理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-18
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ポスター発表
急性期脳卒中患者における尿失禁改善の機能予後への影響とその要因
熊谷 謙一山内 康太岩松 希美小柳 靖裕藤本 茂鈴木 聡
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キーワード: 尿失禁, 脳卒中, 予測因子
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抄録
【はじめに、目的】脳卒中後の排尿コントロールは,ADL項目の中で2番目に難易度の低い項目であると言われている.しかし,急性期患者の4-8割に認め,介護負担が増加する最大の要因の1つである.また,尿失禁と機能予後との関連も報告されている.そのため,脳卒中急性期において排尿コントロールは重要であり,尿失禁が改善する意義も大きいと考えられる.本研究の目的は,脳卒中患者の尿失禁の早期改善と機能予後との関連,さらに尿失禁の早期改善に関連する因子を検討することとした.【方法】2010年4月から2012年7月に脳卒中の診断で当院入院し,リハビリテーションを実施した347例を対象とした.基準は発症前modified Rankin Scale(mRS)0-3,入院期間が8日以上で,かつ入院7日目に意識障害が無く, Barthel Index における排尿コントロールの項目が自立していないこととした.尿失禁の改善は,入院7日目から21日にかけて,排尿の項目が5点以上改善することと定義した. 調査項目は,人口統計学的データ(年齢,性別,身長,体重,BMI,発症前mRS),入院時National Institute of Health Stroke Scale[NIHSS],入院7日目における機能評価(Stroke Impairment Assessment Set[SIAS]),機能予後(3,6ヶ月でのmRS)とした. 尿失禁改善の有無による機能予後の比較は,Mann-Whitney U test を用いた.尿失禁改善の要因検討は,多重ロジスティック回帰分析を用いた.従属変数は尿失禁の改善とした.入院7日目以内の調査項目を,従属変数の有無で単変量解析を行ったうえで,統計学的有意差を認めた項目を独立変数としてステップワイズ解析に取り込んだ.統計ソフトはSPSS ver.18.0 を用いた.データはmean±SD,Median[IQR]で記載し,危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に沿って実施した.対象者には説明を行い,同意を得て実施した.【結果】入院7日目に排尿が自立していなかった症例は119/347例(34.3%)で,退院時までに排尿項目が5点以上改善した症例は41例(34.5%),改善しなかった症例は78例(65.5%)であった.3,6ヶ月のmRSは改善のあった群で37例,30例で,改善の無かった群で72例,60例でデータを入手可能であった.対象者の特徴として,平均年齢は75.7±10.7歳,入院時NIHSS10.4±8.1,退院時NIHSS7.0±6.1,退院時mRS4[3-4],在院日数39.2±18.4日であり,入院7日目のFIMは48.3±24.4であった.機能予後の比較においては,入院期間中に排尿の改善があることが,無いことと比較してmRSは 3ヶ月で2[1-3],4[3-5],6ヶ月で2[1-3],4[3-5]とともに低値であった(p<0.001).排尿項目の改善の有無で比較した単変量解析の結果,性別(p<0.001),発症前mRS(p<0.001),入院時NIHSS(p<0.021),SIAS(p<0.001)の4項目に統計学的有意差を認めた.これらの項目を取り込んだ多変量解析の結果,排尿コントロールが改善する要因は,発症前mRSが低く(OR=0.44[0.25-0.76];p=0.003),入院7日目のSIASが高いこと(OR=1.04[1.01-1.06];p=0.004)であった.【考察】本研究で対象とした脳卒中患者における入院7日目の尿失禁は約4割で認め,ADLが低く,機能予後不良であった.その中でも,急性期に尿失禁が改善した方が,mRSが低値であった.  入院期間中に尿失禁が改善する要因として,ADLの機能が身体機能と関連するため発症前mRSやSIASといった項目が尿失禁と関連したと考えられる.以上のことから,発症早期から失禁を改善させるような取り組みが機能予後を改善させる可能性があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】尿失禁の改善は,介護負担を軽減させ,機能予後を改善させる.そのため,急性期病院における尿失禁が改善する要因を把握し,介入することは理学療法に有益である可能性がある.また,尿失禁を認める対象者は低ADLであり,身体活動量も低いと考えられるため,運動量を確保し,身体機能を維持・向上することが必要と考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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