抄録
【はじめに、目的】 近年、地域医療連携が進む中で、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の需要は高まりつつある。当事業所でも利用者の増加を認め、疾患割合として脳血管障害の利用者が増加している状況である。脳血管障害の利用者に関わる中で、その再発は少なからず認められる。2005年の久山町研究では脳血管障害を初発した症例のうち、10年以内に51.7%の症例が再発するとの報告がある。そこで、今回は脳血管障害を再発した訪問リハ利用者の身体・ADL・サービス利用状況を調査した結果、利用者への関わり方について若干の所見が得られたので報告する。【方法】 平成23年4月から平成24年6月までの期間で当事業所の訪問リハを利用した脳血管障害を既往に持つ利用者の中で、期間内に再発した12例中、研究に対する同意を確認できた6例を対象とした。症例は脳出血1例、非外傷性硬膜下血腫1例、ラクナ梗塞1例、A-to-A脳梗塞1例、心原性脳梗塞2例である。調査項目は、年齢、性別、訪問リハ介入から脳血管障害再発までの期間、2009年高血圧ガイドライン(以下JSH2009)の血圧に基づいた脳血管疾患リスク層別化、高血圧管理計画のためのリスク層別化に用いる予後影響因子(JSH2009)、既往歴、再発直前のFIM、再発前1年間でのFIMの変化、訪問リハサービスの利用状況、再発時の状況とし、診療録から後方視的に調査を行なった。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究を行う上で、利用者に紙面にて同意を頂いた。【結果】 当事業所での脳血管障害の利用者は337±11.1人であり、再発率は3.6%であった。また、12例中4例が介入より1年以内の再発であり、いずれも急性期病院から自宅へ退院した症例であった。以下は研究に対する同意が確認できた6例(男性5例、女性1例 80.3±4.2歳)に関して報告する。JSH2009の血圧分類では正常血圧:4例(心原性脳梗塞2例、A-to-A脳梗塞例、ラクナ梗塞例)、1度高血圧:2例(脳出血例、非外傷性硬膜下血腫例)に該当した。JSH2009の血圧に基づいた脳血管疾患リスク層別化では6例とも高リスク群に該当した。全症例とも、高齢(65歳以上)、脳血管障害の既往がリスクに該当した。疾患の内訳は、動脈硬化症、心不全、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群、脳血管の奇形、腹部大動脈瘤であり、疾患の重複数は3つが1例、4つが4例、5つが1例であった。訪問リハ・通所リハビリテーションの利用は、週に1回が1例、週に2回が2例、週に3回が1例、週に4回が2例であった。再発直前のFIMは106点±15.2点であった。再発前1年間でのFIMの変化は2.5±1.5点であり、5例は点数の上昇を認めていた。発症時の状況は、入浴時:2例(脳出血例・非外傷性硬膜下血腫例)、睡眠時:1例(心原性脳梗塞例)、屋外活動時:2例(ラクナ梗塞例・心原性脳梗塞例)、安静座位時:1例(A-to-A脳梗塞例)であった。【考察】 先行研究では、脳梗塞の発症後1年間での再発率は約4%であり、退院後も依然として脳梗塞再発のリスクがあることが示されている。今回の調査でも発症より1年以内の症例が脳血管障害再発例の3分の1を占める結果となった。今回再発した症例は日常生活の自立度は高く、FIMの数値も向上していることから、訪問リハの機能障害に対するアプローチは効果的に行えていたと考えられる。当事業所は急性期を脱し、回復期を経ずに直接自宅へ退院となる症例が多い。その中で、訪問リハで関わった再発症例は、高齢で重複するリスクを抱えていることがわかった。また、長期介入例も含めて発症時の状況を検証すると、入浴時に脳出血を再発した症例は、1度高血圧に分類されているが入浴前後での血圧管理は行っていなかった。また、心原性脳梗塞を発症した2例は再発前の血液検査からワーファリンコントロールが不良な状態であった。これらのことから、在宅での重複する疾患に対するリスク管理の重要性が示唆され、訪問リハ介入時には利用者の血圧管理、服薬管理を行っていく必要があると考える。また、訪問看護師による全身状態の管理、ヘルパーによる服薬管理など、退院早期からの介護保険サービスの充実、他職種が連携し多角的な視点から利用者を捉えることが再発予防に必要である可能性が示唆される。【理学療法学研究としての意義】 訪問リハが脳血管障害を既往に持つ利用者に関わる中で、機能改善に対するアプローチとともに、リスク管理を目的とした退院早期からの他職種連携の重要性を示唆できたのではないかと考える。