理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-13
会議情報

一般口述発表
急性期脳卒中患者のFunctional Independence Measure(FIM)の点数と社会的サポートとの関連についての研究
リハビリテーション患者データバンクを使用して
杉山 統哉近藤 克則白石 成明松本 大輔田中 宏太佳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】私は多施設から同じ形式のデータを集めた「リハビリテーション患者データバンク(厚生労働科学研究費補助金H19-長寿-一般-028,以下リハDB)」の登録データを用いた分析を行ってきた.急性期脳卒中患者における分析の結果,介護力の「ない」者に比べて「ある」者に,転・退院時の歩行自立者が多いとの結果を得た(結果については,総合リハビリテーションにアクセプトされた).しかし,結果についてはまだ十分に検討する余地があると考えている.そこで,本研究の目的は以下の2つである.(1)転・退院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)の合計点数を目的変数にした場合,歩行自立度と同様の結果が得られるのか,再現性の確認を行うこと,(2)急性期脳卒中患者を対象にした先行研究において,より重度の者にBarthel Index(BI)の点数と社会的サポートとの間に関連があると報告されていることから,重症度の影響を検討することを目的とする.【方法】対象は,2005年から2011年までにリハDBに登録された7,706名(47病院)の脳卒中患者のうち,入院病棟区分が「一般病棟」は5,006名(25病院)で,入院時の状態が「発症前modified Rankin Scale0~3(以下mRS;7段階で分類,0~3は歩行可能,4・5は歩行不可能,6は死亡)」,「発症後入院病日7日以下」,「脳卒中病型分類(脳梗塞,脳出血)」,「在院日数8日以上60日以下」,の基準を満たす15病院の3,873名のうち,入院時National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS),退院時FIMが未入力のものを除外した11病院の2,627名(以下全群)及び,全群から重症度の尺度であるNIHSSの入院時合計点数の3分位により,軽度群(入院時NIHSS0~2点,11病院858名),中等度群(入院時NIHSS3~8点,11病院922名),重度群(入院時NIHSS9点以上,11病院847名)の3群に分けた者の4つを分析対象とした.各対象者に対して,転・退院時FIMの合計点数に関連する因子を,重回帰分析を用いて検討した.説明変数は転・退院時のFIMの点数を予測する因子として,先行研究を参考に,1)背景・属性要因,2)機能・状態要因,3)環境要因の3要因とした.1)背景・属性要因では,性別,年齢,脳卒中病型分類(脳梗塞,脳出血),脳卒中既往歴の有無,発症後リハ開始病日,高血圧・糖尿病の有無,2)機能・状態要因では,入院時のFIMの点数,入院時のNIHSSの点数,3)環境要因では,リハ医の関与の有無,1日あたりのリハ単位数に,自宅退院との関連が報告されている介護力を追加した12因子を選択した.解析方法は,転・退院時のFIMの合計点数を目的変数とし,選択した12因子全てを説明変数とし,強制投入法を用いて各群(全群,軽度群,中等度群,重度群)において重回帰分析を行った.統計ソフトはSPSS ver 19.0を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】本研究に用いたデータは通常の臨床場面で得られた観察データのみであり,匿名化処理をし,個人情報を削除して集められたデータであるため,研究倫理上の問題はない.(日本リハビリテーション・データベース協議会見解)【結果】重回帰分析の結果,全群を対象とした場合,転・退院時のFIMの合計点数に介護力との関連がみられた(非標準化係数2.63,95%信頼区間 0.79-4.48).重症度を考慮して分析を行うと,重度群のみに介護力との関連がみられた(非標準化係数4.57,95%信頼区間 1.48-7.66).軽度群,中等度群には関連がみられなかった.【考察】急性期脳卒中患者における転・退院時の歩行自立度を目的変数とした分析と同様に,介護力のない者に比べ,ある者に転・退院時のFIMの点数が高くなることが示唆され,再現性があることが示唆された.さらに重症度を考慮して分析を行うと,重度群にのみ関連が認められ,軽度群,中等度群には関連が認められなかったため,先行研究の報告に沿った結果が得られた.本研究の限界として,(1)社会的サポートを家族や知人の介護力として扱い検討しているが,その尺度の妥当性,(2)家族や知人以外の社会サービスによる介護力の影響,(3)機序についての解明,(4)介入方法,以上の4点は吟味の余地があることが挙げられる.【理学療法学研究としての意義】介護力が自宅退院だけでなく,日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の予後にも関連する1因子の可能性が示唆されるならば,家族や知人がリハビリ場面に加わり実際の介助方法や注意点を学ぶことで,疾病や障害に対する理解を深めることは,手段的・情報的・情緒的なサポートになっている可能性が考えられる.急性期から家族や知人によるサポートを引き出すような指導も,機能予後を改善するアプローチの1つとなる可能性がある.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top