理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-08
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ポスター発表
徒手筋力検査grade 3の筋力値と最大筋力値の関係における加齢による相違
膝関節伸展運動での検討
宇佐 英幸松村 将司小川 大輔市川 和奈畠 昌史清水 洋治平田 圭佑竹井 仁柳澤 健
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抄録
【はじめに】徒手筋力検査(Manual Muscle Testing:以下MMT)は定量的でなく客観性に乏しいと指摘されている。そのため,簡便に客観的かつ定量的な測定ができる徒手筋力測定器(Hand-held Dynamometer:以下HHD)を用いた筋力評価の有用性が諸家により報告されている。HHDでの筋力測定では,客観的かつ定量的に筋力を測定するため,体格や年齢など,対象者個々の特性に対して考慮することを排除している。そのためHHDでの筋力評価では,対象者の特性を考慮した最大筋力の予測値を指標として相対的に評価する必要がある。そこで我々は,理論式から算出可能なMMT grade 3の筋力値(以下Mf)を用いて最大筋力値(以下Mm)を予測するために,股関節屈曲・伸展と膝関節屈曲・伸展運動におけるMfとMmの関係を明らかにし,第47回日本理学療法学術大会にて報告した。しかし,対象が20代の被験者であったため,その他の年代への適用について言及できなかった。よって本研究では,膝関節伸展運動でのMfとMmの関係における加齢による相違を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常者130名のボールの蹴り脚130肢とした。被験者は年齢により,20~30代のA群(40名,平均年齢28.3歳,平均身長166.0cm,平均体重60.8kg),40~50代のB群(46名,平均年齢49.8歳,平均身長163.9cm,平均体重62.3kg),60~70代のC群(44名,平均年齢69.6歳,平均身長160.8cm,平均体重58.5kg)に分類した。実験課題は,膝関節伸展運動における最大努力での等尺性筋収縮とし,その抵抗力(以下F)をHHD(アニマ社製μTas MT-1)で測定した。測定肢位は股・膝関節90°屈曲位,骨盤中間位でのベッド上端座位とし,両上肢は体幹前方で組ませた。HHDの圧力センサーは下腿の遠位1/3の部分に配置し,非伸縮性のベルトでベッドの脚に固定した。Fの測定はそれぞれ2回行い,その平均値を代表値とした。また,下腿長とモーメント・アーム長(l:膝関節裂隙-測定部間距離)と体重も測定した。MfとMmは以下の式にて算出した。MfはDanielsらの定義に基づき, Mf=m・k・g・K・Lとした。MmはMm=F・lとした。ただし,m:体重,k:下腿の重量係数(男性0.0725,女性0.0685),g:重力加速度=9.8,K:下腿の重心位置距離比=0.51,L:下腿長。統計ソフトIBM SPSS 20を用いて,各群ごとに,MfとMmについて無相関の検定と回帰分析を行った。また,MmについてMfを共変量とする共分散分析の平行性の検定を行った。有意水準は5%とした。【説明と同意】本研究は首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認(承認番号11038)を受け,被験者に研究趣旨と方法を十分に説明し,書面にて承諾を得た上で実施した。【結果】各群においてMfとMmの間にはそれぞれ正の相関があった。相関係数はA群:0.758,B群:0.642,C群:0.376であった。回帰分析の結果,各群における回帰式は,A群:Mm=11.758Mf-37.261,B群:Mm=8.088Mf-18.703,C群:Mm=4.046Mf+10.465,決定係数は,A群:0.575,B群:0.412,C群0.141であり,すべて予測に役立つことが確認された。また,共分散分析の平行性の検定の結果,3つの回帰直線の平行性は棄却された。【考察】体重と下腿長を測定することにより,膝関節伸展運動のMfは前述の式から算出される。結果より,3つの回帰直線の平行性が棄却されたため,年代により異なる回帰式ではあるが,算出したMfを代入することによりMmは容易に予測される。しかし,A群,B群,C群の順に相関係数が減少したことや,決定係数が減少して回帰式のあてはまりが良くなくなることから,年代が高くなるにつれてMfとMmの関係には個人差が大きくなり,本研究結果を用いたMmの予測の精度は低下すると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究結果を用いて予測した膝関節伸展の最大筋力値は,体重や下腿長といった身体特性を反映している。そのため,患者個々の特性を考慮した,定量的かつ客観的な筋力評価や筋力トレーニング時の目標値の設定において有用であると考える。しかし,予測の精度は年代が高くなるにつれて低下することに留意して利用する必要がある。
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© 2013 日本理学療法士協会
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