理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-01
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セレクション口述発表
要支援者、要介護者における転倒の危険因子と予測値
赤瀬 諒市久山 弥生松本 彬南部 隼平辻本 真也池島 由紀角 洋子當利 賢一井上 祐樹西 聡太満丸 龍太宮部 伸子真栄城 一郎野尻 晋一山永 裕明
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キーワード: 転倒, 要支援者, 要介護者
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抄録
【はじめに、目的】当苑通所リハビリテーションセンター(以下、通所リハ)を利用する要支援者、要介護者を対象に転倒の有無とそれに関係する因子の検討を統計学的に行ったので報告する。【方法】対象は平成23年10月から1年間に当苑通所リハを利用した192名(要支援者89名、要介護者105名(平均介護度1.84))とした。方法は転倒の有無を利用時の記録より調査し、要支援者、要介護者をそれぞれ非転倒群と転倒群に分類した。次に要支援者、要介護者ごとに、転倒の有無を目的変数、握力、Timed Up & Go test(TUG)、5回椅子立ち座りテスト(SS-5)、FIM、Trail making test part-A(TMT)(1~25の数字を順に結び、3分間で得られた数を得点とした)、年齢を説明変数として多重ロジスティック回帰分析(変数増減法)を行った。さらに選択された変数に対しROC曲線(左上隅からの距離を用いた方法)を用いてcut-off値を求めた。なお、転倒の定義は、自らの意志によらず、足底以外の部位が床・地面についた場合とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当施設倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】転倒は要支援者20名29件、要介護者61名115件であった。多重ロジスティック回帰分析の結果より、選択された変数は要支援者でTMT(オッズ比0.91:95%信頼区間0.88-0.95)、要介護者でTUG(オッズ比1.02:95%信頼区間1.0019-1.396)であった。また、要支援者の転倒の有無とTMTでROC曲線を作成した結果、cut-off値は21点であった(曲線下面積6.29、感度53%、特異度73%)。同様に要介護者でTUGとROC曲線を作成した結果、cut-off値は22.7秒であった(曲線下面積6.22、感度63%、特異度64%)。【考察】要支援者では注意機能の評価であるTMTが転倒の有無と関係のある変数として選択された。これは、要支援者の転倒が身体機能よりも注意機能の低下によって発生していることを示している。要支援者は活動範囲が広く、様々な環境への対応が必要になる。転倒のリスクが高い環境下で自己の身体機能に見合った行動を適切に選択できず転倒に至った可能性が考えられる。一方、要介護者の転倒と関係のある変数としてTUGが選択された。TUGは起立・前進・方向転換・着座と様々な動作を要求され応用歩行能力の評価として実施されている。また、先行研究において転倒の危険性の指標として報告されることも多い。今回の結果からも転倒の有無に影響していることが示された。さらにTMTとTUGでcut-off値を求めた。TMTのcut-off値は21点であった。これは、今回の対象者が比較的心身機能が高い要支援者であることから高い値になったと思われる。また、TUGのcut-off値は22.7秒であった。これは、歩行自立となるためにはTUGが少なくとも20秒以下は必要という先行研究からみて、転倒の予測として妥当性があると考える。通所リハは、心身機能の異なる多くの利用者が利用している。このため、転倒予防を同じ方法で行うことは適切でない。今回の結果より、転倒の有無に影響する因子は要支援者、要介護者で異なることが示された。これは、身体機能の低下が軽い要支援者においては注意機能が転倒に最も影響しており、身体機能が低下し要介護に移行するに伴い、注意機能より身体機能の低下が顕在化され転倒を生じさせる因子となってくると考える。このため、要支援者においては今回得られたTMTのcut-off値を転倒の危険性の指標として用い、cut-off値以下の利用者に対して特に転倒の予防に努め、要介護化を防ぐ必要がある。なお、今回利用したTMTは注意機能の一側面を評価するにすぎないため、今後は注意機能を細分化した評価法を用いる必要性があり、これによりさらに具体的な転倒予防の対策が行えると考える。また、要介護者についてはTUGのcut-off値を転倒の危険性の指標として用い、cut-off値以下の利用者に対して特に転倒の予防に努めるとともに、要介護度の重度化を防ぐ必要がある。転倒は高齢者にとって寝たきりにつながる重大な問題である。よって、転倒の危険性を早期に予測し対策を行うことは重要である。今後も転倒の減少を目指し、心身機能の維持・向上を図ることはもとよりQOLの向上についても貢献できるよう取り組んでいきたい。【理学療法学研究としての意義】転倒を予防するためには、本研究で得られた結果が示すように要支援者、要介護者それぞれの特性を理解し、予測や対策を早期に行うことが重要である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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