった。【考察】本研究の結果では、Landisの基準(1977)で検者間信頼性は屈曲位でmoderate、中間位と伸展位でsubstantialとなり、検者内信頼性は伸展位でsubstantial、正中位と屈曲位でalmost perfectとの結果が得られた。また桑原の基準(1993)で検者間信頼性は屈曲で要再考、正中位で可能、伸展位で良好となり、検者内信頼性は、正中位で優秀、屈曲位で良好、伸展位で普通との結果が得られた。本研究の結果は、寺垣らの報告による検者間信頼性0.86 検者内信頼性0.95(2004)と異なる結果となった。寺垣らの報告では、測定を座位にて実施しており、本研究では立位にて測定をおこなった。座位では、下肢の影響は少ないが、立位では下肢の影響も生じてしまう。立位では、重心位置が高くなるため定規をあてがう強さや姿勢保持による筋疲労の影響により姿勢が変化しやすい可能性があるため研究結果に差が生じたことが考えられる。しかし、検者内信頼性は、普通から優秀という結果が得られている。このことから、ランドマークの正確な設定を行うことで、自在曲線定規における測定の即時の信頼性・妥当性は得られる可能性があると考える。今後は、より信頼性・妥当性の得られる測定方法となるように測定条件を考慮していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】簡便で安価な方法として自在曲線定規による評価も胸椎アライメントを評価する手段として有効である可能性があることが示された。

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© 2013 日本理学療法士協会
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