理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-12
会議情報

ポスター発表
陳旧性脊椎圧迫骨折に対するballoon kyphoplastyの除痛効果が骨格筋量に与える影響
山本 洋司久堀 陽平平沢 良和藤盛 嵩浩渡辺 広希片岡 豊
著者情報
キーワード: 腰痛, 身体活動量, 予防医学
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 高齢化社会の到来により骨粗鬆症を基盤とする脊椎圧迫骨折は,増加の一途を辿っている.脊椎圧迫骨折は,椎体圧潰によって脊椎の変形を起こし,腰痛が日常生活動作(以下ADL)を低下させるといわれている.当院では,2011年1月より,主に陳旧性脊椎圧迫骨折者に対してballoon kyphoplasty(以下BKP)を行っている.BKPは低侵襲的手術であり,圧迫骨折部位の固定性と除痛効果が得られ,早期にADLの向上が期待できる手術手技である. 陳旧性脊椎圧迫骨折者は,慢性的な腰痛で身体活動量が低下し骨格筋量は減少している可能性がある.骨格筋量の減少は,易転倒性,インスリン抵抗性のみならずADLの低下に関与するといわれている.骨格筋量減少の主要な因子は加齢であるが,陳旧性脊椎圧迫骨折者の場合,3週間の安静臥床で有意に骨格筋量が減少すると報告されている.しかし,観血的手術,特に早期離床が期待できるBKPが骨格筋量に及ぼす影響は不明である. 本報告の目的は,陳旧性脊椎圧迫骨折者のBKP前後の体組成を測定し,BKPによる除痛効果が骨格筋量に与える影響を明らかにすることである.【方法】 対象は,2012年8月から2012年10月までにBKPを行った胸椎および腰椎の圧迫骨折者5例(男性4例,女性1例)であった.年齢78±3.8歳,身長158.5±8.8cm,体重51.8±7.1kg,BMI 20.4±2.8 kg/cm²,平均有病期間136.8日(50~330),平均在院日数18.4日(8~49)であった.除外基準は,中枢神経疾患および重篤な合併症を有するものとした.測定項目は,骨格筋量,Functional Independence Measure(以下FIM),Visual analogue scale(以下VAS)とした.骨格筋量は,Blue Works社製In BodyS20で計測し,体重補正値を用いた.各測定項目について,BKP術前および術後1週間時に計測した.術後の理学療法は,翌日より開始し,歩行練習,ADL練習を行った.結果の解析は,BKP術前後の骨格筋量,FIM値についてStudent’s t-testを使用した.術前後VAS値について,Wilcoxonの符号付順位検定を使用した.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本報告は,ヘルシンキ宣言に基づき患者の了承を得て施行している.【結果】 BKP術前の骨格筋量は37.1±1%,術後は36.8±1%であり有意差はなかった(P=0.91).しかし,BKP術前後の骨格筋量は,全例で標準値より低値であった.BKP術前のVAS値は,62±12mm,術後は18.6±12mmであり有意に低下した(P<0.05).BKP術前のFIM値は,109±2.6点,術後は120±.2.9点であり有意に上昇した(P<0.05).【考察】 BKP術後のFIM値は,術前値より上昇した.また,BKP術後のVAS値は,術前値より低下した.その要因として,骨セメントの重合が腰部の除痛効果をもたらし,ADLが向上したと考えられた.BKP術前後で骨格筋量に有意差はなかった.筋肥大の改善率は運動負荷強度に依存し,筋力増強運動を長期間行うことが必要である.今回BKP術後に骨格筋量の増加がみられなかった要因は,術後1週間での検討であり,運動期間の影響が考えられた.また,術前・術後ともに骨格筋量は全例で標準値より低値であった.これについては,腰痛がADLを制限し身体活動量を低下させた結果,筋萎縮が生じたと考えられた.高齢者における骨格筋量は,歩行・移動能力を示す歩行速度,開眼片脚立位,Timed Up & Go Testなどの身体機能との関連があると報告されている.そのため,骨格筋量の増加は,予防医学の観点からみて重要である.今回の結果では,BKP後1週間時で骨格筋量の増加はみられなかった.しかし,今後も継続して骨格筋量の経時的変化を追うことは,BKP術後の理学療法の介入戦略を立てる上で必要である.【理学療法学研究としての意義】 今回,陳旧性脊椎圧迫骨折者のBKP術後の骨格筋量は標準値と比較して低値であった.そのため,理学療法士は,BKP術後の症例に対してADLの自立にとどまらず,身体機能の向上といった予防医学の観点を持つことが必要である.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top