理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-07
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一般口述発表
当院における脳血管障害患者の在院日数の短縮について
FIM効率を用いての分析・検討
伊藤 進一岡村 愛
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抄録
【はじめに、目的】 近年、包括的な医療が進み、在院日数の短縮が求められている。2011年度に回復期病棟に入院した、脳血管障害患者の在院日数の全国平均は90.4日と報告されている。しかし、当院では2011年度の脳血管障害患者の平均在院日数は105.6日と全国平均に比べ、約15日長い結果となっていた。そこで、当院の脳血管障害患者の在院日数の妥当性ならびに短縮の可能性を探ることを目的に、機能的自立度評価法(以下FIM)を後方視的に調査した。 そして、脳血管障害患者を5群に分類し、比較検討した結果、FIM効率(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点/在院日数)の低い群が明らかになった為、若干の考察を加えてここに報告する。【方法】 対象は2011年4月1日以降に当院へ入院し、2012年3月31日までに退院した脳血管障害患者123名(急性増悪などで急性期へ転院となった患者は除く)。患者の内訳は、男性75名、女性48名、平均年齢は63.8±14.1歳である。患者データはカルテより以下の情報を後方視的に調査した。当院在院日数の他に、対象のFIM利得(退院時FIM総得点-入院時FIM総得点)、FIM効率、高次脳機能障害の有無を調査した。 その後、対象を辻らの報告を用いて、入院時FIM運動項目総得点により50点未満の全介助群(以下A群)、50点~69点の半介助群(以下B群)、70点~79点のセルフケア自立群(以下C群)、80点~84点の屋内歩行自立群(以下D群)、85点~91点の屋外歩行自立群(以下E群)の5群に分類した。そして、FIM効率について5群間比較を行った。統計学的検定はKruskal-Wallis検定、その後の多重比較検定はScheffe法を用いて、有意水準は5%未満とした。解析ソフトはRversion2.15.1を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 後方視的研究となる為、個人情報の取り扱いに十分配慮し、ヘルシンキ宣言に沿って行った。【結果】 A群(41名)はFIM利得:37.2±15.8点、当院在院日数:150.4±38.8日、FIM効率:0.26±0.10であった。B群(44名)はFIM利得:31.3±9.6点、当院在院日数:104.0±46.0日、FIM効率:0.39±0.28であった。C群(16名)はFIM利得:19.2±6.0点、当院在院日数:74.3±39.2日、FIM効率:0.33±0.20であった。D群(9名)はFIM利得:13.0±5.2点、当院在院日数:69.7±50.4日、FIM効率:0.30±0.33であった。E群(13名)はFIM利得:5.9±4.8点、当院在院日数:32.6±23.8日、FIM効率:0.25±0.28であった。全体(123名)ではFIM利得:27.7±15.3点、当院在院日数:105.6±55.8日、FIM効率:0.31±0.23であった。 FIM効率の5群間比較では、B群とE群の比較のみで有意差が認められた(P<0.05)。【考察】 対象患者全体ではFIM利得は全国平均より高い結果であった。FIM効率の5群間比較では、B群とE群の比較で有意差が認められた。よって、FIM効率の5群間比較の結果を中心に考察する。 E群は、平均在院日数が32.6±23.8日と他群に比べ短いが、辻らはこの群を屋外歩行自立群としている為、平均在院日数が短くなるのは必然であると考える。また、高次脳機能障害が無い患者数が多い群であった。よって、今回の統計結果を加味すると、より早期に、医師、看護師、ケアワーカー、ソーシャルワーカー、患者家族らと退院へ向けての準備をすることで、更に在院日数が短縮できた可能性があると考える。 また、今回は有意差を認めなかったが、A群も他群に比べてFIM効率が低い結果となっている。A群は、FIM利得が一番高いが、平均在院日数が150.4日と一番長い。Jorgensenらは、脳卒中患者を入院時の重症度別にADLの回復経過を評価したところ、95%以上の患者でADLがプラトーに達するまでの期間は、全体で12.5週と報告している。また、西尾らは、脳卒中発症から在宅復帰するまでの平均日数は約85日と先行研究と同傾向であり、長くても発症3カ月前後での退院を目標とした退院計画の作成を入院時から行うことが有用であると思われる、と報告している。よって、A群は、今後、入院からどの程度の期間でFIMの向上が概ね頭打ちとなるのかを調査すること、及び、発症3カ月前後での退院を目標とした退院計画の作成を入院時から行うことで、在院日数の短縮を図れる可能性があると考える。【理学療法学研究としての意義】 在院日数の短縮を図るためには、E群は、より早期から患者とその家族、チームスタッフらが退院準備をすること。及び、A群は、FIMの向上が頭打ちとなる時期を調査することの必要性が示唆された。この2点において、臨床的意義が高いと思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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