理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-03
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セレクション口述発表
世帯構成からみた要介護高齢者の心身機能の特徴
石本 麻友子林 悠太鈴川 芽久美波戸 真之介今田 樹志小林 修秋野 徹島田 裕之
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抄録
【はじめに、目的】内閣府の高齢者社会白書によると、65 歳以上の独居高齢者は増加傾向にあり、平成22年には高齢者人口に占める割合が24.2%となっている。また高齢者世帯も多く、その割合は29.9%となっている。要介護認定者数は年々上昇していることから、介護が必要な状態にある独居高齢者、高齢者世帯の増加も見込まれる。財団法人日本公衆衛生協会の調査によれば、重度な要介護状態にありかつ認知症状もみられる独居高齢者も、自宅で生活を継続している事例が指摘されている。さらにその多くが居宅生活を続けることを望んでいるという調査結果が示されている。理学療法士にとって、独居や高齢者世帯の高齢者ができる限り長く居宅生活を営めるよう支援することは重要な責務であると考える。居宅生活を継続する要因について、村田らは軽度要介護高齢者を対象として5年間の追跡調査を行った結果、身体機能、認知機能には有意差は認められなかったが、主観的健康感と社会参加の有無には有意差が認められたと報告している。しかしこの研究の課題として、対象者数が少ない点、介護度を軽度者に限定している点、重度の認知症がある高齢者を除外したことが挙げられている。そこで本研究では、デイサービスを利用している要介護高齢者で、介護度を限定せず、認知機能障害を呈している高齢者も含めた大規模集団を対象に世帯構成別に心身機能の比較を行い、居宅生活を継続するために必要な要因を明らかににすることを目的とした。【方法】対象は通所介護サービスを利用していた要介護高齢者3743名(要支援1: 13.8%、要支援2: 15.8%、要介護1: 34.7%、要介護2: 22.1%、要介護3: 10.5%、要介護4: 2.6%、要介護5: 0.4%)であり、高齢者の独居群(男性244名、女性746名、平均年齢81.4±6.6歳)、高齢者世帯群(男性245名、女性177名、平均年齢80.8±5.9歳)、高齢者以外の家族と同居している同居群(男性684名、女性1647名、平均年齢83.1±6.4歳)に分類した。調査項目は、握力、chair stand test 5-times(CST)、開眼片足立ち、歩行速度、timed “up & go” test(TUG)、mental status questionnaire(MSQ)とした。世帯構成間の比較について、CST、開眼片足立ち、TUG、MSQはKruskal-Wallis検定、握力、歩行速度は一元配置分散分析を用い、有意差を認めた場合は多重比較検定としてそれぞれSteel-Dwass法、Tukey-Kramer法を用いた。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に沿って研究の主旨及び目的の説明を行い、同意を得た。なお本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。【結果】全ての調査項目において群間で測定値に差があることが認められたため、多重比較検定を行った。片脚立ちとTUGにおいて独居群は同居群よりも有意に高い運動機能を示し、片脚立ち独居群4(1-60)秒、同居群3(1-60)秒、TUG独居群12.1(5.8-52.6)秒、同居群13.1(5-131)秒であった。CSTと歩行速度は、独居群と高齢者世帯群が同居群に比べ有意に高い運動機能を示し、CST独居群10.5(3.8-50)秒、高齢者世帯群10.2(3.1-39)秒、同居群11.0(3-76.5)秒、歩行速度独居群0.81±0.25m/秒、高齢者世帯群0.80±0.27m/秒、同居群0.76±0.26m/秒であった。MSQは独居群が高齢者世帯群、同居群に比べ有意に高い認知機能を示し、独居群1(0-10)点、高齢者世帯群2(0-10)点、同居群2(0-10)点であった。握力は、すべての群間において有意差が認められた。【考察】独居群は同居群に比べ、片足立ちやTUGといった身体機能のなかでもバランス機能の高さが重要である。また独居群だけでなく高齢者世帯群においても歩行や下肢筋力といった日常生活の根底を支える身体機能の高さは、同居群よりも必要であると考えられる。認知機能は独居群が高齢者世帯群や同居群よりも高く、独居生活における認知機能の重要性が示唆された。握力においてはすべての群間で有意差があり、世帯構成を分類するための評価指標として有用である可能性がある。【理学療法学研究としての意義】本研究において明らかとなった世帯構成別の心身機能の特徴は、理学療法士が要介護高齢者の居宅生活を継続するための効果的な方策を探る上で、有用であると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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