理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-09
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一般口述発表
負荷量調節可能な多裂筋強化エクササイズの筋電図学的解析
坪井 美公大井 優新家 美里高杉 あゆみ中嶋 正明
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キーワード: 多裂筋, 腰痛, 表面筋電図
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抄録
【はじめに、目的】急性の腰痛患者では多裂筋の顕著な萎縮がみられると報告され,これら多裂筋の萎縮予防および強化が必要である。現在,多裂筋の強化を目的とした腰痛体操としてバードドッグが推奨されている。しかし,強い痛みなどのためにその運動を遂行することが不可能なケースがある。今回,我々は背臥位にて実施可能な,かつ負荷量を段階的に調節できる多裂筋強化エクササイズを考案した。本実験の目的は,この考案した多裂筋強化エクササイズの効果を筋電図学的に評価することである。【方法】対象は整形外科疾患の既往のない健常人31 名(男性19 名,女性12 名:年齢22.1 ± 0.4 歳,身長166.9 ± 7.6cm,体重58.7 ± 10.3kg)である。本エクササイズにはコアヌードル(Genki gakko Co. Ltd)を用いた。コアヌードルは効果的な深部体幹筋運動を容易に行えるように開発された器具で,適度な弾力を持つスポンジ製のチューブを2 本束ねたものである。この上で背臥位をとり上肢を開いた状態で保持させると多裂筋の活動を引き出すことができる。被験者には,コアヌードルの上に背臥位の状態となり,右肩関節90 度屈曲位,左肩関節90 度外転位とし,5 秒間保持させた。次に左上肢に0.5kg,1kg,1.5kg,2kgの重錘を持ち,同じ姿勢を保持させた。その際,左側の多裂筋,胸腸肋筋の筋活動を測定した。表面筋電計はニコレー・バイキング4(Nicolet)を用い,安定した3 秒間の筋電波形の積分値(IEMG)を得た。事前に各筋の最大随意収縮によるIEMGを得て%MVICを計算した。多裂筋,胸腸肋筋の%MVICからLG ratio(グローバル筋に対するローカル筋の活動比率)を計算した。統計学的検定は,各条件間の比較に一元配置分散分析を行い,Bonferroni/Dunnの多重比較を行った。有意水準は5%とした。統計解析ソフトにはStatView Version 5.0 softwareを用いた。【倫理的配慮、説明と同意】本研究を行うに当たり,吉備国際大学研究倫理委員会の承認を受けた。対象者に対して本研究における趣旨の説明を十分に行い,賛同を得た上で実施した。【結果】%MVICは重錘を持たない状態では9.8 ± 8.0 %,0.5kgでは14.3 ± 10.5 %,1kgでは19.7 ± 9.8%,1.5kgでは25.0 ± 11.8%,2kgでは30.5 ± 15.2%となった。LG ratioは,重錘を持たない状態では2.0 ± 1.4,0.5kgでは2.5 ± 1.8,1kgでは3.1 ± 1.7,1.5kgでは3.0 ± 1.5,2kgでは2.8 ± 1.7 となった。【考察】重錘の重さが増すに伴い%MVICが増加し,多裂筋の活動が増した。LG ratio は重錘なしに対し0.5kgでは変化は認められなかったが,1kg以上の重錘負荷では高値を示した。1kg,1.5kg,2kgの重錘負荷においてもLG ratioは維持された。腰痛患者において多裂筋の活動が抑制され多の筋に比べて低活動となっている。多裂筋に対する強化エクササイズを考える際,可能な限り特異的に多裂筋を活動させるエクササイズが推奨される。先行研究におけるバードドッグのLG ratio 2.7未満であると報告される。本研究におけるLG ratio は1kgの重錘負荷では3.1 ± 1.7 と高値であり,かつそれ以上の重錘負荷においてもこの高LG ratioは維持された。このことは本エクササイズでは多裂筋が特異的に活動していることを示している。%MVICにおいては負荷なしに比べて1kg,1.5kg,2kgと重錘負荷が増すに伴い増加した。このことは重錘負荷を調節することにより,多裂筋の活動を調節できることを示している。各々の腰痛患者により多裂筋の萎縮度合いは様々であり,その程度に応じた負荷を調節できるエクササイズが必要と考えられる。本エクササイズはこの要求を満たすものであり,かつ背臥位で容易に実施できる優れた特徴を持つ。現在,腰痛体操は多裂筋エクササイズとしてバードドッグが,腹横筋エクササイズとしてアブドミナルドローイングが推奨されている。これらのエクササイズはそれぞれ四つ這い位および背臥位にて行うものである。多裂筋エクササイズをバードドッグから本研究のエクササイズに変えることにより,多裂筋と腹横筋のエクササイズを姿勢変換を経ず背臥位で行うことができ,患者への負担も減少する。本研究の対象者は健常人であり,実際の腰痛患者を対象としていない。今後,実際に腰痛患者に適用し本エクササイズの効果を検証する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究で行ったコアヌードルを用いた多裂筋強化エクササイズはLG ratioの高い多裂筋収縮を得ることができ,かつ多裂筋にかかる負荷を調節できる優れた特徴を持つ。また,背臥位で容易に行え,様々な程度の腰痛患者に対して広く適応が望める。今後,実際の腰痛患者を対象にその効果を検証していきたい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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