理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-14
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一般口述発表
慢性足関節不安定性を有する者における歩行および方向転換動作時の下肢関節動態
越野 裕太山中 正紀江沢 侑也石田 知也武田 直樹
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抄録
【はじめに,目的】足関節内反捻挫は最も一般的なスポーツ損傷であり,後遺症として慢性足関節不安定性(Chronic ankle instability:CAI)に多く発展する.足関節内反捻挫の再発予防のためにCAIによる下肢関節動態の変化を解明することは重要である.CAIを有する者において様々な動作中の下肢関節運動を調査した研究はいくつかあるが,一致した見解は得られていない.さらに,足関節内反捻挫は急な方向転換動作時に生じることが多いにも関わらず,CAIを有する者を対象とし,方向転換動作時の下肢関節運動を調査した研究は見当たらない.よって,本研究の目的はCAIを有する者における歩行,ターン動作,カッティング動作(急な方向転換動作)時の下肢関節運動を健常者と比較することとした.【方法】健常者12名とCAIを有する者12名を対象とした.CAIの定義は1)過去に最低1回は免荷または固定を要した捻挫,または歩行が困難となった捻挫の既往があること,2)過去に捻挫を最低2回以上,さらに過去2年間に最低1回の捻挫の既往があること,3)足関節giving wayの経験が複数回あること,4)Cumberland ankle instability tool(CAIT)のスコアが27点以下であること,5)主観的な足関節の不安定感,痛み,弱さの訴えがあることとした.両群とも下肢の骨折歴・手術歴がないこと,スポーツ競技活動に定期的に参加していることを条件とした.各被験者の下肢に反射マーカーを貼付し,赤外線カメラ6台(Motion Analysis,200Hz)と同期した床反力計(Kistler, 1000Hz)を用いて以下の3つの動作を記録した;1)自然歩行,2)歩行中に進行方向に対して45°方向へ,検査脚を軸に方向転換するターン動作,3)0.4mの距離を前方へジャンプし,足を接地してからの45°方向へ走行するカッティング動作.初期接地の前200ms間と立脚相(100%に正規化)における股・膝・足関節の角度を,解析ソフトSIMM(MusculoGraphics)を用いて算出した.なお,静的立位時の下肢関節角度を0°とした.また接地前の第5中足骨頭に貼付したマーカーの床からの最小距離を足部クリアランスとして算出した.各動作において,2群間における接地前200ms間と立脚相の関節角度の最大値と最小値,足部クリアランスを対応のないt検定にて比較した(p<0.05).【倫理的配慮,説明と同意】被験者には口頭と紙面により説明し、理解を得たうえで本研究への参加に当たり同意書に署名して頂いた.また本研究は,本学院倫理委員会の承認を得て実施された.【結果】年齢,身長,体重は2群間で差はなかった(健常群:20.7±0.5歳,172.1±8.0cm,64.7±9.3kg,CAI群:21.1±0.9歳,172.9±8.2cm,64.6±8.4kg).また,両群とも男性10名,女性2名であり,検査脚の利き脚(9脚)と非利き脚(3脚)の割合も同じであった.CAITスコアは,CAI群(20.8±4.4点)は健常群(29.8±0.6点)に比べ有意に低かった(p<0.001).歩行,ターン動作では,2群間で全ての関節角度に差は認められなかった.カッティング動作において,CAI群は健常群に比べ,立脚相の股関節最大屈曲角度(屈曲が正)が有意に大きく(健常群:39.8±6.4°,CAI群:45.1±6.0°;p=0.049),接地前の膝関節最大屈曲角度(屈曲が正)は大きい傾向であった(健常群:71.0±5.1°,CAI群:77.2±9.6°;p=0.063).また,CAI群は健常群に比べ,立脚相の足関節最大外反角度(外反が負)が有意に小さく(健常群:-12.0±6.0°,CAI群:-7.0±3.7°;p=0.022),足部クリアランスも有意に低かった(健常群:99.1±8.4mm,CAI群:64.6±5.8mm;p<0.001). 【考察】CAI群はカッティング動作において,健常群よりも大きな股・膝関節屈曲を示した.この所見は先行研究を一部支持する結果であり,CAIを有する者は健常者に比べ,股・膝関節をより用いた運動戦略を図ることが示唆された.また,CAI群はカッティング動作において,健常者よりも足関節外反角度が小さく,さらに接地前の足部クリアランスも低いことが明らかとなった.これらの所見はCAIを有する者において足関節捻挫の再発が多いことや,足関節のgiving wayが生じる原因の一つを示していると考えられる.また,歩行やターン動作では2群間で全ての関節角度に差はなかった.カッティング動作は他2動作に比べ,大きな床反力を伴い,さらに急な減速を要する.スポーツ動作のような,より動的な運動ではCAIによる下肢関節運動の変化がより生じる可能性がある.【理学療法学研究としての意義】 CAIを有する者において,足関節以外にも股・膝関節の運動機能を評価する必要性が示唆された.また,足関節内反捻挫の再発予防のために,カッティング動作においてCAI群で観察された足部・足関節運動の変化は修正されるべきである.
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© 2013 日本理学療法士協会
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