理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-S-07
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セレクション口述発表
股関節内旋可動域と大腿骨前捻角との関連性
~Craig testを用いて~
髙橋 真三上 紘史井所 和康
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抄録

【はじめに、目的】日常生活やスポーツ動作において股関節は運動連鎖の中心的役割を果たしているため、股関節の機能低下は上肢、体幹、下肢障害の原因となりうる。特に股関節内旋可動域の低下は膝関節疾患や投球障害肩などに関与すると諸家により報告されている。臨床では股関節内旋可動域改善を目的とした理学療法を実施するが、内旋可動域は軟部組織だけでなく大腿骨前捻角の評価であるCraig testの測定値(Craig test値)に依存していることを経験する。我々は先行研究において、Craig test値がMRIの大腿骨前捻角度と相関関係があることを報告した。しかし、股関節内旋可動域とCraig test値に関する検討はしていない。そこで、本研究では腹臥位股関節内旋(腹臥位内旋)および背臥位股関節内旋(背臥位内旋)とCraig test値との関連性の検討および腹臥位内旋角度の良好群と不良群の2群間に分け、Craig test値に差があるかを明らかにすることが目的である。【方法】対象は股関節に既往の無い健常男性17名、女性8名の50肢とした(年齢28.3±7.5歳、身長168.1±8.2cm、体重60.4±9.6kg、BMI21.3±2.0)。腹臥位内旋は腹臥位、股関節内外転0°、股関節伸展0°、膝関節屈曲90°とし、背臥位内旋は背臥位、股関節屈曲90°、膝関節屈曲90°にて股関節内旋角度を測定した。Craig testの測定方法について、検者は熟練者であり、Craig test実施者と角度測定者の2名とした。腹臥位内旋と同一肢位とし、大転子が最外側に触れた位置で下腿を固定し、股関節回旋角度を計測した。1肢につきそれぞれ3回ずつ測定し、平均値を求めた。角度の測定には東大式ゴニオメーターを使用し1°単位で記録した。また、腹臥位内旋において正常可動域45°以上の25肢を良好群、45°未満の25肢を不良群とした。統計学的分析において、腹臥位および背臥位内旋とCraig test値との関連性はSpearmanの相関係数を用いて検討した。また、腹臥位内旋の良好群と不良群のCraig test値の比較はMann-Whitney検定を用いて分析した。いずれも有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認を得て施行した。尚、各被験者には研究の目的や実験内容などを書面にて説明し、口頭にて同意を得た。【結果】全体の平均値において腹臥位内旋は42.3°±9.2、背臥位内旋は35.0°±8.9、Craig test値は9.9°±2.5であった。腹臥位および背臥位内旋とCraig test値との相関関係はそれぞれr=0.529(p<0.01)、r=0.346(p<0.05)であった。腹臥位内旋良好群のCraig test値は11.3°±2.3、不良群は8.5°±2.2で両群に有意差を認めた(p<0.01)。【考察】股関節内旋と外旋可動域は臼蓋および大腿骨の骨形態が関与し、大腿骨前捻角が過前捻すなわちCraig test値が高いほど内旋可動域も高値を示す。本研究の結果からも、腹臥位および背臥位内旋とCraig test値は正の相関関係を示した。特にCraig test値と関連性が強かったのは背臥位内旋(r=0.346)よりも腹臥位内旋(r=0.529)であった。これは、背臥位内旋が股関節屈曲位であるのに対して、腹臥位内旋は股関節中間位であり、軟部組織の制限を受けなかったため、Craig test値に鋭敏だったと考えられた。また、腹臥位内旋良好群のCraig test値が11.3°に対して不良群は8.5°と有意に低値であり、股関節内旋可動域45°に満たない場合のCraig test値は約10°未満であることが示唆された。このことから、股関節内旋可動域は軟部組織のみならず大腿骨前捻角が影響を及ぼしていると考察された。【理学療法学研究としての意義】股関節内旋可動域には大腿骨前捻角が関係しており、内旋制限を有する症例に対するCraig test値の評価は理学療法の一助となる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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