理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-10
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一般口述発表
発症早期の脳血管障害患者に対する座位での体幹側方移動練習の効果
―無作為化比較試験による検証―
藤野 雄次網本 和深田 和浩播本 真美子門叶 由美高石 真二郎
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キーワード: 脳血管障害, 座位, 体幹
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抄録
【はじめに】片麻痺患者における体幹機能障害は基礎的・日常的な活動を阻害する重要な因子であり,発症早期からの効果的なアプローチの確立が求められている.これまでの脳損傷後の体幹機能障害に対する理学療法は,リーチ動作や起立動作など,矢状面上での運動を中心とした課題により直接的あるいは副次的に改善を試みる手法が主流とされてきた.しかし,コクランレビューではこれらの治療効果はわずかであることが報告されており,さらに近年では座位における側方への体幹の姿勢制御能力がADLの改善により重要であることが示されている.一方,側方の体幹姿勢制御に着眼した介入研究は少なく,座位における前額面上での治療方法や効果については十分明らかではない.そこで本研究の目的は,座位における体幹側方移動練習が体幹のアライメントや体幹機能におよぼす効果について検討することである.【方法】対象は発症早期の脳血管患者30例(年齢66.2±7.7歳,性別:男性21名・女性9名,梗塞20名・出血10名,右片麻痺20名・左片麻痺10名,全例右手利き)とし,無作為に麻痺側を下方へ10°傾斜させた座面上での座位練習群(傾斜群)と水平面上での座位練習群(水平群)に分類した.治療介入は,2群それぞれの座面条件において足部非接地・上肢支持なしで視覚的な垂直手がかりを基準に麻痺側から非麻痺側への体幹側方移動練習60回とした.介入期間は1週間とし,治療介入と通常の理学療法1時間のプログラムを実施した.効果判定は,体幹の運動学的分析と,Stroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)およびTrunk Control Test(以下,TCT)による機能・能力的指標によって治療前後の効果を検証した.運動学的分析における課題は,背もたれのない水平座面上での安静座位(安静課題)と非麻痺側・麻痺側への体幹の最大側方移動(最大移動課題)とし,動作解析(DKH Frame-DIAS Ⅳ)によって座位姿勢を分析した.動作解析では,被験者に反射マーカーを後頭結節,第7頸椎(以下,C7),第4腰椎(以下,L4),両側の肩峰・上後腸骨棘,座面両端に貼付し,頭部(後頭結節-C7)・身体(C7-L4)・上部体幹(両側の肩峰)・骨盤(両側の上後腸骨棘)の傾きを算出した.角度の算出方法は,頭部と身体の傾きは垂直軸を0°,上部体幹と骨盤の傾きは水平軸を0°とし,非麻痺側への傾きをプラス・麻痺側への傾きをマイナスとした.安静課題と最大移動課題の測定回数は各2回とし,最大移動課題は非麻痺側・麻痺側・麻痺側・非麻痺側の順に測定した.統計的分析には測定時(介入前・後)と各群(傾斜群・水平群)を2要因とした二元配置分散分析とFriedman検定を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には事前に本研究の内容を書面にて説明し同意を得た.【結果】動作解析の結果,安静課題では測定時と群において有意差はなかったが,非麻痺側への最大移動課題では身体の傾きにおいて測定時と群の2要因での交互作用を認め,傾斜群で有意に増加していた.また,頭部・上部体幹の傾きでも交互作用を認め,傾斜群で有意に減少していた.麻痺側への最大移動課題では,交互作用はどの項目にも見られなかったが,両群とも介入後に身体の傾きが有意に増加した.機能・能力的指標の結果,介入前の傾斜群のSIASは48点(中央値),TCTは48点(中央値),水平群ではSIASが51点,TCTが48点であった.介入後,傾斜群のSIASは51点,TCTは61点,水平群のSIASは53点,TCTは48点であり,傾斜群のTCTが有意に改善していた.【考察】傾斜群における非麻痺側への最大移動課題時の身体の傾きの増加と,頭部・上部体幹の傾きの減少は,体幹と骨盤を連結させる麻痺側の側腹筋群の作用,すなわちカウンターアクティビティーによる姿勢制御を促通させたと考えられた.麻痺側への最大移動課題では,両群とも側方移動範囲が拡大しており,本課題が座位における側方への姿勢制御に対して有効であることを示すものと思われた.一方,傾斜群における介入後のTCTの有意な改善は,傾斜座面における練習の特異的効果を表すものと考えられ,座位での側方姿勢制御能力が体幹パフォーマンスの向上にも寄与することが示唆された.【理学療法学研究としての意義】無作為化比較試験による科学的検証は理学療法の意義と専門性を高めるとともに,脳血管障害患者の体幹機能障害に対する戦略的な評価・治療の一助となることが期待される.
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© 2013 日本理学療法士協会
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