抄録
【はじめに、目的】 2000年に回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期病棟)が創設され、その目的はActivities of Daily Living(以下:ADL)能力の向上による寝たきり防止と家庭復帰とされた。その後、2008年に回復期病棟に質の評価が導入され、その中に重症者の改善率によるアウトカム評価が含まれた。さらに2012年にはその評価基準は引き上げられ、回復期病棟での重症者の改善がさらに求められるようになった。回復期病棟において在宅復帰に関わる要因の報告は多い。その結果、身体機能だけでなく介護力も重要と報告されている。重症者を対象とした報告では、介護力として同居人数や家族構成、配偶者の有無を検討している。しかし、実際には同居人数が多くても日中は独居となるなど、実際に可能な介助量・介助時間と同居人数が一致しないことも多く、同居人数や家族構成のみの検討では十分とは言えない。そこで、今回は介護力を中心に重症者における在宅復帰要因の検討を後方視的に行った。【方法】 今回、重症者は辻ら(1996)の報告で全介助群と報告されているFunctional Independence Measure(以下:FIM)運動項目合計50点未満のものとした。対象は、2010年12月から2012年3月までに退院した某病院回復期病棟脳卒中患者149名のうち、次の1~4の除外基準のいずれかに該当するものを除いた41名とした(脳梗塞20名、脳出血17名、くも膜下出血4名)。除外基準は、1.入棟時FIM運動項目合計が50点以上のもの、2.入棟期間が1ヶ月に満たなかったもの、3.入棟時から在宅方向ではなかったもの、4.データ不備があったものとした。情報収集は、診療録等から後方視的に基本情報(性別、年齢、疾患名、発症から回復期病棟入棟までの期間、回復期病棟入棟期間)、FIM(入棟時・退院直近FIM運動項目合計、入棟時・退院直近FIM認知項目合計)、介護力(在宅復帰条件、主介護者が可能な介助量、独居となる時間、同居人数)を収集した。介護力の尺度について、在宅復帰条件は、どの程度ADLが可能であれば在宅復帰が可能かというもので、「屋内ADLが介助下で可能」「屋内ADLが自立して可能」「階段が実施可能」の3段階に分けた。主介護者が可能な介助量は、「見守りのみ可能」「軽介助のみ可能」「中等度以上可能」の3段階に分けた。独居となる時間は、在宅復帰した際に独居となる時間を「日中独居」「一部独居」「つねに介助者あり」の3段階に分けた。これらは2群比較において順序尺度として用いた。群分けは、対象を在宅復帰群(以下:在宅群)と非在宅復帰群(以下:非在宅群)に分けた。解析は基本情報、FIM、介護力を用いて2群比較を実施した。その際、正規性を示したパラメトリックデータに対しては対応のないT検定、正規性を示さなかったパラメトリックデータとFIM、介護力に対してはU検定を実施した。その後、在宅復帰に関与する要因を検討するため多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数を「在宅」「非在宅」とし、独立変数を2群比較の結果p<0.05を示した4項目とした。なお、独立変数間の多重共線性を確認するために相関係数を検討し、0.5以下(絶対値)であったため独立変数の削除は行わなかった。その後、多重ロジスティック回帰分析にてモデルに採用された独居時間と退院直近FIM運動項目合計を用いて、独居時間ごとに在宅群のFIM運動項目合計の中央値を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 後方視的研究となるため、個人情報の取り扱いには十分に留意し、当院倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 2群比較の結果、有意差を示したものは年齢、退院直近FIM認知項目合計、独居時間(p<0.05)、退院直近FIM運動項目合計(p<0.01)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、モデルに採用された項目は独居時間、退院直近FIM運動項目合計であった(p<0.01)。オッズ比(信頼区間)は、独居時間0.246(0.083~0.731)、退院直近運動FIM合計0.914(0.859~0.973)であった。独居時間ごとの在宅群の退院直近FIM運動項目合計の中央値は、日中独居で57.5点、一部独居で58点、つねに介助者ありで45点であった。【考察】 多重ロジスティック回帰分析の結果から重症者の在宅復帰について、介護力としては独居時間、FIMとしては運動項目が重要と推察された。さらに独居時間ごとに退院直近FIM運動項目合計点の中央値を確認すると「日中独居」「一部独居」では58点程度、「つねに介助者あり」の場合は45点程度が在宅復帰に向けたFIMの目標値になることが推察された。【理学療法学研究としての意義】 本研究から重症者の在宅復帰に重要となる介護力は独居となる時間であることがわかり、独居時間ごとに在宅復帰へ向けたFIMの目標値を推察することができた。また、介護準備として独居時間を減らしていく調整が重要であることも推察された。