理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-10
会議情報

一般口述発表
要介護高齢者における上下肢機能とADLとの関連
今田 樹志波戸 真之介鈴川 芽久美林 悠太石本 麻友子小林 修秋野 徹島田 裕之
著者情報
キーワード: 要介護高齢者, 歩行速度, ADL
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】高齢者の多くは、疾病や老化、廃用といった原因により上下肢の機能が低下し、日常生活活動(ADL: activities of daily living)に制限が生じている。臨床上、要介護高齢者においては上肢機能が高く下肢機能は低い、あるいは上肢機能が低く下肢機能は高いといった、一方の機能が高く、もう一方の機能が低下していることが少なくない。先行研究では、高齢者の握力や歩行速度は将来のADLの予測因子として重要であることが明らかになっているが、それらの機能の組み合せからADLとの関連を検討した報告は少ない。そこで本研究は、握力と歩行速度の機能の高低の組み合わせによって、要介護高齢者のADLに違いがあるのかを大規模集団にて明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は、通所介護サービスを利用する要介護高齢者14105人(男性4737名、女性9368名、年齢:82.8±7.2歳)とした。要介護度の内訳は、要介護1が29.6%(4176名)、要介護2が28.3%(3999名)、要介護3が21.4%(3023名)、要介護4が13.9%(1973名)、要介護5が6.6%(934名)であった。ADL評価としてFunctional Independence Measure(FIM)の運動13項目(食事、整容、清拭、上位更衣、下位更衣、トイレ動作、排泄コントロール、排便コントロール、ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗、歩行・車椅子、階段)を使用した。また、上肢機能の指標として握力、下肢機能の指標として歩行速度を測定した。握力と歩行速度に関してはそれぞれ平均値により高値群と低値群に分け、握力と歩行速度の組み合わせで握力、歩行速度ともに高値の群(高/高群)、握力が高値で歩行速度が低値の群(高/低群)、握力が低値で歩行速度が高値の群(低/高群)、握力、歩行速度ともに低値の群(低/低群)に分けた。統計学的解析としては、kruskal-wallis検定を用いて各FIM項目得点の群による差を確かめ、さらにSteel.Dwass法を行い各群間の比較を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、ヘルシンキ宣言に沿って研究の趣旨及び目的の説明を行い、同意を得た。なお、本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。【結果】握力の平均値は14kgとなり、握力の高値群は6755名(男性3694名、女性3061名、年齢80.8±7.0歳)、低値群は7350名(男性1043名、女性6307名、年齢84.6±7.0歳)となった。また、歩行速度の平均値は0.64m/sとなり、歩行速度の高値群は4599名(男性1614名、女性2985名、年齢82.1±6.6歳)、低値群は9506名(男性3123名、女性6383名、年齢83.1±7.5歳)となった。高/高群は3063名(男性1491名、女性1572名、年齢81.1±6.5歳)、高/低群は3692名(男性2203名、女性1489名、年齢80.6±7.3歳)、低/高群は1536名(男性123名、女性1413名、年齢84.1±6.4歳)、低/低群は5814名(男性920名、女性4894名、年齢84.7±7.1歳)であった。FIM運動項目の平均得点は、すべての項目において高/高群、低/高群、高/低群、低/低群の順に高かった。また、FIMの各運動項目について、Steel.Dwass法を用いて各群間の比較を行ったところ、すべてのFIM運動項目で各群間すべての組み合わせに有意差が認められた。【考察】要介護高齢者の上下肢機能の高低の組み合わせにおいて、握力、歩行速度ともに高値である者のADL能力が最も高く、握力、歩行速度ともに低値である者のADL能力は最も低いことが明らかとなった。先行研究において、石崎らは握力が弱いことが基本的ADLや手段的ADLの自立度低下の危険因子であることを報告しており、甲斐らは要介護高齢者の歩行速度はFIM運動項目と有意な相関が認められたと報告している。先行研究と同様に本研究対象者においても、ADL能力の高さには、握力、歩行速度それぞれに高値であることの重要性が示唆された。また上下肢の機能の乖離が生じた対象者においては、握力が高値で歩行速度が低値である者よりも、握力が低値で歩行速度が高値である者の方がADL能力が高く、ADLの自立度の向上のために歩行機能へのアプローチがより優先されるべきであると考えられる。古名らは地域在住高齢者において、握力や歩行速度を含めた複数の運動機能の測定を行い、測定値を得点化し、その合計点からADL障害発生の危険性を報告している。本研究において要介護高齢者のADLにおいても、握力、歩行速度等複数の測定を行い機能を確認した上でアプローチをする必要性があることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】握力、歩行速度共にADL能力の高さに関連があり、さらに歩行速度が高値である方がADL自立度向上に影響する可能性が示唆されたことは、下肢機能の代表である歩行機能の重要性を再確認したと言える。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top