理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-10
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一般口述発表
片麻痺患者における側方リーチ範囲特性および座面圧力値と身体能力との関連について
岡安 健野本 彰葛山 智宏三谷 祥子小川 英臣高田 将規永見 倫子村井 純池松 幸二森田 定雄(MD)正岡 智和(MD)加藤 宗規網本 和
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抄録
【はじめに、目的】 片麻痺患者は損傷半球の違いにより、動的座位能力特性や静的座位保持特性の差異があることが知られている。このことは、身体機能だけではなく、様々な認知機能の障害に起因すると思われる。しかしこれまで、片麻痺患者の動作座位能力特性や静的座位保持特性と身体能力との関係を麻痺側別に分析している報告は少ない。このような差異がどのように発現するかを分析し、その臨床的意義を明らかにすることは理学療法を施行するうえで重要な要素であると考えられる。そこで我々は、座位での体幹回旋を伴った側方リーチ範囲の測定法を用い、片麻痺患者における動的座位能力特性の指標となりうるリーチ範囲及び座位座面圧と身体能力との関連を検討した。【方法】 対象は端座位保持の可能な右片麻痺15名、左片麻痺15名の計30名(男性19名、女性11名、年齢66.7±11.1歳、身長161.7±10.6cm、体重59.9±10.9kg、発症後日数25.4±17.7日)。下肢Brunnstrom Recovery Stageは左右片麻痺群共にⅡ~Ⅴ、Functional Independence Measure運動項目(以下M-FIM)の平均値は右片麻痺群47.4±4.7点、左片麻痺群52.6±4.9点であり、各群の属性や動作能力に有意な差は認めなかった。リーチ範囲の測定は、中央に水平指標を設置した縦130cm、横200cmの木製パネルを、端座位をとった対象者の前方前額面上に配置し、測定場所全体を不透明な仕切り板で囲み、静音の状態にて行った。対象者の基本姿勢は端座位で、体幹は座面に対して垂直位、非麻痺側上肢肩関節挙上90度、軽度内転位、肘関節伸展位、前腕回内外中間位、手関節掌背屈中間位、手指伸展位として指先が正中に位置するようにした。また、股関節屈曲90度、膝関節屈曲90度、足底全面接地とした。測定は検査者が対象者に対して左右へ非麻痺側上肢をできる限り遠方へ伸ばすという教示を行い、右左左右、左右右左の計8回施行した。検査者は対象者の水平指標に設置した1mm刻みのメジャーを目視してリーチ範囲を測定した。対象者の座位座面圧測定は圧力測定システム、コンフォライト(ニッタ社製)を使用し、端座位静止時及びリーチ動作時に行った。各測定で得られた値は、リーチ範囲を身長で除した値に変換し、座面を右殿部および左殿部に分けてそれぞれの値の平均値に換算した。統計解析はSPSS,ver20を使用し、左右リーチ範囲と左右座面部圧力との関連を反復測定による二元配置分散分析及び多重比較(Bonferroni法)、静止時座面圧特性とM-FIMとの関係をPeasonの積率相関係数を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、研究説明書、研究同意書、研究同意撤回書を作製。対象者に研究参加に対する自由意志と権利の確認、個人情報の保護や管理などの個人情報保護に対する配慮を十分に説明し、同意を得た。【結果】 左右片麻痺群のリーチ範囲は、右片麻痺群0.77(以下、対身長比)、左片麻痺群0.84と両群に有意な差はなかった。右片麻痺群のリーチ範囲は麻痺側(0.31)と比較すると非麻痺側へのリーチ範囲が0.45と有意に大きかった。左片麻痺群のリーチ範囲は麻痺側0.39、非麻痺側0.44と有意な差は認めなかった。また、右片麻痺群の静止時座面圧では麻痺側殿部平均圧89.8mmHg、非麻痺側97.2mmHgと有意な差は認めず、左片麻痺群の静止時座面圧では非麻痺側殿部(117.1mmHg)と比較すると麻痺側殿部が148.4mmHgと有意に大きかった。静止時座面圧とM-FIMとの関係では右片麻痺群の非麻痺側座面において中等度の負の相関を認め(r=-0.649)、左片麻痺群の麻痺側座面において中等度の有意な負の相関を認めた(r=-0.585 P=0.036)。【考察】 側方リーチテストにおいて、右片麻痺例では非麻痺側方向と比較して麻痺側方向へのリーチ範囲が少なく、左片麻痺例では非麻痺側方向と比較して麻痺側方向へリーチ範囲が大きいことが示された。また、静止座位において右片麻痺例の静止座位時左右殿部圧は均等で、非麻痺側への座面圧が高値であるほどM-FIMの得点が低く、左片麻痺例は静止座位時に麻痺側殿部の圧力が高く、麻痺側殿部の座面圧が高値であるほどM-FIMの点数が低くなった。以上のことから左右片麻痺例では側方リーチ特性及び静的座位保持特性がそれぞれ異なっていることを示しており、片麻痺患者の座位評価や動的座位訓練を行う場合に、麻痺側の差違によって評価及び治療方法を選択する必要があることを示唆している。【理学療法学研究としての意義】 片麻痺患者の評価及び治療において損傷半球別に出現する特徴は重要であるにもかかわらず、客観的データが示された報告は少ない。本研究により、損傷半球別の特徴が明らかになることで、臨床における理学療法士の評価及び治療の一指標になることが期待される。
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© 2013 日本理学療法士協会
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