理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-10
会議情報

ポスター発表
当院回復期リハビリテーション病棟患者の受傷前生活範囲とADLとの関連性
原田 佳澄木村 圭佑岩田 研二古田 大貴松本 紗奈金田 嘉清櫻井 宏明松本 隆史坂本 己津恵
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)から在宅へ退院する際に,セラピストが活動量の目標設定を行う場合は多く,その基準は病前の活動範囲を目安にしている.しかしながら,病前の活動量を数量的に測定する方法は限られている.Life Space Assessment(以下,LSA)は,Bakerらによって開発された活動範囲,活動頻度,介助者の有無,歩行補助具の有無を評価し,活動範囲を120点満点にて数量的に評価するものである.LSAに関しては,地域在住高齢者や維持期のサービス利用者を対象とした報告や転倒恐怖感との関連性に関する報告は数多く行われているが回復期病棟患者を対象とした報告は少ない.そこで今回,当院回復期病棟入院患者のうち,運動器疾患患者に対して,受傷前の生活空間と受傷後の日常生活能力との関連性について検討したため報告する.【方法】対象者は,整形疾患にて当院回復期病棟へ入院し,入院時より在宅復帰を希望し在宅へ退院した13名(平均年齢83.1±6.5歳)であり,内訳は男性3名女性10名であった.評価項目は,生活空間の評価をLSA,日常生活能力の評価をFunctional Independence Measure(以下,FIM),認知機能の評価を改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R)にて測定した.FIMとHDS-Rに関しては,入院時と退院時に測定した.LSAは社)日本理学療法士協会の評価期間を一部変更し,評価対象期間を受傷前1か月間とし,口頭にて家族に聴取した.また,回復期病棟患者と地域在住高齢者の生活空間を比較するため,当院療法士が実施している同市内の介護予防事業へ参加された二次予防高齢者45名(平均年齢77.1±6.4歳)と,一般高齢者43名(73.3±4.8歳)とのLSAを3群間で比較した.統計学的解析には,SPSSを使用し,LSAとFIM,HDS-Rとの関連性はSpearmanの順位相関係数を用い,回復期病棟患者と二次予防高齢者,一般高齢者との3群間におけるLSAの比較には,多重比較法(Tukey-Kramer法)を用い,有意水準を5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】回復期病棟患者の各項目の平均点は,LSA59.4±33.0点,FIMは入院時66.2±22.1点(運動項目44.8±16.3点,認知項目21.3±7.4点),退院時91.8±17.2点(運動項目67.2±12.6点,認知項目24.6±5.9点),HDS-Rは入院時20.2±6.1点,退院時22.9±5.5点であった.LSAと入院時HDS-R(r=0.611),LSAと退院時FIM(r=0.705),LSAと退院時FIM運動項目(r=0.651),LSAと退院時FIM認知項目(r=0.666),LSAと退院時HDS-R(r=0.763)に比較的強い正の相関を認めた.また,二次予防高齢者のLSAは94.1±24.2点,一般高齢者のLSAは107.1±13.7点であった.回復期病棟患者と二次予防高齢者,一般高齢者との間にそれぞれ有意な差を認めた(p<0.05).【考察】回復期病棟患者のLSAと退院時のFIMに相関が認められた.梶原らは地域在住高齢者のうち,後期高齢者は純粋な移動能力がLSAに関与していると報告している.そのため,受傷前の生活空間が広域であるほど,受傷後の身体機能が維持されやすく,回復が良好である可能性が考えられた.またLSAと入院時HDS-Rに相関がみられ,認知機能の低下も生活空間の狭小化に影響を与えている可能性が考えられた.同居家族の立場から考えると患者の高齢による認知機能低下により,生活空間を限局する場合もあり,このことが活動量の低下,身体機能の低下を引き起こしている可能性もあると考えられた.また,「平成19年度介護予防事業における運動器の機能向上と生活空間等に関する調査研究事業報告書」より,LSAの基準値は一般高齢者が84点,二次予防高齢者が69点,要支援1が51点とされている.今回の結果より,当院回復期病棟患者の受傷前のLSAは二次予防高齢者と要支援1の間に位置している.そのため,二次予防高齢者に属する対象者の生活範囲を維持することで,今後骨折等により入院する高齢者数を減少させることが可能になると考えられた.本研究の限界としては,性別による検討が対象者の偏りにより行えなかったことや介護保険の通所サービス利用などが外出先として含まれたため,実際の身体活動量とは異なる可能性があると考えられた.今後は,受傷前の認知機能とそれに対する家族の対応について調査検討も行い,認知機能との関連性についてもさらに検討していきたい.【理学療法学研究としての意義】回復期病棟から在宅へ退院する際に,セラピストが活動量の目標設定を行う場合は多く,病前の活動範囲と頻度が基準となることがある.しかしながら,病前の活動量を数量的に測定する方法は限られており,回復期病棟患者の病前の生活空間を把握することで,入院時点での予後予測や高齢者に対する予防事業への活用が可能になると考えられた.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top