理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-35
会議情報

ポスター発表
人工股関節全置換術後早期における歩隔の拡大に影響する機能的要因に関する検討
熊代 功児吉水 隆広河嵜 利浩小根田 夏子橋本 浩実上山 薫山本 遼半田 和也松田 佳子國光 好美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 我々は先行研究にて、変形性股関節症(以下OA)にて人工股関節全置換術(以下THA)を施行した患者の歩隔は、術前に比較しT-cane歩行開始時に有意に拡大することを報告した。また、臨床上THA後早期に歩隔の拡大による歩容の悪化や歩行効率の低下を来たす患者を多く経験する。しかし、THA後の歩隔に着目した報告は少なく、歩隔の拡大に影響する機能的要因は不明である。今回、OAにてTHAを施行された患者の術前および術後早期の歩隔に影響する機能的要因を明らかにし、術後早期からの歩行能力の改善に活かすことを目的に検討を行ったので報告する。【方法】 対象は当院にてTHAを施行したOA患者15例とした。歩隔はGait Scan4000を使用し測定した。測定時期は、術前、術後T-cane歩行開始時(以下T-cane開始時)、退院前最終PT実施時(以下退院時)とした。また機能的要因として、歩行時痛、構造的脚長差、自覚的脚長差、脚延長量、術側股関節屈曲・伸展・外転・内転関節可動域(以下ROM)、術側股関節外転筋力(以下外転筋力)をそれぞれの測定時期に評価した。統計処理は、各測定時期間の歩隔の比較に反復測定による分散分析およびTukey法による多重比較を用いた。さらに各測定時期における歩隔と機能的要因との相関関係をPearsonの相関係数、Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。【説明と同意】 本研究は、当院臨床研究審査委員会の承認を受け、対象者にデータ収集の同意を得て施行した。【結果】 歩隔は術前(平均8.8cm)に比べてT-cane開始時(平均12.5cm)、退院時(平均10.9cm)に有意に拡大していた。術前の歩隔は、脚延長量(r=-0.63)、内転ROM(r=-0.72)と負の相関、外転ROM(r=0.56)と正の相関を認めていた。T-cane開始時および退院時の歩隔は、機能的要因と有意な相関を認めなかった。【考察】 術前の歩隔と脚延長量、内転ROMとの間に負の相関、外転ROMとの間に正の相関を認めていた。THAを施行する末期OA患者は、大腿骨頭の外上方偏移が強く外転制限を来たすことが多い。また大腿骨頭の外上方偏移が強いほど脚延長量は大きくなる。以上より、術前における歩隔は、変形の程度すなわち関節原性の要因が強く影響すると考える。しかし今回の検討において、脚延長量とは相関を認めたが、構造的および自覚的脚長差とは相関を認めなかった。まず構造的脚長差に相関を認めなかったのは、今回の検討では対象者の非術側の股関節の状態は考慮しておらず、両側OAにて両側ともに脚短縮を認めていた症例が含まれていたためと考える。次に自覚的脚長差との間に相関を認めなかったのは、長年の変形の進行に合わせて体幹・骨盤・膝関節などを代償的に働かせることで脚長差を補正した結果、自覚的脚長差が生じなかったためと考える。今後は術側の股関節機能のみではなく非術側の状態や体幹機能に着目した検討が必要である。 術後であるT-cane開始時および退院時は術前に比べて歩隔の拡大を認めたが、それぞれの時期における機能的要因との相関は認めなかった。歩隔の広さは歩行時の左右の動揺性の指標として用いられている。また南角らは、片側セメントレスTHA術後4週を経過した女性9名に対し床反力計と3次元動作解析装置を用いた歩行分析を行ったところ、術側の片脚支持期が非術側に比べて短縮していたことを報告し、その要因として術側下肢の支持性の低下や筋力を含めたバランス機能の低下と報告している。以上よりTHA後早期における歩隔の拡大は、支持基底面を拡大することによりバランス能力を代償していると考える。また、術後の測定時期における歩隔と機能的要因との間に相関を認めなかったことから、術前の歩隔に影響すると考えた関節原性の要因はTHAにて改善され、術後の歩隔には機能的要因は影響しないことが示された。しかし、術前に比べて術後の歩隔は有意に拡大していたことから、THAにて改善された股関節機能が動作時に汎化されていないと考える。以上より、THA後早期における歩行能力の改善には、股関節機能の改善を図るとともに、得られた機能を実際の動作時に汎化可能なプログラムの実施が重要である。そのためには動作時における関節角度やモーメントなどの股関節機能と非術側や体幹・骨盤の状態などを適切かつ定量的に評価し、得られた評価結果を基にした適切な介入が歩容の改善には必須であると考える。【理学療法学研究としての意義】 THA後早期における歩隔の拡大は、THAにて改善された股関節機能が十分に発揮されていないことによるバランス能力低下の代償である可能性が示された。THA後早期における歩行能力の改善には、得られた股関節機能を実際の動作時に汎化可能なプログラムを実施することの必要性が示された。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top