理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-04
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ポスター発表
抗プロラクチン療法と理学療法により運動耐容能の改善を認めた周産期心筋症の一例
急性期治療から育児復帰まで
北川 恵三上 博也平林 鑑佐藤 祐輔
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抄録
【はじめに、目的】 周産期心筋症とは妊娠・産褥期に新たに心不全症状を呈し、拡張型心筋症に類似した病態を示す心筋症である。日本での発症は年間約50名程度と報告されており、その治療報告は少なく、心臓リハビリテーション実施例の報告はみられない。今回我々は周産期心筋症治療において、通常の心不全治療に加え、抗プロラクチン療法と理学療法士の介入による心臓リハビリテーションを実施、心機能の改善をはかり、育児復帰を可能とした症例を経験したので報告する。【方法】 症例は20歳代前半女性。第一児を在胎41週で経膣分娩、出産2週前より咳嗽出現し出産後も持続、産後13日目に喘息発作の疑いで当院搬送。起坐呼吸、BNP 944.5pg/ml、CTR 71%、両側胸水・心嚢液貯留、左室拡張末期径(LVDd)60mm、左室駆出率(LVEF)30%と左室拡大・壁運動低下が認められ、周産期心筋症が疑われた。薬物治療により、NYHAは3から2に症状改善。第8病日から体動拡大・離床となり、理学療法開始。歩行練習・足踏み運動・自動運動による両下肢筋力強化運動より実施した。第15病日、500m歩行可能。第17病日より抗プロラクチン療法開始。第19病日、初回CPX実施。第23病日、階段昇降開始。第29病日、自転車エルゴメーターを開始。負荷を10Wより漸増、四肢筋力強化運動も実施した。第32病日からは、育児復帰に向けて、児の体重とほぼ同じ重さの砂のうを持ち運ぶ練習を開始した。また、住宅環境を聴取し、買い物等を含めたADL指導を行った。第41病日、試験外泊を実施。症状の悪化がないこと・ADLについて評価。第47病日退院。退院後は週2回、外来にて30分間の有酸素運動・レジスタンストレーニングを継続した。第73病日、抗プロラクチン療法終了。第93病日、3回目CPXで運動耐容能の改善を確認、負荷量漸増。第201病日、4回目CPX。第219病日(発症後7ヶ月)、CPX結果を基に生活指導・運動指導を行い、理学療法を終了。以上の経過より、入院時と治療介入後の血液検査データ・胸部X線写真・心エコー・6分間歩行テスト(6MWT)・CPXの結果を比較し検討する。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、趣旨、権利保障、匿名性、プライバシー保護について口頭および文書にて説明し、署名と同意を得ている。【結果】 入院時NYHA分類3、CTR 71%、LVEF 30%、LVDd 60mm、BNP 944.5pg/ml。急性期治療後、理学療法介入直前(第8病日)、CTR 56%、LVEF 38%、LVDd 58mm。第17病日での6MWTは420m。初回CPX(第19病日)実施、Peak VO2 17.0ml/min/kg(4.85METs)、AT 13.3ml/min/kg(3.81METs)であった。理学療法介入1ヶ月後(第38~40病日)、CTR 46%、LVEF 46%、LVDd 53mm、BNP 14pg/ml、6MWT 540mと改善、2回目CPX実施、Peak VO2 19.2ml/min /kg(5.49METs)、AT 16.9ml/min/kg(4.82METs)であった。第47病日義父母宅へ退院、家事援助を受けながら児と生活、外来リハビリテーション継続。第93病日、3回目CPX結果は、Peak VO2 24.2ml/min/kg(6.90METs)、AT 17.3ml/min/kg(4.94METs)であった。同時期、自宅にもどり、援助なしでの家事・育児をはじめる。第115病日、CTR 40%、LVEF 48%、LVDd 48mm、BNP <5.8pg/mlと改善がみられた。第171病日、6MWT 625m。第197病日、CTR 44%、LVEF 55%、LVDd 51mm。第201病日、4回目のCPX実施。Peak VO2 24.6ml/min/kg(7.02METs)、AT 17.6ml/min/kg(5.02METs)であった。第219病日、理学療法終了、その後薬物療法を継続。発症後10ヶ月時、CTR 42.5%。発症後1年、血液検査値すべて正常値、LVEF 56%、LVDd 50mmであった。【考察】 本症例が改善したのは適切な薬物療法に加え、心臓リハビリテーションが行われたことによると考えられる。抗プロラクチン療法を終了してからも心臓リハビリテーションは継続し、発症後7ヶ月で運動耐容能の改善がみられているのはその効果を示唆するものである。また、理学療法終了時には家事・育児を普通に行えるようになったのは、開始時より育児復帰を目標にアプローチしたのが有効であったと思われる。本症例は周産期心筋症全国多施設共同研究に心臓リハビリテーションを実施した症例として登録されている。今後全国の症例が検討されることによって、心臓リハビリテーションの効果も検証されるものと考える。【理学療法学研究としての意義】 周産期心筋症への理学療法の報告は少ない。本症例では心臓リハビリテーションのみではなく、育児復帰というニーズを明確にし、筋力強化・ADL指導などの理学療法介入も積極的に行い、患者満足度の高い結果を得た。理学療法の有効性を示唆するものである。
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© 2013 日本理学療法士協会
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